宝飾業界はコロナ禍で大打撃  国内のジュエリー販売事業者、2期連続で減収減益 全国主要362社 「ジュエリー小売事業者」業績動向調査

 新型コロナウイルス感染拡大から間もなく2年が経過する。コロナ禍では、リモートワークの普及や外出自粛の浸透などで、通勤着や高額衣料などアパレル業界の売れ行き不振が目立った。同時に、人流抑制の広がりは高額宝飾品を取り扱う業界にも逆風が吹いていたことがわかった。
 師走も半ばを過ぎ、久しぶりに賑わいを取り戻した街ではクリスマス・年末商戦が熱を帯びている。東京商工リサーチ(TSR)では、全国のジュエリー小売業者362社の業績を、コロナ前と比較した。
 362社のうち、216社(構成比59.6%)が前年同期と比べ減収、90社(同24.8%)が最終損益で赤字を計上。362社合計の売上も、コロナ前から13.0%の減収となった。
 10月にすべての都道府県で緊急事態宣言などが全面解除され、リモートワークの減少やイベント、レジャー等の制限が緩和された。百貨店に客足が戻り始め、冬物衣料や宝飾品などの高額商品も次第に復調傾向にあり、コロナ禍で落ち込んだ需要が期待通りに回復するか注目される。

  • ※本調査は、TSR企業データベース390万社から前々期年度(2018年7月~2019年6月期)、前期年度(2019年7月期~2020年6月期)、最新期年度(2020年7月期~2021年6月期)の3期連続で売上高、当期純利益(以下、利益)が比較可能なジュエリー小売事業者362社を抽出し、分析した。

コロナ禍で環境が激変、2期連続で減収

 全国のジュエリー小売業者の362社の売上高合計は、コロナ前の前々期(2018年7月期~2019年6月期)が2946億8800万円だった。
 コロナによる影響が徐々に拡大した前期(2019年7月期~2020年6月期)は、2880億3200万円(前期比2.2%減)と微減にとどまった。
 だが、度重なる緊急事態宣言のほか、テレワークや外出自粛が定着すると、店舗販売が低迷。最新期(2020年7月期~2021年6月期)は2562億800万円(前期比11.0%減)と大幅に落ち込んだ。

 前期との増減収を比較すると、前期は増収が82社(構成比22.6%)、減収が174社(同48.0%)、横ばいが106社(同29.2%)。最新期は、増収が72社(同19.8%)、減収が216社(同59.6%)、横ばいが74社(同20.4%)で、減収が10ポイント以上増加した。
 2020年秋は新型コロナ第3波でクリスマスシーズンの需要が喪失。2021年も年初以降の度重なる緊急事態宣言の発令で、百貨店・ファッションビルなどの時短営業が影響した。
 コロナ禍では、大手を中心に、小売業者もEC販売に大きく舵を切ったが、店頭販売での落ち込みを補い切れず、売上は前年を下回る企業が相次いだ。
  

ジュエリー2021売上

損益別 コロナ禍でも7割超が黒字を計上

 362社の売上高は、前期が174社(構成比48.0%)、最新期でも216社(同59.6%)が減収だった。だが、収益は堅調で、最終損益は前期が287社(同79.2%)、最新期も272社(同75.1%)が、黒字を計上した。
 店舗見直しなどの固定費削減に加え、広告宣伝の抑制、雇用調整助成金などの各種支援金が寄与したとみられる。

 ただ、362社の最新期の利益合計は19億2600万円の赤字に転落した。コロナ禍で迅速にコストダウンに舵を切った企業があった一方、店舗撤退時の損失や原料の自社調達が負担となった企業は赤字転落が散見され、損失額を押し上げた。

ジュエリー2021利益

2021年は外資系ブランドでの経営破たんも

 新型コロナ感染拡大は、ジュエリー業界も直撃した。宝飾品は高額品が多く、付加価値を高めるため店舗内装にも多額の投資を実施している。だが、コロナ禍で来店客が激減し、百貨店やファッションビル等では休業要請や時短要請も長引いた。この結果、2020年春から販売面で苦戦を強いられた。

 低価格帯のアクセサリーや衣類等のアパレル商品も扱っている企業では、自社ECを強化する動きもある。だが、まだ限定的で2期連続の減収減益は多い。

 2021年は外資系ブランドを中心に、中堅小売の経営破たんが目立った。2月にギリシャ発の時計・アクセサリーブランド「Folli Follie」を展開していた(株)フォリフォリジャパン(渋谷区、別会社に事業譲渡し、営業を継続)が破産開始決定を受けた。5月には、「AGATHA」ブランド商品の日本法人を運営していたアガタジャポン(株)(東京都港区)が事業を停止し、経営破たんした。

 外出自粛やソーシャルディスタンスの徹底で、ジュエリーと関連の深いブライダルも深刻な影響を受けた。厚生労働省によると、2020年の国内婚姻件数は52万5490組で、前年の59万9007組から7万3517組減少(12.2%減)した。コロナ禍では結婚式・披露宴の延期、中止も相次ぎ、東京商工リサーチが2021年4月に集計した2020年度の結婚式場の倒産は9件で、前年度から2件増加した。このうち、新型コロナ関連倒産は7件を占めた。

 10月、全国で緊急事態宣言などが解除され、高額商品の購入意欲に復調気配もみえる。日本百貨店協会のまとめによると、10月の全国の加盟百貨店の美術・宝飾・貴金属の売上は、前年同月比11.7%増と2ケタ増に転じた。これからクリスマス・年末商戦は佳境に入る。ただ、ECサイトや通販サイトも市場を拡大しており、競合が激しさを増す中で顧客の争奪戦が注目される。

 

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