2021長崎スポーツこの1年<1> 東京五輪・パラで県勢活躍 今やれることに集中

東京五輪柔道男子81キロ級で優勝した永瀬(旭化成)。決勝は延長でモラエイ(モンゴル)から技ありを奪った=日本武道館

 新型コロナウイルス感染拡大が続く中、東京五輪・パラリンピックが開催された2021年。夏のインターハイも2年ぶりに実施されたが、秋の国体、全国障害者スポーツ大会は中止となった。昨年同様、スポーツ界はコロナに振り回された。
 そんな厳しい状況の中でも現場の選手、指導者らは奮闘。高校野球は春の選抜大会に大崎が初出場、夏の甲子園では長崎商が2勝を挙げた。サッカーJ2のV・ファーレン長崎は昇格こそ果たせなかったが、中盤以降に粘り強く巻き返した。バスケットボールのBリーグ3部(B3)に新規参入した長崎ヴェルカは首位を走っている。長崎スポーツの1年を振り返る。
 開催への批判、選手への中傷などが続く中で開かれた東京五輪。各国・地域から集まった選手たちは、それぞれ複雑な思いを抱えながらも、自らがやれることに集中して元気を届けてくれた。長崎県勢も過去最多の11人が出場して、一人一人が力の限りを尽くした。
 柔道の永瀬貴規(旭化成、長崎市出身)は、男子81キロ級で日本勢21年ぶりの金メダルを獲得。ソフトボールの藤田倭(ビックカメラ高崎、佐世保市出身)は、世界一に輝いた日本を投打で引っ張った。サッカー男子の吉田麻也(サンプドリア、長崎市出身)は、主将としてチームを2012年ロンドン大会以来の4位に導いた。陸上女子の廣中璃梨佳(日本郵政グループ、大村市出身)は、1万メートルで日本勢25年ぶりの入賞となる7位、5000メートルは14分52秒84の日本記録を樹立した。
 バスケットボール男子の田中大貴(A東京、雲仙市出身)、九州文化学園高卒でバレーボール女子の小幡真子(JT、熊本県出身)、水球男子のコップ晴紀イラリオ(DSKドラゴンズ、西彼時津町出身)は、それぞれ12人しか入れない代表の主力としてプレーした。
 カヌー男子の水本圭治(チョープロ、岩手県出身)と射撃男子の松本崇志(自衛隊、島原市出身)は、4度目の挑戦で五輪の夢舞台に立った。柔道女子52キロ級の深見利佐子(筑波大大学院、佐世保市出身)も、父の祖国であるタイ代表として五輪の畳に上がった。
 残念だったのは、種目別鉄棒に絞って自身4度目の五輪に臨んだ体操男子の内村航平(ジョイカル、諫早市出身)。予選で落下して早すぎる結末を迎えた。スポーツの厳しさをあらためて教えてもらえた大会になった。
 県勢はパラリンピックでも大活躍。長崎市出身の20代3人が鮮烈な印象を残した。鳥海連志(パラ神奈川SC)と川原凜(千葉ホークス)が主力として貢献した車いすバスケットボールは過去最高の準優勝。鳥海は一躍、スターになった。卓球男子シングルス(知的)の浅野俊(PIA)も5位入賞を果たした。
 今回、活躍した県勢のほとんどが、今後も競技継続を表明している。3年後のパリ大会へ向けて、選手たちはどんな成長曲線を描くか。来年からは各競技で代表選考レースが本格化していく。


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