プロ野球 カープ・今村の引退にねぎらいの声 長崎県勢唯一の甲子園V投手

2009年春の選抜高校野球大会で春夏通じて県勢初の日本一に輝いた清峰。今村(右から3人目)は絶対的エースとして活躍した=兵庫県西宮市、甲子園

 長崎県勢唯一の甲子園優勝投手が現役生活に別れを告げた。2009年春の選抜高校野球大会で北松佐々町の清峰高を日本一に導き、プロでは広島で球団史上最多の115ホールドを重ねた今村猛投手。長崎を、全国を沸かせてきた右腕は30歳。その勇姿を「まだまだ見たかった」。多くの人に惜しまれながらユニホームを脱ぐ。
 今月8日の12球団合同トライアウトに今村投手の姿はなかった。元清峰高監督で現在は山梨学院高を率いる吉田洸二さんは「オファーを待つというのは今村らしいかなと思った。高卒でバンバン投げて、本当は引退試合もあっていいと思うすごい選手。ちょっと静かな終わりだなと…」と残念がりつつ「私の人生にも、長崎の高校野球にも多大な功績を残してくれた。本当にお疲れさまでした」と労をねぎらう。
 今村投手は09年選抜で全5試合44回で防御率0.20を記録した。花巻東との決勝は現メジャーリーガーの菊池雄星投手と投げ合って1-0で完封。「関東に来て10年。いろんな高校と試合をさせてもらったけど、今村ほど完成度の高い投手は見たことがない」。恩師はあらためて最大級の賛辞を贈った。
 淡々と表情を崩さずに…。高校時代からマウンドでの様子はそう評されてきた。清峰高時代の同級生で主将だった大阪市の会社員、屋久貴博さんは「仲間内では喜怒哀楽を普通に出すやつ。一生味わえない経験をさせてもらったし、ずっと刺激をもらってきた」。戦力外通告後、当時のチームメートでつくるLINE(ライン)グループに報告があったといい「もっと、というのが率直な気持ち。今村らしく別の生活を楽しんでほしい」。
 同じく清峰高でバッテリーを組んだ川本真也さんは社会人野球の日立製作所で活躍し、くしくも今季で現役引退。23日に今村投手へ連絡して「同じタイミング」と返信があった。「よくプロの世界で続けたと思う。さみしいけど、すごいし尊敬する」。公立校の甲子園優勝は09年の清峰が最後。かつて自らめがけて投げた右腕の心に寄り添い、こう続けた。
 「高校時代、彼がいたから日本一を目指せた。そのポジションでやってこれた。ありがとう」


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