<社説>建設統計書き換え 徹底調査でうみ出し切れ

 建設業者の受注に関する国の統計調査が国土交通省の指示によって長年にわたって書き換えられていた。統計を巡る政府の不正は初めてのことではなく、病根の深さをうかがわせる。不正の背景を徹底して調査する必要がある。 不正があったのは統計法に基づく基幹統計の「建設工事受注動態統計」。建設業者が民間や公共機関から受注した実績を集計、公表している。基幹統計は国の統計の中で特に重要な調査統計だ。この信頼を失墜させた責任は重い。

 全国の業者から抽出した約1万2千社から都道府県が調査票を回収し、国交省が集計してきた。一部の業者は毎月の期限に遅れることがあり、国交省は2013年以降、他の業者が提出した実績を基に推計した額を計上していた。

 期限から遅れて提出された調査票について国交省は届いた月の実績として合算するよう都道府県に書き換えを指示。同じ業者の受注実績を二重に計上していた。

 基幹統計は政策立案の基礎資料だ。書き換えられていた受注動態統計は国内総生産(GDP)にも反映される。統計法は行政が偽りの統計をつくれば罰則を科すと規定する。業者が出す調査票は法的には公用文書に当たる。参院予算委で統計行政を担う総務省は野党の追及に公用文書の書き換えは「一般論として公文書管理法違反になる」との見解を示した。国による重大な法律違反の可能性が高い。

 発覚後、国交省は20年1月分から21年3月分までは再集計、新たな推計手法で再計算すると20年度受注高は従来に比べ23兆4千億円増えた。統計の妥当性が問われている。

 問題が根深いのは統計や数値を軽視する姿勢である。不正な集計については今年4月から改めているが、会計検査院が問題を指摘した後の20年1月~今年3月までの間、都道府県への指示はやめたが、国交省職員自ら書き換え作業をしていた。不正な処理と認識しながら継続していた。自浄作用は期待できない。

 2018年には厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で不正が発覚した。これを受けて各省庁が再点検し、22の基幹統計で不適切処理が確認された。しかし、国交省のずさんな処理は続いていた。

 森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんで自殺した財務局元職員の妻が国に損害賠償を求めた訴訟は、国が請求を受け入れて打ち切られた。改ざんについて解明しないまま一方的に幕引きを図った。

 不正にふたをし、責任も曖昧なままにする姿勢はずさんな事務を見過ごしてしまう土壌となっていないか。

 建設統計の不正処理が始まった13年~19年の調査票は保管期限が過ぎて廃棄されたという。国が設置する第三者委員会には、強い権限を与えるべきだ。違法性の有無、書き換え処理の端緒、目的などを徹底的に調べてうみを出し切る必要がある。

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