<社説>新種株県内初確認 政府の責任で封じ込めを

 米軍キャンプハンセンに勤務するうるま市の男性ら3人が新型コロナウイルスの新種株「オミクロン株」に感染したことが判明した。この株の感染確認は県内で初めてだ。県は基地内でオミクロン株の市中感染が広がっている可能性があるとみている。 問題なのは米軍の対応だ。今月初旬に米国から来沖した米海兵隊員99人のクラスター(感染者集団)が確認されているが、米軍はオミクロン株かどうかを検査するよう県が要請したところ、個人情報保護を理由に拒否した。

 背景には、米軍関係者は日本側の検疫を免除されているとする日米地位協定がある。これでは米軍からの感染を防げない。米軍からの感染を封じ込める対策は、基地を提供している日本政府の責務だ。米軍がこのまま非協力的な態度を取るのなら、政府は基地封鎖を求めるべきだ。米軍関係者への検疫を義務付けるために日米地位協定の改定は必須である。

 感染経路を巡っては、これまでも米軍は脅威となってきた。昨年7月上旬には、米軍普天間飛行場とハンセンで5日間にわたり米軍関係者計61人の感染が判明した。県内ではそれまで約2カ月間、感染が確認されていなかっただけに、衝撃が走った。

 同年11月30日には、普天間飛行場とハンセンの米軍関係者計72人の感染が確認された。いずれも国外から在沖米軍基地に移動してきた米兵らで、県に報告される1日当たりの感染者数としては最多だった。

 再び米軍基地由来である可能性が高い新種株感染者が確認されたことにより、米軍基地が水際対策の穴となっていることが浮き彫りとなった。

 対策を徹底したい県に対し非協力的な米軍の態度は言語道断だ。米軍基地内で起きたクラスターがオミクロン株かどうかを調べることについて米軍は「必要があれば」とし、解析する場合でも、米本国に送るとしている。判明には数週間以上かかるという。以前、基地内でデルタ株が確認され始めたころにも県は同様の提案をしたが、米軍は拒否した。

 県は今回、ハンセン関係者への外出禁止を要請したところ、米軍からは、隔離してちゃんと管理しているという回答があったという。しかし本紙の取材では、ハンセン近くの繁華街でマスクをしない米兵が歩く姿が確認された。

 米軍の対応はずさんと言うほかない。県民の命と健康を軽視している。これでは、県民が必死に努力して感染を防いでも米軍が非協力的である限り、いつでも基地から感染が広がる脅威は消えない。

 日米地位協定を変えない限り、日本側の検疫体制を米軍関係者に適用できない。入国拒否もできない。しかし日本政府には県民の命と健康を守る責任がある。その責任を全うするには、米軍側に日本の検疫を適用する以外に方法はない。

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