211,000人のオミクロン変異株の分析結果。南アフリカ最大手保険会社ディスカバリー・ヘルス社が発表 対オミクロン「ワクチンの有効性」「再感染のリスク」「重症度」「小児への感染」は?

By 前田静吾

南アフリカ共和国最大手の民間医療保険運営会社であるディスカバリー・ヘルス社(Discovery Health)が211,000人のオミクロン変異株への感染者のデータを分析した共同研究内容を発表しました。Insights4では、この内容を日本語翻訳、編集の上、日本語で提供します。

SARS-CoV-2のオミクロン変異種は、2021年11月中に南部アフリカで初めて確認、南アフリカ共和国とボツワナの科学者によって世界に発表され、その直後に世界保健機関によって懸念される変異体(Variant of Concern)と宣言されました。南アフリカでは、オミクロン変異種に感染したコミュニティが急速に広がり(ハウテン州に集中)、南アフリカのCOVID-19の第4波が加速されています。

南アフリカ共和国最大手の民間医療保険運営会社であるディスカバリーヘルス社は、370万人以上の顧客を持ち、保険金請求や民間医療制度の利用に関する広範なデータを有しており、COVID-19の影響について、実際の環境に近い規模の洞察を得ることができるユニークな立場にあります。この調査研究では、211,000人のオミクロン変異株への感染者のデータに基づき、「ワクチンの有効性」「再感染のリスク」「重症度」「小児への感染」に関して示唆に富むデータが発表されています。

出典:Discovery Health, South Africa’s largest private health insurance administrator, releases at-scale, real-world analysis of Omicron outbreak based on 211 000 COVID-19 test results in South Africa, including collaboration with the South Africa

調査概要

「ワクチンの有効性」ファイザー・ビオンテックワクチンの2回接種により、現在のオミクロン株において、入院を要するCOVID-19の重度合併症に対する70%の防御と、COVID-19感染に対する33%の防御が得られます。

「再感染のリスク」過去にCOVID-19に感染したことのある人の場合、オミクロンによる再感染リスクは、過去の変異型と比較して有意に高くなります。

「重症度」 2020年半ばに南アフリカの第一波でCOVID-19と診断された成人の入院リスクは、ワクチン接種状況を調整した後、D614G変異を含む感染と比較して、オミクロン変異型感染では29%低いことが判明しました。

「小児の感染」絶対的な発生率は非常に低いものの、予備データでは、南アフリカにおけるオミクロン主導の第4波では、D614G主導の第1波と比較して、子どもの入院リスクが20%高いことが示唆されています。

なお、これらの知見は、南アフリカにおけるオミクロン主導の波の最初の3週間のデータに関連するものであることに留意することが重要です。したがって、波が進むにつれて変化する可能性があるため、この見解は予備的なものであると考える必要があります。また、人口全体におけるCOVID-19抗体の高い血清有病率など、南アフリカ共和国の特有の要素も踏まえる必要があります。

南アフリカ共和国:オミクロン変異株による第4波

SARS-CoV-2のオミクロン亜種は、2021年11月中に南部アフリカで初めて確認されました。南アフリカとボツワナの科学者によって世界に注目され、その直後に世界保健機関によって懸念される変異体(Variant of Concern)と宣言されました。南アフリカでは、オミクロンの亜種に支配されたコミュニティが急速に広がり(ハウテン州に集中)、南アフリカのCOVID-19の第4波が加速されました。

重要なオミクロンに関する実データ。世界的な対応の指針

南アフリカ最大の民間医療保険会社であるディスカバリー・ヘルス社のCEO、ライアン・ノーチ(Dr. Ryan Noach)氏は、「南アフリカにおけるゲノムサーベイランス・ネットワークによる優れた遺伝子監視により、南アフリカにおける新規感染の90%以上をオミクロン感染が占めており、以前優勢だったデルタ変異を駆逐したことが判明しました」
「オミクロンが主導する第4の波は、以前の波と比較して、新規感染者数が著しく急増しています。全国的なデータでは、この波の最初の3週間で、新規感染と検査陽性率の両方が指数関数的に増加しており、地域社会で感染が急速に広がっている、伝達性の高い亜種であることを示しています」

