冬なか冬はじめ

 今の時分を〈冬至 冬なか 冬はじめ〉という。きのうは二十四節気のうちの冬至で、冬の中間地点に当たり、寒さはこれから本番に入る▲冬至は一年のうちで日(昼間)が最も短く、これを境に日は長くなる。一歩一歩、春に近づくはずなのに、寒さは逆に厳しさを増す…。どこかしら今の岸田政権のさまを思わせる▲財務省の公文書の書き換えを強いられ、自ら命を絶った職員の家族が起こした裁判は、損害賠償の請求をあっさり認めて幕引きを図った。過去の政権の問題は早く「終わったこと」にしたいらしい▲混乱が続いた18歳以下への10万円給付は、にわかに現金一括も「あり」にした。国の基幹統計のデータ書き換え問題でも、真相を解明する組織をつくると表明し、野党が問いただす前に手を打った。首相は「冬なか」を早々に越え、政権安定という春を待つ心境だろうか▲さらに首相はアベノマスクの余りを廃棄することも明らかにした。在庫は実に8千万枚あまり、保管にも何億円とかかる。これもまた、批判の的になる“負の遺産”を早いとこ消し去ろうという真意は覆いがたい▲さらりと「終わったこと」「消えたこと」にすれば、さらりと世論の寒風をかわせるわけではない。「聞く力」を唱える人に、とことん説明する「語る力」が求められる。(徹)

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