V長崎・髙田春奈社長インタビュー 今季振り返り「話せることは直接話したい」

「内部のことをもっと発信したい」と語るV・ファーレン長崎の髙田社長=長崎市内

 サッカーJ2、V・ファーレン長崎の髙田春奈社長がインタビューに応じ、今季のクラブ活動を振り返った。J1昇格を逃したトップチームの本紙報道を巡ってネット上などでさまざまな臆測も飛び交ったことから「話せることはできるだけ直接話したい」と語った。以下、一問一答。

 -今季のクラブ活動について、課題と収穫は。

 J2で4位はもちろん望ましいものではない。その時々にできるベストを尽くしたが、他クラブの勢いは止まらず、目標に届かなかった。松田浩監督の就任以降は昇格ペースだったことから、手応えは感じている。来季は松田体制の維持を基本路線に、足りない部分を強化する。
 U-18チームは九州1位という過去最高の成績を収めてくれた。松田監督が今年までの3年間、アカデミーダイレクターとして築いてきたものが花開いたと感じている。プレミアリーグへの昇格戦は相手との力の差を痛感したが、これまで九州内で戦ってきたチームが外の世界を知った点で価値がある。

 -ホームタウン活動では、県内全域を訪れる地道な活動に力を入れた。

 昨年、今年と全市町巡らせてもらった。首長との意見交換に加えて、サッカー教室や小学校訪問などの活動が少しずつ根付いてきた。じわじわと、各地で熱の高まりを実感している。長期スパンで考えること、継続が何より必要だと思う。

 -トップチームについて、7日付の長崎新聞で厳しい内容の今季総括記事を掲載した。監督人事や強化部体制の問題点を指摘した。

 私たちも課題と捉えている部分もあるが、書かれていた側面だけでなくて、さまざまな出来事が積み重なって結果がある。うまくいかないと、どうしてもネガティブな思考になって、不安になる。そうさせてしまった責任を感じるし、基本はできるだけオープンにしたいスタンスなので、内部のことをもっと発信したいと感じた。
 私自身はサッカーに関する部分はプロに任せて口を出さないと決めている。組織上も(ジャパネットホールディングス社長の)髙田旭人が強化部門トップのゼネラルマネジャー(GM)的なポジションを兼ねていて、テクニカルダイレクターと監督の意向をベースに最終的な決裁をするという位置付け。

 -「クラブ」のトップとしての「チーム」との関わり方について。

 8月のリーグ再開後のアウェー連戦で秋田と引き分けて、金沢には勝ったが、次の千葉戦に負けた。その結果を目の当たりにして、こういうまずい状況でも、ただ見ていることしかできない経営者ってどうなんだろうと感じた。自分はサッカーは素人だから、それ以外のことに集中しようというのは違うんじゃないか。フットボール部という組織においても、専門外の人でもやれることがある。逆に強化スタッフはもっと競技面に集中してもらって、その他の細かい部分は周りが見ていこうという組織体制に変えた。選手スタッフの要望をじかに感じられたし、もっとパフォーマンスを発揮できるように変えないといけないと思っている。また、選手、スタッフにも、もっとクラブの取り組みを知ってもらわなければならないとも感じている。

 -昨季のトップチーム人件費は約13億円。来季の強化費の方針や、必要性が指摘されているGM設置の方向性は。

 予算という考え方よりも、投資すべきと感じたら出すスピード感は大事にしたい。ただ、続けて昇格を逃しているので、反省は生かしつつ、できれば来季は減らしたい。
 GMについては、本当にいい人がいれば置きたいと思っているが、誰でも置けばいいとは思っていない。適任の人が見つかるまでGMは置かない。新しいテクニカルダイレクターについては既に決まっていて、来月から加入する予定。発表は来月になる。

 -来年、注力したいことは。

 一つ目は2024年に完成する新スタジアムでやりたい案件を試していくこと。新スタジアムでいきなり変わるのではなく、今のスタジアムで試せることは試していきたい。二つ目はSDGs。タウン活動や企業との連携以外にも、スタジアム運営やグッズの観点でも実行できることはしたい。もう一つは、若い人たちにもっと身近に感じてもらえるようにすること。映画を見に行く感覚でスタジアムに来てもらえればと一番安い1500円のC自由席を拡大した。来年は22年ということにちなんで、U-22、大学生以下が無料で観戦できる試合などの企画も考えている。


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