なぜ鷹・甲斐拓也は打率.227でも2.1億円に? 大幅増に繋がった捕手査定の見直し

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・甲斐拓也【写真:代表撮影】

今季は初めて全143試合に出場も打率.227、12本塁打と打撃成績は奮わず…

17日に行われた契約更改交渉で今季から4500万円増となる2億1000万円で来季の契約にサインしたソフトバンクの甲斐拓也捕手。東京五輪期間中の7月26日に第2子となる男児が誕生していたことも発表した。今季、初の全試合出場を果たした甲斐の大幅アップには、球団の査定における捕手の評価の向上があった。(金額は推定)

「今年4位で、自分が143試合出ての結果だったので責任を感じているのは当然。球団からの提示を受け入れる覚悟でいたんですけど、評価を聞いて嬉しかった。評価していただいたのは良かったと思いますし、球団に結果で返していきたいと思いました」

2億1000万円は西武の森友哉捕手と並ぶ現役捕手の最高年俸になる。今季は143試合に出場し、打率.227、12本塁打44打点。当然、満足いくものであるわけがなく、甲斐本人も「結果が全てなので、本塁打よりも打率、出塁率をもっと求めていかないといけない」という。その中でも大幅増となったのには理由がある。

交渉を担った代理人の酒井辰馬弁護士は「捕手の“やった感”と査定のギャップが大きいと感じていた。球団が評価の見直しをしていただいて、従来よりも評価が厚くなった」と語る。甲斐サイドからの要望もあり、これまでの捕手の査定方法を球団が再考し、捕手の評価基準が上がったのだという。

三笠GM「捕手として試合に出ると基礎的な評価を高めるように査定を変えた」

捕手の評価は極めて難しい。打撃成績は数字で出るものの、守備面やリード面などは数字に表れにくい。さらにはデータ分析や対戦相手の研究など、試合に向かうまでの準備も多い。分析に時間を多く割くが故に、自身の練習時間を削らざる得ないこともある。毎日、試合に出る肉体的、精神的な負担も他のポジションに比べて大きい。他のポジションと同じ“物差し”で評価していいのか。そこが今回の見直し点になった。

球団の三笠杉彦GMは「近年、野球のデータ、統計の中で、セイバーメトリクスとかで、UZRとかフレーミングとか守備、走塁のデータも取れるようになってきた。キャッチャーの重要度を数字に置き換えて、評価するか、というところで、近年は守備の評価及びデータは出てきています。そういうものを見ながら、捕手の評価の仕方を検討してきた」と語り、捕手の評価指標を変えたと明かす。

さらに、具体的に「相対的にポジションごとの負担度、守備の負担の違いというのはデータに出ています。捕手は負担の大きいポジションで、捕手として試合に出て、イニングをこなすと基礎的な評価を高めるように査定を変えた」とも。これまでは“アナログ”的な査定基準はあったが、今回はデータを基にポジションによる負担度を定量化。より負担の大きいポジションである捕手が、試合に出続けることへの評価が厚くなったという。

これは甲斐自身の評価だけでなく、今後、ソフトバンクで捕手としてプレーする選手にとっても大きな励みになるもの。「球団が見直してくれて感謝しかありません。捕手というポジションはいろんなことがあるポジション。それを評価してくれたのも嬉しく思います」と語った甲斐は言う。シーズンを通して試合に出続けることがどれだけ大変なことか、を球団が高く評価したからこそのこのアップだった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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