BTCC連覇達成の王者が電撃移籍。アシュリー・サットンがフォード・フォーカスSTをドライブへ

 2017年にはFRのスバル・レヴォーグGTをドライブして最初のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権タイトルを獲得し、レーザー・ツールズ・レーシング移籍後は優勝請負人としてインフィニティQ50BTCCのステアリングを握り、2020年、2021年とシリーズ連覇を達成したアシュリー・サットンが、2022年を前に電撃移籍を表明。フォード系代表のモーターベース・パフォーマンスが運営するNAPAレーシングUKに加入してフォード・フォーカスSTを走らせ、ディフェンディングチャンピオンとしてタイトル防衛を狙うことがアナウンスされた。

 これにより、すでに起用がアナウンスされているダン・カミッシュは現役チャンピオンとのチーム結成が確定し、ガレージの反対側に位置する残りの2台、2021年はレーシング・ウィズ・ウェラ&フォトン・グループとして参戦した車両は、オリー・ジャクソンとサム・オズボーンが残留して体制を維持することも確認された。

 一方でチャンピオン離脱となったレーザー・ツールズ・レーシングは、スコットランド出身の18歳デクスター・パターソンを新たに起用し、王者サットンの抜けた穴をルーキーに託すことも決めている。

 5名のタイトル候補者たちによるマッチアップとなった2021年最終戦ブランズハッチでは、セカンドヒートで早くも連覇を確定させたサットンがシーズンフィナーレとなる最終レースを勝利で締めくくり、完璧なエンディングで自身3度目のチャンピオン獲得を祝う結末となった

 その段階から、すでにパドックではチャンピオンマシンのドライバーと体制変更への憶測が飛び交う状況となり、2022年の“共通ハイブリッド導入元年”となる来季に向け、27歳の王者は新天地での「複数年契約」に署名。2016年のBTCCデビュイヤーでドライブしたMG6 GT以来となる前輪駆動FFモデルにスイッチし、アンディ・ロウズ以降いまだ達成者のいないシリーズ3連覇を狙うこととなった。

「新生NAPAレーシングUKとモーターベース・パフォーマンスとの複数年契約署名を発表できてうれしいよ。これは非常にエキサイティングな、何かの始まりのように感じているんだ!」と、電撃移籍の事実を明かしたサットン。

「僕自身、これから始まる挑戦への準備はできている。彼らは皆、素晴らしい面々が集ったグループであり、心の中から純粋なレーサーたちの集まりだ。昨季のパドックで(代表の)ピート・オズボーンをさらによく知るようになり、彼が『勝たなければならない』という飢えと、チームをその方向に駆り立てる野心を抱いているのを知ったんだ」と続けたディフェンディングチャンピオン。

「それは僕自身も大好きなことで、個人的に持っているのと同じ目標を掲げて、チーム全員が新しい挑戦と目標を設定した。そしてNAPAオートパーツを新たなパートナーに迎えたことも、このチャレンジをより“スイート”にしたね。モータースポーツの象徴的なブランドが2022年のBTCCグリッドに登場し、その一部になることは僕にとって大きな魅力だったんだ」

Laser Tools Racing(レーザー・ツールズ・レーシング)移籍後は優勝請負人としてインフィニティQ50BTCCのステアリングを握り、2020年、2021年とシリーズ連覇を達成
2021年最終戦ブランズハッチでは、最終レースを勝利で締めくくり、完璧なエンディングで自身3度目のチャンピオン獲得を祝った
「ダン・カミッシュのような優れたチームメイトにより、新しいハイブリッド時代に着手するため必要な多くの開発を迅速に追求することができる」とサットン

■タイトル獲得マシンを走らせてきたメンバーごとチーム移籍

 そのサットンは、レーザー・ツールズ・レーシング移籍時と同様に自らの“一部”とも言えるチームBMRのメンバーを引き連れたジョイント加入の形態を採り、エースエンジニアのアントニオ・カロッツァを筆頭に、過去2年間にわたってタイトル獲得マシンを走らせてきたメンバーごとモーターベースに加入する。

「モーターベースは過去数シーズン、僕と一緒に戦ってきたクルーを歓迎してくれた。僕を迎え入れてくれたのと同じぐらいの熱量でね」と続けるサットン。「彼らも全員、チームを構成するファミリーの一員になった。つまり、移籍してタイトルを防衛するのに必要な要素のすべてが整ったことになる」

「前輪駆動(のクルマ)に戻るのも面白いだろうし、僕自身が楽しみにしているポイントだ。エンジニアのアントニオと一緒にフォード・フォーカスSTのパッケージ把握と改善に取り組むのが待ち遠しいよ」

「確実な開幕前テストの計画と、ダン・カミッシュのような優れたチームメイトにより、新しいハイブリッド時代に着手するため、必要な多くの開発を迅速に追求することができる。彼のような才能と手を組むことは本当にエキサイティングな見通しだ。僕らはお互いの限界を押し広げ、自分たちの中でより多くの可能性を解き放つと確信しているよ」

 これで参戦全4台のドライバーラインアップを早くも完成させたチーム代表のピート・オズボーンは、BTCCでのチーム史上最強のラインナップを披露できたことを「心から喜んでいる」と意気込みを語った。

「まさに夢が叶ったような、二重の喜びに満たされた気分だ! アッシュ(サットンの愛称)は誰もが注目するチャンピオンドライバーなんだからね」と、大物獲得の喜びを表現したオズボーン代表。

「これは彼にとって近年とは異なる挑戦であり、リヤドライブからフロントドライブのクルマに切り替えることになる。彼にとってはかなりの決断だろうが、彼がその決意を固めたことを本当にうれしく思う」

「NAPAオートパーツとの新体制発足も、おそらくこの大型契約締結を後押ししたはずだ。これ以上のドライバーラインアップを求めることはできないだろうし、そのすべての要素が2022年のBTCCタイトルに挑戦する意向を示している」

「我々はドライバーズシートで戦うアッシュ、ダン、オリー、サムと一緒に成功すること以外は何も目指していない。チームの舞台裏は最前線の面々と同じくらい強力であり、ワークショップは賑わっている。まだやるべきことはたくさんあり、それらを過小評価しているわけではないが、適切な材料が鍋にあると確信しているよ」

 この発表により、2021年は元F1ドライバーのマーク・ブランデル率いるMBモータースポーツがジョイントする形で参戦したパートナーシップは解消されることとなり、そのエースを務めたジェイク・ヒルの離脱も確定。彼らの計画も間もなくアナウンスされる見込みとなっている。

残る2台の体制は、オリー・ジャクソンとサム・オズボーンが残留することも確認された
元F1ドライバーのマーク・ブランデル率いるMB Motorsport(MBモータースポーツ)がジョイントする形で参戦したパートナーシップは解消され、ジェイク・ヒルの離脱も確定
王者離脱となったLaser Tools Racingは、スコットランド出身の18歳デクスター・パターソンを新たに起用する

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