370万人以上の顧客を持つディスカバリーヘルス社は、保険金請求や民間医療制度の利用に関する広範なデータを有しています。したがって、同社は、COVID-19の影響について、実際の環境に近い規模の洞察を得ることができるユニークな立場にあります。

ノーチ氏は次のように説明しています。「オミクロンの最新情報を提供することは、国内外を問わず緊急の課題であり、社会的な責任であると考えます。オミクロンの変異型が南アフリカやディスカバリーヘルス社の管理医療制度の会員に広く普及していること、また、当社のデータベースから抽出した臨床記録、ワクチン接種記録、病理検査結果などのデータが豊富で重要であることから、私たちは、そのためのユニークな立場にいます。」

この約1カ月間、ディスカバリー・ヘルス社の臨床研究チーム、保険数理チームとSouth African Medical Research Council (SAMRC)が、オミクロンの影響について大規模分析を実施しました。

SAMRCとの共同による詳細なワクチン効果分析には、211,000以上のCOVID-19検査結果が含まれ、その41%はファイザー・ビオンテック社のワクチンを2回接種した成人会員から得られたものでした。これらのCOVID-19検査結果のうち約78,000件は、オミクロン感染が激増した2021年11月15日から2021年12月7日の期間のものでした。研究結果の詳細は以下のように発表されています。

ファイザーとビオンテックの2回接種で、オミクロン変異体感染を33%、入院はさらに大幅に防ぐことができる

ディスカバリー・ヘルス社は、オミクロン感染による入院に対するファイザー・ビオンテックCOVID-19ワクチンの現実の効果を立証するために、診断陰性例コントロールデザイン(test-negative case-control design) を使用しました。3つの感度分析を行った結果、どの分析でも一貫した結果が得られたと述べています。

オミクロンの変異型ではスパイクタンパク質が大きく変化したため、抗体感受性が低下したことを示すデータが得られています。この分析結果によると、南アフリカのオミクロン変異株が主となった第4波の最初の数週間で、ファイザー・ビオンテック社のワクチンを2回接種した人は、未接種の人に比べて、33%の感染防御率を示しています。

入院に対しては70%の防御率を示しています。入院に対する予防効果は、南アフリカのデルタ波の最高値である93%から低下しましたが、それでも70%の非常に優れた予防効果があるとみなされています。

SAMRC会長のGlenda Gray教授は、「ディスカバリー・ヘルス社の分析結果には、非常に勇気づけられました。実際の環境において、つまり感染力の強い新型COVID-19亜種の存在下で、ファイザー・ビオンテック社のワクチンが重症化や入院に対して優れた予防効果を発揮することを一般の人々に示すことができるのは、非常に重要なことです」と述べています。

幅広い年齢層で維持される入院に対する防御率

年齢層に関する分析では、入院に対する防御率は、18歳から79歳までのすべての年齢層で維持され、高齢者では保護レベルがわずかに低い(60歳から69歳では67%、70歳から79歳では60%)ことが実証されています。また、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、その他の循環器系疾患など、さまざまな慢性疾患においても、入院に対する予防効果は一貫しています。

オミクロンの再感染リスクは、過去の変異型と比較としては高い

ディスカバリー・ヘルス社は、南アフリカでCOVID-19の感染が相次ぐたびに、COVID-19に感染した後の免疫力の持続性、つまり再感染のリスクを調査しています。全体として、再感染リスクは時間とともに増加しますが、オミクロンは以前の変異型と比較して再感染率が有意に高いことが示されました。

– 南アフリカの第3波(デルタ株)でCOVID-19に感染した人は、オミクロンに再感染する相対リスクが40%。
– 南アフリカの第2波(ベータ株)でCOVID-19に感染した人は、オミクロンに再感染する相対的リスクが60%。

第1波で感染が確認され、D614G変異を持つSARS CoV-2ウイルスに感染した可能性が高い人は、南アフリカにおいては、感染が確認されていない人に比べて73%の再感染リスクが示されています。

