【中医協】支払側具体的項目意見書、「薬剤種類数による薬学管理料に差をつけることに反対」/「調剤料に含まれる対人業務の評価」議論難航か

【2021.12.24配信】厚生労働省は12月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、その中で、診療報酬改定の個別事項に対する各号意見が提示された。支払側の1号委員は、調剤基本料と調剤料に関して「最低限の水準で一本化をし薬学的管理指導など付加価値重視を」と要望した。また、「薬剤種類数による薬学管理料に差をつけることには反対」とした。対物業務の筆頭に挙げられてきた調剤料に関して、薬剤師会は「対人業務が含まれる」と主張してきた。薬剤種類数による薬学管理料での評価も一案となる中、支払い側の反対を受けて難しい議論となりそうだ。分割調剤に関しては、1枚様式、「病状が安定している患者」を対象とすることや処方間隔の柔軟な調整を求めた。

分割調剤については「1枚の処方箋様式」「病状が安定している患者を対象」「柔軟な処方間隔調整」要望

「令和4年度診療報酬改定等に関する1号側(支払側)の意見」では、まず基本認識を以下のように記載。メリハリのある改定のほか、かかりつけ医やオンライン診療の推進を求めている。

■I. 基本認識

〇 令和4年度診療報酬改定は、新型コロナウイルス感染症を経験し、団塊の世代が 75 歳に到達し始めて最初の改定である。コロナ禍の教訓と人口構造の変化を踏まえれば、安心・安全で効率的・効果的な医療につながるよう、これまで以上にメリハリの利いた配分の見直しを行うべきである。

〇 最も重要なことは、医療機能の分化・強化と連携の更なる推進である。入院医療については、地域医療構想の実現だけでなく、新興感染症に強い医療提供体制を構築するために、急性期病床における医療資源の集約と急性期から回復期、慢性期まで目に見えるかたちでの円滑な連携を推進しなければならない。外来医療については、慢性疾患の継続的な管理にとどまらず、急性疾患に罹った場合の対応を含め、患者に適切な受診機会が確保されるよう、全国民がかかりつけ医を持つことができる環境の整備と、紹介状なし受診時定額負担の拡大を同時並行で進めるべきである。新たな医療の形態として期待されるオンライン診療については、患者のニーズや技術進歩を踏まえ、適切に普及させるべきである。限られた医療保険財政のなかで医療の質を維持・向上させるためには、安定供給に配慮しつつ、後発医薬品の更なる使用促進等を図る等、適正化の視点が不可欠である。

〇 医療経済実態調査の結果から、医療法人の病院や一般診療所、歯科診療所、保険薬局は依然として黒字であり、足元で医療機関の経営が概ね改善している状況を踏まえれば、個々の医療機関・薬局の役割や機能を反映しない一律の評価は行うべきでない。

具体的項目への考え方については、薬局にかかわる部分は以下の通り。

〇 改定の具体的項目に関する支払側の考え方は、次頁以降のとおりである。
(2) 外来医療
⚫ 地域包括診療料・地域包括診療加算について、
➢ 院外処方における薬局との連携について、24 時間対応薬局だけでなく、地域連携薬局も認める場合、時間外・休日の服薬管理に関する対応をあらかじめ薬局と確認しておくことを求めるべき。

(6) 調剤
患者本位の医薬分業を推進する観点から、引き続き対物業務から対人業務へと構造転換し、かかりつけ薬剤師を中心とする安心・安全で効率的な薬物治療を実現することが求められる。
処方箋の受付枚数と特定の医療機関からの集中率で区分される「調剤基本料」と、投与日数に応じて高くなる内服薬の「調剤料」は、最低限の水準で一本化し、地域への貢献、高度な調製、充実した薬学的管理指導といった付加価値をより重視した報酬体系へと見直すことが望ましい。

① 調剤基本料について、処方箋の受付枚数と特定の医療機関からの集中率で区分する方式を継続するのであれば、多店舗展開や医療機関への依存によって経営効率を高めている薬局の評価を限界まで適正化するべき。

