なぜ西武・平良海馬は今季変化球を多投したのか? モデルチェンジの真相を告白

西武・平良海馬【写真:荒川祐史】

平良が明かした理由「僕のストレートはファウルになる」

西武の平良海馬投手が23日、契約更改交渉に臨み、5800万円増の年俸1億円でサインした。プロ4年目の今季は開幕から7月1日のソフトバンク戦(PayPayドーム)にかけて「39試合連続無失点」の日本記録を樹立。62試合で3勝4敗21ホールド20セーブ、防御率0.90を誇った。最速160キロの剛速球の持ち主だが、今季はあえて変化球を多投するモデルチェンジが功を奏した。(金額は推定)

昨季は最速160キロを計測したストレート中心の投球で1勝0敗33ホールド1セーブ、防御率1.87とブレークを果たして新人王を獲得。球種の割合は概ね、ストレートが55%を占め、カットボール15%、スライダー11%、チェンジアップ8%となっていた。ところが今季は、ストレートを39%ほどにとどめ、スライダーを26%、カットボールを18%、チェンジアップを15%と、変化球の割合をそれぞれ大幅に増やした。

変化球を多めにして配球を組み立てた理由を平良はこう明かす。「僕のストレートは(空振りを取れずに)ファウルになる。それをたくさん投げても仕方がない。変化球で空振りやゴロを狙った方が効果的かなと思って、そういう投球内容にしました」。真っ直ぐにこだわっていたずらに球数を増やすより、少ない労力で打ち取る道を選んだというわけだ。

「今年いい手応えがあったので、来年もほとんど変えず」

来季に関しては「今年いい手応えがあったので、来年もほとんど変えず、打者の反応や自分の感覚も取り入れながらピッチングしていきたい」と語る。本人にとっては今季60イニングで28四球を与えたことが不満で「(試合展開で)わざと勝負しない場面もありましたが、来年はそこであえて勝負していけたらいいと思います」と表情を引き締めた。

年俸大幅アップ分の使い道については「高級な物を買うタイプではない。コンビニに行ったら、値段を見ないで買う“プチぜいたく”をしたい」と笑わせた好漢。いかにも沖縄県出身らしい、おっとりした語り口が微笑ましい。一方で、高卒1年目のオフから菊池雄星投手(マリナーズからFA)に弟子入りし、球の回転などをデータ化するトラッキング機器を自費で購入するなど、野球に関しては理論派で意識が高い。このギャップがまた魅力だ。

10月23日に右足首の手術(右足後方インピンジメント症候群に対する関節鏡視下骨片除去手術)を受け、いったん退院して秋季練習に参加したものの、患部に細菌が入ったため、11月から再入院している。この日、異例のリモートでの契約更改交渉を行った渡辺久信GMは「普通なら既に退院レベルだと思うが、病院側が完璧な状態で退院できるようにと慎重にやってくれている。キャンプには全然間に合う」と軽症を強調した。

「(セットアッパーか、抑えか)ポジションが決まっていないので、目標を設定するのは難しいけれど、いずれにせよ、来年も防御率0点台を目指して頑張りたい」と平良。“球の速い変化球投手”のスタイルをさらに成熟させていく。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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