意外と知らない「失業手当」の改正点や条件、自己都合の退職の手当も2ヵ月でもらえるように短縮

失業中は収入が途絶え、生活に不安が生じます。そのため、退職から再就職までのマネープランを立てておくことが望ましいのですが、忙しければそんな余裕はないでしょう。また、収入が少なければ失業中の生活費を貯めておくことも難しくなります。

そもそも、そんなゆとりが持てないからこそ、準備不足であっても退職に踏み切らざるを得ないこともありえます。そんな場合に頼りになるのが失業手当です。従来、自己都合退職の失業手当は3カ月の給付制限がありましたが、2020年10月から2カ月に短縮されました。今回は、失業手当の改正点や条件についてお伝えします。


失業手当を受けられる失業者とは

失業した人が安定した生活を送りつつ、1 日も早く再就職するために、雇用保険の求職者給付があります。求職者給付には、一般の方に対する「基本手当」、65歳以上の方の「高年齢求職者給付金」などがありますが、最も代表的な手当が「基本手当=失業手当」です。

失業手当は、失業した人が給付の対象になります。

失業した人と言っても、会社勤めをしていない人すべてが当てはまるわけではありません。

失業者は、離職し就職したいという積極的な意思と、いつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にある人のこと。健康状態や家庭環境などが就職に差し支えなく、ハローワークで求職活動をしていることが条件です。

ですから、家事や家業に専念するために退職したり、自分の名義で事業をしていたりすれば、失業手当の対象にはなりません。

また、病気やケガ、出産などですぐに働けないケースでは、仕事についていなくても失業手当の対象にはなりません。ただし、受給期間延長の申請ができますので、忘れずに申請しましょう。体調が回復してから再就職までの間、失業手当を受けられる場合があります。

そのほかの条件として、雇用保険の加入が一定期間必要です。

原則として、離職の日以前2年間に 12カ月以上被保険者期間があることが条件になります。たとえば、企業に1年以上勤務して、すべての月で給料があり、給与明細に雇用保険の保険料の控除があれば、この条件はクリアしていると考えてよいでしょう。

ちなみに、倒産・解雇などによる離職の場合は、離職の日以前1年間に6カ月以上被保険者期間があればよい、と条件がゆるめられています。

失業手当の給付額と給付日数

では、失業手当では実際いくら受け取れるのでしょうか。これは、離職前の賃金から計算されます。失業手当の1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。

原則として、離職の日以前の6カ月に毎月決まって支払われた賃金の合計を、180で割って算出した金額のおよそ5~8割で、賃金が少ないほど高い給付率になっています。

基本手当日額=(離職前6カ月の賃金合計÷180)×給付率(5~8割)

また、基本手当日額には、上限額と下限額が定められています。 上限額・下限額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減によって、その額を変更しますので、社会情勢にあった金額になっています。
令和3年11月現在、上限額は、29歳以下は6,760円、30~44歳が7,510円、45~59歳が8,265円、60~64歳が7096円。下限額は、年齢にかかわらず2,061円です。

給付日数は、年齢や、雇用保険の被保険者期間などで決まります。
65歳未満、自己都合での退職は、被保険者期間が1年以上10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日です。
たとえば、新卒で5年勤務した会社を退職した場合、その会社では5年間雇用保険の保険料を払って被保険者だったとすると、「1年以上10年未満」にあてはまり、90日分の給付を受け取れます。

受給できる期間は、離職してから1年間です。離職から1年を過ぎると、給付日数が残っていても給付は受けられません。手続きは早めにしておきましょう。

2020年10月から改正された、給付制限の期間

自己都合退職の失業手当給付には、3カ月ルールがあると聞いたことがある人もいるかもしれません。この3カ月が、条件によっては2カ月に短縮されるよう、2020年10月から改正されました。

従来、自己都合退職の場合、ハローワークに離職票を提出して求職申込をしてから7日間の待期期間の後、さらに3カ月の給付制限の後にならないと、失業手当は受け取れませんでした。
しかし、これでは失業者にとって経済的な負担が重く、かえって求職活動の妨げになることが指摘されていました。

生活費に困って意に沿わない就職をした結果、短期間でまたもや離職することになってしまったら、本人だけではなく社会的にも損失です。
そのため、1日でも早い就職を促進してはいますが、同時に再就職先はしっかりと選べるよう、給付制限の期間は2カ月に短縮できるようになりました。

ちなみに、離職理由が解雇、定年、契約期間満了の場合には、7日間の待機の後すぐに失業手当が受け取れます。

2カ月の給付制限で受け取れるには条件がある

では、どのような場合に、給付制限が2カ月になるのでしょうか。
7日間の待機の後、給付制限があるのは、自己都合と懲戒解雇です。懲戒解雇は、給付制限は3カ月であり、2カ月にはなりません。

・過去5年間で2回までの自己都合による離職
・懲戒解雇ではない

2020年10月1日以降の自己都合離職の場合は、過去5年間のうち2回の離職までは、給付制限が2カ月になります。
短期での離職を促すことにならないよう、3回目には給付制限は3カ月です。

過去5年間の自己都合離職は、2回目までは給付制限は2カ月間

もし、過去5年間に失業給付を受けるのが3回目であったとしても、離職が2回目であれば給付制限は2カ月間です。

なお、2020年9月末日以前の離職については、今回改正の「過去5年間の離職」には含まれません。

失業手当を受け始めても、原則として4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける必要があります。 認定日にはハローワークに本人が行き、仕事をしていないか、求職活動をしたか、すぐに働ける状態かを報告しなくてはなりません。認定日から次の認定日までに求職活動をしていないと失業手当の給付は受けられません。

再就職が決まったら

失業給付を受けられると、失業中でも比較的安心できます。求職活動も焦らずじっくりできるでしょう。せっかくもらえる手当なら全部受け取らないと損、給付日数分すべて受け取ってから再就職したほうがいいかな、と考えてしまうかもしれませんね。
しかし実は、早期に再就職できた人には再就職手当が出ます。

受給期間内に残っている失業手当の日数が、給付日数の3分の1以上の場合は、支給残日数の6割の日数分の失業手当が、再就職手当として受け取れます。
さらに早期に再就職できて、給付日数の3分の2以上残っていた場合は、支給残日数の7割の日数分になります。

再就職手当を受けた人が、引き続きその再就職先で6カ月以上働いているものの、賃金が離職前の賃金よりも低い場合には、就業促進定着手当の給付を受けることができます。
場合があります。

就職してすぐは、以前より収入減になることもありますが、このような手当があるのは助かりますね。

仕事選びは、自分らしい暮らしを実現するためにはとても重要です。目先のお金だけに惑わされないよう、公的保障である失業手当を上手に使って、より自分らしい仕事を選んでください。

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