自宅散乱、熊本地震時のまま… 障害ある70代姉妹、救済対象外で支援抜け落ち 

© 株式会社熊本日日新聞社

熊本地震で倒れた棚や、割れたガラスが散乱したままになっている女性方の部屋=14日、熊本市中央区

 倒れた食器棚、床一面に散らばったガラスや食器の破片、ベランダや外壁には亀裂…。熊本市中央区の女性(70)の自宅は2016年4月の熊本地震から5年8カ月余り、被災した時とほぼ同じ状態のままだ。姉と2人で年金生活。ともに障害のある姉妹だけではどうすることもできず、行政やボランティアの支援からも抜け落ちていた。

 被災後数カ月は避難所で生活。罹災[りさい]証明書の発行を市に5回申請したが、最も軽微な一部損壊も認められなかった。そのため、義援金や修理の支援制度は利用できなかった。2階建ての自宅が被災していないことになっていたため、相談に対応する行政の巡回もなかった。

 頼れる親族や知人は近所にいない。行政の手が届かない被災者を支援するボランティア活動も、チラシ配布などによる利用の呼び掛けは被害の大きい益城町などに集中。「支援者の存在すら知らなかった。みんな大変だから、辛うじて生活していける私は人を頼ってはいけないと思った」という。この間の生活範囲は、やっとの思いで片付けた1階の居間だけだった。

 状況が変わったのは今月上旬。近所の公園をいつものように清掃していると、生活困窮者に物資を配っていた熊本学園大の高林秀明教授(地域福祉論)らと出会った。別の日に自宅を訪れ、和室に倒れていた棚を元に戻したり、ガラス片を拾ったりしてくれた高林教授らに対し、女性は自身が障害者手帳を持つうつ病の患者であることなどを伝えた。外れた雨どいや、ゆがんで開かない窓の修理はこれから。それでも、足に障害がある姉(79)は「頼れる人ができたと思うだけで前向きになる」と笑顔を見せた。

熊本地震で亀裂が入ったままになっている女性方の外壁

 被災者支援を巡っては高齢世帯、心身の障害、生活困窮などの事情を複合的に考慮する「災害ケースマネジメント」の考え方が広まり始めている。しかし、家屋の被災状況による線引きで救済対象から外れ、被災前から福祉の手が届いていなかった姉妹は、その入り口にもたどり着いていなかった。高林教授は「家屋の被災状況だけで判断せず、行政や支援者が被災地域をくまなく回って個別の課題を掘り起こす取り組みも必要だ」と指摘する。

 被災者を支援する団体の情報共有を続けるNPO法人・くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD[ケイボアド])にも、同じような境遇の被災者に関する情報が入っており、樋口務代表理事(60)は「昨年7月の豪雨も含め、あらゆる事情で生活再建から取り残される被災者の把握と支援を続けたい」としている。相談や情報提供はKVOADTEL096(288)4117。(堀江利雅)