新型コロナウイルス感染症へのMSFの対応【最新情報】

新型コロナウイルス感染症の患者のケアにあたるスタッフ(南アフリカ) © MSF/Chris Allan

最新情報

  • 10月15日掲載:新型コロナウイルス危機対応募金 受付終了のお知らせとお礼
    2020年3月26日に開始した「新型コロナウイルス危機対応募金」の受付は、日本国内における資金調達目標額2380万ユーロ(約29億円)に達したため、2021年10年15日に終了しました。ご支援誠にありがとうございました。国境なき医師団が世界各地で現在も行っている新型コロナウイルス感染症への対応と、感染症拡大の影響に伴うその他の援助活動は、使途を指定しない一般寄付から必要な資金を充当します。

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活動概要 世界70を超える国と地域で対応

対応の手順を確認するスタッフ(インド)© Aahana Dhar/MSF

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での感染拡大に伴い、MSFは各地で医療援助活動を行っている。これまでに、70を超える国・地域で新型コロナウイルスに関する援助を提供してきた。

医療機関における感染予防・制御に関する取り組みをはじめ、新型コロナウイルス専門の治療センターの設置、感染者の治療、感染予防のための健康教育など、幅広い活動を実施。特に、医療や衛生面で脆弱な環境に暮らす難民・避難民など、弱い立場に置かれた人びとへの支援に力を入れている。

また、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬などが、「世界の公共財」としてあらゆる人びとに公平に行き渡るよう、各国政府をはじめとした国際社会に訴えている。

新型コロナウイルス感染症への対応 5つの柱

過密状態のキャンプに暮らす難民や移民など、感染のリスクが高く、医療へのアクセスが限られた環境に暮らす人びとを支援。

感染予防対策を十分に行い、母子保健やHIV、結核など、人びとが必要とするさまざまな医療ニーズに継続して対応。

新型コロナウイルスやさまざまな医療ニーズに対応し続けられるよう、個人用防護具の提供などを通し、医療従事者を感染から防ぐ。

施設に入居している高齢者や、糖尿病やHIV、結核などの病気を患っている人びとなどを感染から守る。

新型コロナウイルスのワクチンや治療薬、診断ツールなどが世界で公平に分配されるよう、各国政府への対応を求める。

2020年活動ハイライト

海外派遣スタッフの派遣回数

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ロックダウンや移動制限によって世界の輸送網が寸断された結果、MSFの新型コロナウイルス対応は困難に直面した。民間の航空便は長期間欠航していたため、MSFは人道目的のチャーター便を手配し、世界各地へとスタッフを派遣した。

活動国への出入国には、移動、検査、隔離期間などに時間を要したものの、4月から12月までの間に海外派遣したスタッフは約4000人に上り、2019年の同時期と比べて25%の減少にとどまった。8月にはチャーター便の本数が大幅に減ったためMSFスタッフの移動は再び制限され、7月以来、派遣回数が再び前年の水準に達したのは12月だった。

新型コロナウイルス感染症関連物資の供給先および内訳

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医療機器や新型コロナ関連医療ツールの世界的な不足、交通網の混乱、各国の一時的な輸出入制限によって新型コロナ対応に必要な物資の輸送・供給が困難になる中、MSFのサプライセンターは、3月から5月にかけて、個人用防護具、医療機器、医薬品、検査用品など、約1億2500万点の物資を梱包。中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イエメンなど、紛争や人道危機によって、現地での物資調達が難しい場所でのプロジェクトに向けて発送した。

新型コロナウイルスへの備えと直接的な対応のために用意された品は、MSFが世界各地で行う活動に使う物資の約44%を占めた。

「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」の金額推移と寄付額上位国

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2020年3月下旬、MSFは新型コロナウイルス感染症対応にかかる活動と、パンデミックの影響を受けた既存のプロジェクトの大幅な経費増加に充てるため「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」を設立。

2020年4月から12月までに世界35カ所のMSF事務局を通して集められた金額は、1億2100万ユーロ(約147億5000万円)に上った。米国、日本、スイス、スペイン、ドイツ、イギリスからの寄付が全体の3分の2を占め、特に個人からの寄付が多く寄せられた。

「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」項目別および国別支出内訳

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パンデミックが始まってから2020年末までに、新型コロナウイルス感染症対応に関連した総額支出は、1億1780万ユーロ(約143億6000万円)に達した。医療活動と人件費が支出額の70%余りを占め、次いで旅費・宿泊費、事務費、物流・衛生活動費に充てられた。

