国道34号で朝夕の渋滞慢性化 抜け道利用 住民「困る」

平日の朝、長崎市中心部に向かう車は青信号でも進めずにいた=長崎市新中川町

 ある月曜日の朝8時。長崎市新中川町の片側2車線の国道で、市中心部に向かう車が滞り始めた。記者が歩道橋の上から観察していると、信号が青に変わっても車列はしばらく少しも動かず、信号が赤に変わるまでの2分間に進んだ距離は数十メートル。市中心部と東長崎地区、県央地区を結ぶ「大動脈」の国道34号。長年、朝夕の交通渋滞が慢性化しており、早期改善を求める住民の声は切実だ。

 馬町交差点を起点にしてどこまで車が続いているのか。記者が見に行くと、約2キロ先まで連なっていた。地域の子どもたちの交通安全を見守っていた同市鳴滝3丁目の無職、山本定さん(70)は「新日見トンネルができたりして、これでもましになった方。近くで事故でもあればパニックよ」とつぶやいた。
 2015年度の全国道路・街路交通情勢調査によると、馬町交差点付近の平日の12時間交通量は上下線で3万58台。東長崎や県央、島原半島から長崎市街地に行くには国道34号、長崎バイパス、長崎自動車道の3通りで、中でも通勤時間帯は国道に交通が集中する。渋滞や事故の対策は長年の懸案だ。
 国土交通省長崎河川国道事務所は13年度、新大工・馬町交差点改良事業に着手。これまでに交差点付近に横断歩道やバス停車帯などを整備した。19年3月には馬町交差点に右折専用レーンを設け左折レーンを直進左折レーンに変更。右折車の渋滞は改善する一方、「左車線の渋滞は悪化した」との声が上がり、対策に苦慮している。
 渋滞は地域住民の生活にも影響を及ぼしている。
 同市本河内4丁目の奥山自治会の濱下嘉壽雄会長(80)によると、同交差点の車線改良後、通勤時間帯の「抜け道」利用が目立つようになったという。奥山地区は、歩道がなく幅員が狭い生活道路がほとんど。同会長は「(抜け道利用の人は)急いでいるのかスピードが速く事故も発生している。住民は身の危険を感じている」と訴える。
 隣接する本河内3丁目では、抜け道から国道に合流する地点で渋滞が常態化。住民が車を出せないケースが頻発している。本河内3丁目自治会の金谷繁臣会長(82)は「昔はこんなことなかった。住民は困っている」とすっきりしない表情を浮かべた。
    ◇   ◇ 
 市が20年10月に調査したところ、午前7時~9時の2時間で奥山、本河内の両地区の生活道路を抜け道として利用する車は226台だった。長崎署によると、19年以降、両地区で年に1、2件の交通事故が発生しているという。

 両自治会は市を通じ、同署に▽抜け道の速度規制▽速度取り締まり▽朝の1時間程度、抜け道への右折進入禁止-などを求める要望書を提出。同署は本年度中に一部区間で30キロの速度規制をすることを決めたが、他の項目については「必要性を総合的に判断する」としている。
 一般国道34号道路整備促進協議会(会長・田上富久市長)も、発足した05年から毎年、同事務所などに混雑解消や安全対策などを求めており、今年7月にも馬町交差点の改良とバリアフリー化の早期完成などを要望。同事務所は「引き続き県や市、県警、長崎電気軌道など各関係機関と協力し、事故対策や交通の円滑化に取り組む」としている。


© 株式会社長崎新聞社