アフリカに寄付の衣料品、大量廃棄されてるって知ってた? 学生と企業がタッグを組んで企画展

ガーナの埋設場に積み上げられた衣服(セル・コフィガさん提供)

 大きな袋に詰め込まれたおびただしい数の古着。廃棄場で山積みにされ、野ざらしになった衣料品―。写真や映像で映し出される「不都合な真実」が、訪れた人に鋭く問いかける。アフリカに寄付された衣料品が現地で大量の廃棄物となっている問題を知ってもらおうと、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む学生や企業が企画する展示会が東京都港区で開かれている。(共同通信=永井なずな)

 ▽生まれ変わって

 会場に足を踏み入れると、赤やピンク、青や緑など色鮮やかに染められたシャツやズボンが並んでいた。模様や色の混ざり合った横幅約5メートルのタペストリーが天井から垂れ下がり、空間を明るくしている。

廃棄素材の布を使って制作されたタペストリー=12月7日、東京都港区

 いずれの作品も、アパレルの廃棄素材や古着を裁断したりつなぎ合わせたりしてリメークしたものだ。手がけているのはガーナ人の芸術家セル・コフィガさん(32)。廃棄衣料が放置された現地のスラム街を自ら歩いて材料を選び、個性的なデザインを施して作品に生まれ変わらせる。まるで魔法だ。

 会場では、現地の写真やドキュメンタリー映像も紹介。ガーナの首都アクラの市場に大量に流入した衣料品が安く売買されたり、郊外の埋設場で燃やして廃棄されたりする様子が映し出されている。

ガーナ人芸術家のセル・コフィガさん(C)Fibi Afloe

 ▽善意があだに

 展示会は、ファッションを学ぶ学生や環境に配慮した製品のセレクト雑貨店「エシカルコンビニ」(東京)、アフリカ事業開発企業「スカイヤー」(東京)が共同で主催。スカイヤーの原ゆかり代表が、アフリカの起業家や職人たちと事業に取り組む中でコフィガさんの作品に出会い、日本での展示会につなげた。

 原さんによると、日本や欧米などからアフリカに届く古着は年間20億着と言われるが、カビや破損、気候や生活習慣に合わないといった理由から捨てられる服も多いという。原さんは「善意の寄付が、ゴミの押し付けになってしまうことがある。寄付する際、その服は自分がもらったとしてもうれしいものか、その寄付がどんなルートで誰の手に渡るのか、一度立ち止まって考えるきっかけになれば」と語る。

廃棄衣料を使って制作された洋服の作品

 古着の過剰流入がもたらす問題は、環境面にとどまらないという。アフリカの伝統的な生産技法の衰退や、新たなファッションブランドの成長の阻害も引き起こしていると原さんは指摘する。

 安価な衣類を次々と消費する「ファストファッション」の広がりは、商品化の過程で余った布地や未使用の衣料品、行き場のない古着を大量に生み出し、環境に負荷を与えている。

 フィンランドのアールト大などの研究チームが2020年に発表した論文によると、衣料品の生産量は世界全体で2000年からほぼ倍増し、年間9200万トンの衣料廃棄が発生している。研究チームは「ファストファッションのビジネスモデルを根本的に変え、スローファッションへ早急に移行する必要がある」と警鐘を鳴らす。

 ▽できることを楽しく

 「ファッションが大好きで、以前は安い服をよく考えずに次々買っていた。着なくなった服の行き先はほとんど意識になかった」。展示会を運営する昭和女子大4年酒井奈津子さん(22)は振り返る。展示会の準備を通じ廃棄衣料の問題を自分ごととして考えるように。「福袋は今では買わなくなった。着なくなった服を友達と交換することもある」

 主催者の学生リーダーで東京外語大4年チャイルズ英理沙さん(23)は「本当に欲しい服しか買わないようにするなど、一人一人にできることがある。環境問題は大きくて深刻なテーマだけど、楽しくポジティブに取り組むことが大事だと思う」と話す。仲間と運用するインスタグラムでは、日常でできる環境に優しい取り組みを発信している。

廃棄衣料を使って制作されたシャツを着用した酒井奈津子さん(左)とチャイルズ英理沙さん

 「『こんな状態の服でも役に立つんだ!』と勘違いして破れたり色あせたりした服を回収ボックスに入れていた」「全部が無駄だったとは思わないけど、まず知ることから始めようと思った」。チャイルズさんたちの元には、こうした来場者の感想が寄せられている。

 展示会は、伊藤忠が本社の敷地内に開設した「ITOCHU SDGs STUDIO」に出店するセレクト雑貨店「エシカルコンビニ」店内で、来年1月30日まで開催されている。時間は午前11時から午後6時。月曜定休で、12月27日~来年1月4日も休み。2月12日、13日には港区のカフェ「L for You」でも開催を予定している。

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