オープニングを制したぺぺ・オリオラが初代チャンピオンを獲得/TCRサウスアメリカ最終戦

 初年度から大幅なカレンダー改訂を経て、後半はアルゼンチン連戦が続いてきた南米大陸初のリージョン選手権、TCRサウスアメリカ・シリーズ最終戦が同国エントレリオス州にある国際トラック“アウトドローモ・デ・コンセプシオン・デル・ウルグアイ”で12月18~19日に開催された。その第8戦では、ここまで選手権リーダーを守ってきたぺぺ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)がオープニングを制して初戴冠に王手を掛けると、今季最終ヒートでも2位に入り、苦しんだ新天地初シーズンで待望のチャンピオンを獲得した。

 10月末のリオ・クアルトに続き、11月にブエノスアイレスで開催された国際ゲストを迎えての160km耐久戦を経て、コルドバ州北部のオスカー・カバレンで第7戦を実施したシリーズは、いよいよアルゼンチン4連戦のフィナーレを迎えた。

 同地アルゼンチンでのTCRにまつわる最新の話題は、同国最大のツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)に参戦するTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)が開発した新型『トヨタ・カローラGR SPORT TCR(仮称)』が姿を現したこと。TGRAのエース、マティアス・ロッシがシェイクダウンを担当した同モデルは、来季2年目のTCR地域選手権に向け、新規カスタマーによる参戦計画が進行しているという。

 また、初年度最終戦を前にTCRサウスアメリカの“プールサイド・リーグ”にも動きがあり、隣国ブラジルのトップカテゴリー、SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”連覇の強豪クラウン・レーシングが、ホンダ陣営からの新規参戦を発表。SCBシリーズ5冠を誇る“帝王”カカ・ブエノを司令塔に、2台のFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRを走らせることがアナウンスされた。

「来季からTCRサウスアメリカに参加できることを非常にうれしく思う。我々のチームはストックカーで高い評価を得ており、2015年と2016年に連続してタイトルを獲得した。そのチームを率いて新規カテゴリーで戦うことは、非常に興味深い出来事になるだろうからね」と語るのは、新たにTCRのチームマネージャーに就任した“帝王”ブエノ。

「新しい扉が開かれると、そこには新たな物語が生まれる。TCR初挑戦の来季、我々は最善を尽くし、可能な限り最高の結果を達成することを目指していくよ」

2022年のTCRサウスアメリカ参入を表明したSCB連覇の強豪Crown Racing(クラウン・レーシング)のファクトリー
レース1に向け予選ポールポジションを獲得したロドリゴ・バプティスタ(アウディRS3 LMS/Cobra Racing)は一歩及ばず

■レース1を制し、レース2でも2位チェッカーのオリオラが戴冠

 そんななか迎えた今季ファイナルの土曜予選では、タイトル候補たちが直接対決の舞台を整える快走を見せ、今季は電動ツーリングカー選手権『ピュアETCR』にレギュラー参戦したロドリゴ・バプティスタ(アウディRS3 LMS/コブラ・レーシング)がレース1に向けたポールポジションを獲得。その隣の2番手にオリオラが並ぶフロントロウとなった。

 そのまま土曜現地14時からスタートが切られた週末オープニングヒートでは、初戴冠に燃えるオリオラが会心のレースを見せ、グリッドを離れた直後にアウディを出し抜きラップリーダーの座を奪っていく。

 2番手に落ちたバプティスタの背後にはドリアン・マンシーラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/スクアドラ・マルティーノ)と、オリオラの僚友で自身もタイトル候補であるラファエル・レイス(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/W2レーシング)のホンダ勢が迫り、アウディにプレッシャーを掛け続ける。

 この展開でオリオラを追うことが叶わず、終盤まで背後のシビック2台に対し防戦を強いられたバプティスタは、10周目にはついにポジションを失い4番手に陥落。しかしその直後、マンシーラのシビックが不運にもパンクを喫して後退し、アウディはなんとか表彰台圏内の3位でフィニッシュ。

 2位レイスの3.5秒前方ではオリオラがトップチェッカーを受け、ランキング2位のバプティスタに対し22点のマージンを稼ぐことに成功。2021年最終レースでの逆転タイトルに向けては、オリオラがリタイヤでバプティスタが勝利する必要がある厳しい条件となった。

 明けた日曜現地時間9時開始のレース2は、リバースグリッド後方から巻き返したオリオラに対し、バプティスタは車列中団でスタックし4位フィニッシュが精一杯。

 第7戦の同じくレース2でキャリア初勝利を挙げていたファブリツィオ・ペッツィーニ(リンク&コー03 TCR/PMOモータースポーツ)が再びのウイニングドライバーとなり、ファイナルラップでエルネスト・ベッソーネ(プジョー308 TCR/PMOモータースポーツ)を仕留めたオリオラが2位でチェッカー。この瞬間に史上初のTCRサウスアメリカ・タイトルが決することとなった。

レース1を制覇し、レース2でも2位表彰台フィニッシュを達成したオリオラが、文句なしのシリーズチャンピオンを決めてみせた
初代TCRサウスアメリカ・シリーズ王者となったぺぺ・オリオラとW2 Racing

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