オミクロン感染では、重症化および入院のリスクが、過去の変異型と比較して低い

ディスカバリー・ヘルス社は、オミクロン変異型が他のSARS-CoV-2変異型と比較して臨床的にどのような影響があるかを調査しています。疫学的な追跡調査では、新規感染者が急増しており、オミクロン変異株の急速な広がりを示していますが、これまでのところ、入院者数は平坦であり、おそらく重症度が低いことを示しているとNoach氏は説明しています。
この重症度の低さは、南アフリカの一般住民のSARS CoV-2抗体の血清有病率が高いこと、そして、デルタ株の大規模な感染の後であることと混同される可能性があるので注意は必要であることも述べています。

成人に対してのデータでは、2020年初頭のにD614Gの第一波の時の感染と比較しても、入院リスクは29%低下、さらに、入院している成人は現在、以前の波と比較して、ハイケアユニットや集中治療室に入院する傾向も低くなっていることも本調査では示されています。

小児におけるオミクロン変異株への予備的考察

小児に対しては、COVID-19感染で重篤な合併症を発症する確率が非常に低いという事実が続いていますが、ディスカバリー・ヘルス社のデータによると、18歳未満の小児がオミクロンに感染した場合は、COVID-19の合併症で入院するリスクが20%高いことが示されています。これは初期のデータであり、慎重なフォローアップが必要と分析しています。

この傾向は、南アフリカの国立感染症研究所(NICD)が、南アフリカの第3波の感染時(2021年6月から9月)には小児の入院が増加し、第4波の現在、5歳以下の小児の入院が同様に増加していると警告したことと一致します。

南アフリカの病院からの事例報告によると、入院した小児は、COVID-19に関連しない症状で入院し、COVID-19の合併症を経験していない多くの小児が、ルーチンのスクリーニング検査でCOVID-19に陽性となります。小児のCOVID-19診断のほとんどは偶然だとも述べています。

また、ディスカバリー・ヘルス社の分析によると、小児がCOVID-19感染症で陽性となるリスクは、成人よりも著しく低いことも重要なポイントと加えています。

「オミクロンにおいて、小児がCOVID-19で陽性となる確率は成人に対して51%も低く、全体として、小児がCOVID-19合併症で入院するリスクは依然として低い」

COVID-19の合併症で入院が必要になった場合、主な診断は気管支炎と肺炎で、重度の消化器症状や脱水を伴うことも少なくありません。

「大半の子どもたちは、喉の痛み、鼻づまり、頭痛、発熱などの症状を伴う軽症で、3日以内に回復します」
と、ノーチ氏は医療従事者から得た事実報告に基づき、付け加えました。

感染対策強化とワクチン接種がパンデミック克服の主要な手段であることに変わりはない

ノーチ氏は、ファイザー・ビオンテックワクチンが、引き続きCOVID-19の重症化から高い保護効果を発揮していることは心強いと述べています。

同氏は、オミクロン変異型による大部分が軽症であることに変わりはないだろう事に期待をしている一方で。オミクロン株の高い感染率と、それに伴う突発的で高い感染者の増加を考慮した場合に、医療システムが圧迫される可能性に関する懸念を示しています。

医療システムが圧迫されることが最小限に食い止めるために、第4波の進行を監視し続け、医療システムが病気の負担に対処できるよう、国家保健省の継続的な管理体制の重要性を付け加え、以下のように感染対策の継続、ワクチンの重要性、そして関係者への感謝を述べています。

「COVID-19ワクチン接種の重要性は、今回の研究で明確に示されたとおりです。同時に、距離を置く、人の集まる場所を避ける、マスク着用、衛生上の注意など、医薬品以外の重要な対策も順守するよう強く求めます。パンデミックの最前線で、優れたケアを提供し、我が国と世界をCOVID-19パンデミックの克服に近づけるために全力を尽くしている医療従事者、科学者、支援スタッフの皆様に心から感謝いたします」

出典

Discovery Health, South Africa’s largest private health insurance administrator, releases at-scale, real-world analysis of Omicron outbreak based on 211 000 COVID-19 test results in South Africa, including collaboration with the South Africa

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