また、MSFインターナショナルが中心となって進めるプログラム支援活動や国際的な啓発活動、およびアドボカシーキャンペーンにも130万ユーロ(約1億5800万円)を支出した。

新型コロナウイルス感染症危機対応募金から支出した費用の大部分は、人道危機下や紛争地でのプロジェクトで生じたものである。MSFが2020年に実施した新型コロナ関連の活動のうち、規模・費用ともに規模の大きかったイエメン、コンゴ民主共和国、バングラデシュ、南スーダン、イラクでの活動が、総支出の4分の1を占めた。

地域別情報

中東と北アフリカ

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに関する活動を実施(右写真:イエメン)

中東・北アフリカ地域は、すでに大規模な人道的危機、長期化する紛争、政治的不安定の影響を大きく受けており、避難生活を送る大勢の人びとなどが必要な医療を受けることができない状態にあった。

そこに新型コロナウイルスの感染が広がり、以前から医療システムが脆弱な状態の人びとにさらなる負担をかけることとなった。

避難民キャンプの移動診療所で子どもの健康状態を確認(シリア) © OMAR HAJ KADOUR/MSF

アジア

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに関する活動を実施

2020年末には特にインド、インドネシア、バングラデシュ、ミャンマーで高い感染率と死亡者数の増加が報告された。MSFは、医療へのアクセスが限られている人びとへの支援と、医療機関のスタッフの保護に重点を置いて8カ国で活動した。

ウイルスの感染予防法などを伝えるMSFスタッフ(香港)© Shuk Lim Cheung/MSF

欧州

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに関する活動を実施(右写真:ギリシャ)

欧州の病院、介護施設、脆弱なコミュニティにおける主な活動は2020年5月下旬に終了したが、秋以降に欧州各地で第2の波が発生したため、新型コロナウイルスに関する活動の再開や開始をした。また、東欧や中央アジアの国々での活動を継続した。

スペイン・レガネスでMSFが設置した臨時病棟 © Olmo Calvo /MSF

アフリカ

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに関する活動を実施(右写真:南スーダン)

2020年を通して、アフリカでは世界的な数値と比較して新型コロナウイルスに関連した患者数と死者数は比較的低い水準で推移した。雨期が早まりサハラ以南のアフリカでマラリアの感染率上昇が懸念される中、新型コロナの移動制限により、抗マラリア薬の供給などの予防活動が滞った。新型コロナウイルスに関する活動と同時に、コンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱などの感染症にも対応した。

コンゴ民主共和国でMSFが運営する新型コロナウイルス治療センター © MSF/Djann Jutzeler

北米・中南米

地図上のグレーの国・地域において新型コロナウイルスに関する活動を実施(右写真:ブラジル)

2020年9月から12月に新型コロナウイルスの感染者数および関連する死亡者数が最も多かったのはアメリカ大陸だった。MSFは、南北アメリカ11カ国の23のプロジェクトにおいて、医療従事者を支援し、遠隔地や脆弱なコミュニティにおいて医療支援を行った。

アマゾン川流域の新型コロナウイルス患者 より高度な治療が必要になり、救急車で州都へ搬送する © Diego Baravelli

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)基本情報

© Olmo Calvo /MSF

国境なき医師団(MSF)とは

国境なき医師団は、紛争や災害、貧困などによって命の危機に直面している人びとに医療を届ける国際的な民間の医療・人道援助団体です。

・医療援助活動
活動地は、シリアやアフガニスタンなどの紛争地や、貧困により医療が不足している地域、自然災害の被災地、感染症が流行する地域など。医療を受けられない人びとのために、約4万7000人のスタッフが世界70カ国以上で活動を行っています。

・「独立・中立・公平」な立場
活動資金の9割以上が民間からの寄付に支えられていることにより、中立な立場での援助活動を実現。政治などの干渉を受けることなく医療を提供します。寄付収入や配分先などを掲載した、年間の活動報告書はこちら

・証言活動
医療援助だけでは人道的危機が改善しない場合、その現状を国際社会に広く知らせる証言活動もします。こうした活動が認められ、1999年ノーベル平和賞を受賞しました。

寄付控除、税制優遇措置

認定NPO法人である、国境なき医師団日本への寄付は税制優遇措置の対象になります。所得税、法人税、相続税、一部の自治体の住民税の優遇措置を受けられます。詳細はこちら

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