⚫ 大型チェーン薬局を想定した調剤基本料3について、要件の厳格化と点数の引き下げを行うべき。

⚫ 医療機関と不動産取引等の関係性について、グレーゾーンを明確化するとともに、医療資源の少ない地域の薬局を除き、全ての薬局に対して、特別調剤基本料への該当の有無に関する申告を求めるべき。

⚫ 公道に面しておらず医療機関の敷地内に立地する薬局については、敷地内の医療機関の処方箋を受け付けた場合、院内処方に準じた取り扱いとする。また、薬局を敷地内に誘致した医療機関については、全ての処方箋料を減算するべき。

② 地域支援体制加算について、医薬品医療機器法等に基づく「地域連携薬局」の認定制度と連動させて、認定を受けていれば加算の施設基準を満たしているものとして取り扱う。
加算の施設基準のうち在宅対応の実績に関する基準値は、認定基準に合わせるかたちに見直すべき。

③ 内服薬の調剤料について、投与日数が2週間分までの点数が日数倍数制となっていたものを令和2年度改定で是正したことに引き続き、原則、投与日数によらず一律の点数になるように見直すべき。

④ 薬剤服用歴管理指導料について、薬剤種類数が多い場合に説明時間等が長くなることを理由として、評価に差をつけることには反対する。

⑤ 服用薬剤調整支援料や薬剤服用歴管理指導料のあり方については、オンライン資格確認等システムを基盤とする薬剤情報の閲覧や、電子処方箋システムによる重複投薬・禁忌のチェックが可能になり、業務負担が軽減することを踏まえて検討するべき。

そのほかの個別事項として、以下の通り、後発医薬品などを挙げた。

2. 個別項目
(1) 後発医薬品
今後も後発医薬品の使用促進が重要な政策であることは変わらない。新指標による後発医薬品の数量割合は、全体としては上昇基調だが、都道府県によるバラツキがみられる。新たな政府目標である「全都道府県で 80%以上」を達成するために、関連する加算を見直すべきである。
その前提として厚生労働省には、製薬業界に対する安定供給の働きかけや、出荷停止品目等を後発医薬品の数量割合から除外する措置の継続を要望する。製薬業界には、安定供給の確保と後発医薬品に対する国民の信頼回復に向けた取組みに期待する。
① 後発医薬品の数量割合を指標とする薬局の「後発医薬品調剤体制加算」と医療機関の「後発医薬品使用体制加算」「外来後発医薬品使用体制加算」について、基準値の最低ラインを 80%まで引き上げるべき。

② 薬局の「後発医薬品調剤体制加算」における減算の基準値について、現行の 40%から引き上げる。また、歯科を含めた医療機関の「後発医薬品使用体制加算」「外来後発医薬品使用体制加算」にも、減算措置を導入するべき。

③ 後発医薬品の数量割合を指標とする加算について、計画的な廃止も念頭に入れて今後のあり方を検討するべき。

④ 医療の効率化をさらに促進する観点では、後発医薬品のある先発医薬品を後発医薬品に置き換えるだけでなく、後発医薬品のない新薬に替えて、同等の効果が得られる類似の後発品を優先して使用することが重要である。そのため、「後発医薬品調剤体制加算」「後発医薬品使用体制加算」「外来後発医薬品使用体制加算」におけるカットオフ指標の基準値を現行の 50%から引き上げるべき。改定結果検証の令和3年度特別調査の結果、令和3年4~6月におけるカットオフ指標の数量割合は、薬局が平均 72.6%(中央値73.0%)、診療所が平均 57.0%(中央値 73.7%)、病院が平均 59.9%(中央値 61.3%)だった。

(2) バイオ後続品の使用推進
バイオ医薬品は総じて単価が高く、薬剤費への影響が今後さらに大きくなることが見込まれ、バイオ後続品の使用促進は極めて重要である。入院においては、DPC/PDPS による包括評価の下で後続品に切り替えることによる医療機関側のメリットがあるが、外来や在宅で後続品が普及するには、効果や副作用について、医療機関から患者に丁寧に説明することが欠かせない。令和2年度改定で在宅自己注射について「バイオ後続品導入初期加算」が創設されて以降、後続品の使用割合が上昇していることも踏まえ、外来化学療法について、バイオ後続品の処方を評価する加算を設けるべき。

