2021長崎スポーツこの1年<4> V長崎、序盤に苦しみ4位 松田体制で巻き返し

ホーム最終戦でファンと記念撮影するV長崎の選手たち=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 3月下旬、V・ファーレン長崎の松田浩監督がまだクラブのアカデミーダイレクターという肩書だったころ。高校生の試合会場で本人と話す機会があった。当時のV長崎は勝利に見放され、J3降格圏に沈んでいた。
 「V長崎の選手はみんな能力が高いから、1人対1人の勝負なら負けることは、ほぼない。3人対3人でもそうだろう。だけど、サッカーは11人でやるスポーツ。『1足す1足す1』の積み重ねで11以上にできるし、逆を言えば11以下にもなってしまう」
 ピッチを眺めながら、松田氏はそう言っていた。この時、すでに自身が次の監督を任される心構えがあったのかもしれない。約1カ月後に緊急登板が発表された新指揮官は、言葉通りに「11人が同じ絵を描ける」チームづくりを実行。個の能力に頼りがちだったV長崎に規律をたたき込み、短期間でV長崎を再建してみせた。
 8年ぶりのJ監督ながら、就任以降は30戦19勝7分け4敗と堂々の成績。最終成績で4位まで浮上しただけに、序盤のつまずきが悔やまれるシーズンとなった。
 いち早く来季の続投が発表された松田氏は、今後のチームづくりについて「基本的には継続路線」と語る。ハードワークを大前提に、攻守で「型」を大事にしつつ、勝負どころでは多少チームの決まり事から外れていても、個々が正しいと思うプレーをやってほしい。それが松田流だ。
 今季は応急措置的な対応が求められたため、松田氏の方針を理解できた選手が優先的に起用され、そうでない選手は出場機会を失った。指揮官自身も「誰が出ても戦い方が変わらないという状況にはならなかった。層の厚さが出せなかった」と振り返る。しかし、今回は開幕前の沖縄・宮崎キャンプで約1カ月間、じっくりと分かってもらうための時間が用意されている。「私が掲げるプレーモデルについて、もう少し細かい部分をミーティングで落とし込むところから始める。原理、原則、根本を納得して取り組んでもらいたい」
 看板選手の玉田圭司が引退し、10番のルアンもクラブを去った。2021年までのような派手さはなくなるかもしれないが、22年のV長崎は今まで以上にアグレッシブな試合が期待できる。


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