2021長崎スポーツこの1年<3> 高校野球で県勢躍進 切磋琢磨し実力向上

全国高校野球選手権で69年ぶりに白星を挙げた長崎商。2回戦で春の関東王者の専大松戸(千葉)を倒して喜ぶ選手たち=兵庫県西宮市、甲子園

 高校野球は見応えある1年だった。春は県立小規模校の大崎が選抜大会に初出場し、夏は創部101年の長崎商が69年ぶりに甲子園で2勝して16強入り。代替わりした秋は長崎日大が九州大会で準決勝まで進み、来春の選抜出場(九州4枠)をほぼ確実にした。各校の切磋琢磨(せっさたくま)によるレベルアップを感じさせると同時に、県勢のさらなる飛躍に向けた課題も再確認できた1年になった。
 大崎は2018年、清峰や佐世保実を全国に導いてきた清水央彦氏が監督に就任。以降、有望な入部者も増え、急速に力をつけた。20年秋の県大会で2連覇した後、九州も制して甲子園に初出場。過疎化に歯止めがかからない大島を含め、西海市全体が沸きに沸いた。現1、2年生の戦力も充実しているだけに、住民らの協力や一体感をより強めて、次なる躍進につなげていきたい。
 その大崎に夏の県大会決勝で九回2死から追いつき、延長で競り勝ったのが長崎商。全5試合中4試合が逆転勝ち、うち2試合がサヨナラという劇的な優勝だった。配球や間合いを巡る駆け引き、精神力…。球児たちは力と技だけでは説明できない底力を発揮した。
 長崎商は甲子園でも存在感を示した。例年「長崎は打が弱い」という声もある中、3回戦で神戸国際大付(兵庫)に延長十回5-6でサヨナラ負けするまで、3試合計36安打を放った。
 秋の九州大会に長崎第2代表として出場した長崎日大も、3試合計35安打を記録して4強入り。春は1999年、夏も2010年を最後に甲子園から遠ざかっていたチームが、県内のライバルたちを刺激するような快進撃を見せた。県大会決勝で長崎日大を倒した海星も準々決勝まで進出。県勢初の「選抜2校出場」は条件的に厳しくなったが、長崎の強さはしっかりと披露してくれた。
 高校野球は来年3月4日までの対外試合禁止期間に入っている。現在はそれぞれの目標へ向けて底上げを図る時期だが、その中で学校や競技間の垣根を越えた連携、指導者を含めた中学との交流が徐々に増えてきたのは今後へ向けての好材料。少子化や中学生の県外流出などによる部員数減に対応するためには、こうした動きは不可欠と言えるだろう。地道に、県全体に広げていってもらいたい。


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