(3) 医薬品の適切な使用の推進

① フォーミュラリは、有効性・安全性とともに経済性を考慮し、「効果が同等であれば、より経済的な医薬品を優先的する」とい考え方に基づいて、薬物治療を標準化するためのツールである。最終的な判断は医師に委ねられ、処方権を制限するものでは一切ない。

⚫ 「カットオフ指標」はフォーミュラリの推進とも密接に関連し、フォーミュラリを推進する観点からも、カットオフ指標の基準値を引き上げるべき。

⚫ 療養担当規則等のなかで「効果が同等であれば、より経済的な薬剤を優先する」ことを定めることも、長期的な視点で検討するべき。

⚫ フォーミュラリに対する報酬上の評価については、ガイドラインの状況や自主的な取組みの状況をみながら、丁寧に議論する必要がある。

⚫ 医療費適正化計画等の薬剤費に関連する施策のなかでフォーミュラリを位置付けることも、フォーミュラリの考え方を広げていくための有効な方法である。

② 分割調剤については、残薬の調整、患者の利便性、医師の負担軽減等の観点から、活用が望まれる。薬剤師が患者の服薬状況だけでなく、患者の病態を適切に把握し、必要に応じて受診勧奨する等、薬剤師の対人業務の能力向上も今後の普及に不可欠な要素になる。患者・医師・薬剤師のいずれにも使い勝手の良い、簡便な仕組みへと見直すべき。

⚫ 1枚の処方箋を繰り返し使用できるように、処方箋様式を見直すべき。

⚫ 服薬管理が難しい患者だけでなく、病状が安定している患者であれば可能とするべき。

⚫ 処方医と薬局の薬剤師が連携して柔軟に処方間隔を調整できるようにするべき。

③ 薬剤給付の適正化については、市販品類似薬について網羅的に医療用医薬品としての必要性を再評価し、薬局・薬店の薬剤師の活用や、フォーミュラリの推進と合わせて、安心・安全なセルフメディケーションや薬物治療の標準化と一体的な取組みを進めるべきである。

⚫ 外用の消炎・鎮痛薬について、NDB データで処方箋1枚当たり処方枚数の分布をみると、現行の上限である 70 枚程度と概ね1か月分に相当する 35 枚程度が多く、最大量まで処方する場合を除けば、35 枚を超える処方箋が少ないことを踏まえ、上限を 35枚まで引き下げるべき。

⚫ 既に一定の対応が行われたもの以外について、保険給付の妥当性を継続的に検証し、引き続き必要な対応を検討するべき。

薬価については以下の要望をした。

III.薬価・保険医療材料価格等の見直し
薬価制度、保険医療材料制度、費用対効果評価制度いずれも令和4年度改革の骨子を踏まえ、着実に見直しを進めるべき。
薬価制度については、保険財政に極めて影響の大きい新薬が保険適用されることを想定し、個別的な取扱いを含めて柔軟な対応を検討する必要がある。

編集部コメント/調剤料の議論は難航しそう

調剤に関わる支払側の意見では、冒頭で「調剤基本料」と「調剤料」に触れ、一本化、しかも最低水準に合わせるという厳しい意見になっている。
これがそのまま反映されることにはならないが、特に対物業務の筆頭に挙げられてきた「調剤料」に関しては、薬剤師会は「対人業務が含まれる」と主張してきた。薬剤種類数による薬学管理料での評価も一案となる中、支払い側の反対を受けて難しい議論となりそうだ。

「薬剤種類数」などによるシンプルな切り分けは難しそうだ。あくまで付加価値業務を加算にするような方向が強くなる可能性があるだろう。

敷地内薬局についても「院内処方に準じた取り扱いに」「誘致した医療機関の全ての処方料の減算を」など、厳しい意見が表明されている。

© 株式会社ドラビズon-line