宇都宮市が上告断念 市長「遺族の負担を考慮」 女児死亡「といず」賠償訴訟

宇都宮市役所

 宇都宮市の認可外保育施設「といず」で2014年、宿泊保育中の山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件に関する損害賠償訴訟を巡り、宇都宮市は21日、市の過失を認定し賠償を命じた東京高裁判決を受け入れ、上告を断念することを明らかにした。市は今後、保育施設への指導監督体制の強化を図り、第三者委員会で再発防止策を検討する。

 この日の議員協議会で佐藤栄一(さとうえいいち)市長は愛美利ちゃんの冥福を祈った上で、「宇都宮地裁判決と同内容になったことを重く受け止める」「訴訟を長引かせることはご遺族の負担をさらに大きくする」と述べた。判決を受け入れ、賠償額を支払うと説明した。

 高裁判決は、市が施設への指導監督権限を行使する注意義務があったのに怠ったと指摘。注意義務を尽くしていれば事件を防げた蓋然(がいぜん)性が高かったとし、市の対応と事件発生の因果関係を認めた。

 市は判決内容を受け、警察など関係機関との連携を強化し、施設への指導方法や内容を充実させる。効果的な調査が実施できるよう、地方自治体の権限強化を国に働きかける方針。

 判決の確定後には、医師や保育施設代表者らによる「市重大保育事故再発防止検証委員会」を早期に開き、再発防止策を検討する。

 佐藤市長は報道陣の取材に対し、「市としては責任があると思っている」と述べた。遺族への謝罪については「手を合わせることが必要だと思う」とし、両親の心情を尊重しながら検討する考えを示した。

 訴訟は愛美利ちゃんの両親が、施設側と施設を指導監督する市に約1億1400万円の損害賠償を求めて起こした。高裁判決は賠償額約6300万円のうち、3分の1にあたる約2100万円を市が施設と連帯して両親に支払うよう命じた一審判決を維持し、市側・両親側双方の控訴を棄却した。両親側は上告受理を申し立てる方針という。

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