40年以上にわたってクレヨン画を描き続ける横浜市都筑区の小島八重子さん(97)が画集を自主制作した。植物や果物、身近な風景などのほか、若き日の戦争体験を描写したクレヨン画を収めた。独学で身に付けた表現技法も紹介しており、「クレヨンは子どもの画材というイメージがあるが、繊細な表現ができる。その魅力を画集を通して知ってほしい」と話す。
◆戦禍の思いも託し
画集「クレヨンで描きませんか」は、オールカラーで96ページ。自宅の庭に咲いたピンクのバラや暮らしていた街の風景のほか、20代で体験した東京大空襲、疎開先の山形での記憶などをたどって描いた計約60点を掲載している。
東京大空襲で目の当たりにした真っ赤な炎や、終戦時に見上げた山形の澄み切った青空…。小島さんは「描きたくてもかなわない時代があった。戦争は絶対にいけない」との思いを託す。
画集では掲載した作品を例にクレヨン画の魅力や描き方のこつも紹介。クレヨンを重ね塗りして、色合いの微妙な変化や陰影、対象物の立体感を出す方法や、クレヨンで表現された独特の厚みをスプーンなどで削って模様を付けるテクニックなどを伝えている。
◆手軽な画材、大人だって
1924(大正13)年生まれで、幼少期から絵画に親しんだ小島さん。美術大に進学し、卒業後は教員となった。そして、油絵をメインに趣味で絵画を続けた。
転機となったのは健康上の理由で教員を辞め、絵画からも一時離れざるを得なくなった50代半ば。体調の回復とともに再び絵を描きたくなり、手に取ったのがクレヨンだった。
「こすったり、重ね塗りしたり、さまざまな表現ができる。テクニックに頼らず、思いを的確に表現できる画材」とクレヨンの良さを実感した。「手軽に扱え、工夫次第で油絵や水彩画に負けない作品に仕上がる」と、古希を過ぎてからはクレヨン画を創作の中心に据え、独学で腕を磨いた。
12月から郵送で販売を始めた画集を手に取った知人からは「久しぶりに自分もクレヨンで絵を描きたくなった」などの感想が寄せられた。「画集を通して子どもから大人までクレヨン画の魅力が伝われば幸せ」と笑顔を見せる。子どもが使う画材というクレヨンのイメージを打破したいとの思いもある。
創作意欲は今なお旺盛で「これからも可能な限り、クレヨン画を描き続けたい」。