被災地の声聞き“開発” 身近な材料で「水陸両用カート」

 浮力のあるポリタンクと車輪が付いた「水陸両用レスキューカート」を、東日本大震災の被災地で支援活動を続ける鈴木幸一さん(68)=横浜市栄区=が“開発”した。きっかけは被災地で聞いた、息子が行方不明になった母の声。身近な材料で作れるとあって一般に広めたい考えで、関心のある人には設計図を提供し、作り方の指南も買って出る。

 カートは20リットルポリタンクを並べ、周囲を板とプラスチック製パイプで固定し、車輪を付ける。昨年11月に作った1台目は、ポリタンク15個を装備。約300キロの浮力があり、大人であれば2人、園児であれば10人程度を運搬できる。つかまるだけなら15人まで救助が可能という。

 契機は、東日本大震災で消防団員の息子が行方不明になった母親の言葉だった。

 これまで88カ所の被災地に赴き、約3万枚のたい焼きを被災者に無料提供してきた。2014年3月、岩手県陸前高田市でたい焼きを手伝ってくれた女性から避難の状況を聞いた。息子と高台へ逃げたが、津波が押し寄せる防潮堤下で助けを求める声。息子は装備なしに高台を降りて救助に向かい、それきり戻らなかったという。

 「困っている人がいたら助けたい気持ちになる」。同じ消防団員の鈴木さんは救助に向かった息子に同情し、無念がる。

 ポリタンク20個を使った2台目は今年1月に完成。搬送用の軽トラックも購入し、「どこでも駆け付ける準備はできている」と話す。

 材料はホームセンターで購入でき、費用は12万〜15万円程度。自治会や子供会単位で自作する場合は設計図、部品表、工作方法を提供し、ボランティアで制作指導にも駆け付ける。鈴木さんは「自分たちの身を守るためにも多くの場所で配置されれば」と願う。

 問い合わせは、鈴木さん電話090(8170)6337。

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