Vol.108 MONSTER DIVE 岡島氏に訊く、TriCasterを使い続ける理由。画作りの自由度と対応力、業務内容との親和性の高さ[Point of View]

大手企業Webサイトのシステム開発や大規模音楽ライブ、イベントの配信、そして自社でのWebサービス開発、運営など、あらゆるデジタルプロモーションのニーズに応える株式会社MONSTER DIVE。同社の代表取締役 岡島将人氏に、10年以上に渡りライブ配信で使用しているNewTek TriCasterの業務での使い勝手の良さや、TriCasterを使い続ける理由について伺った。

業務内容とTriCasterの親和性の高さが抜群!自由度も高くて思い通りの画作りを実現

――MONSTER DIVEの主な業務内容を教えてください

岡島氏:

主要な業務として4つの事業部があります。

  • WEBプロダクション事業部
    サイトの企画、デザイン、コーディング、システム開発等
  • LIVEプロダクション事業部
    音楽ライブ、番組制作、イベント会場でのライブ配信、自社スタジオの運営等
  • SERVICEプロダクション事業部
    Webサービスの開発、運営
    TweetVision、STREAM TICKET、ストチケLite等
  • MEDIAプロダクション事業部
    「RIDE HI」ライダーに向けたメディア
    雑誌、Web、YouTube、リアルイベントを軸に展開

岡島氏:

特にWEBプロダクション事業部とLIVEプロダクション事業部は事業部的には分かれていますが「デジタルプロモーション」を軸に統合的に活動しています。
例えば「映画のPRをしたい」というご依頼に対して、Webサイトでのキャンペーン、LINEを絡めるイベント、番組配信、リアルイベント等、様々な選択肢をフラットに組み合わせてクライアントの目的に合った本当にやるべきプロモーションを提案します。
その中でも、LIVEプロダクション事業部の実施するほとんどの現場にて、TriCasterを使用しています。

MONSTER DIVE 制作事例

――TriCasterを導入したきっかけを教えていただけますか?

岡島氏:

弊社が配信事業を開始した後に、間もなくTriCasterを導入しました。配信中のV出しやテロップなどの映像演出を、予算の都合上ワンマンオペレーションで行う必要があり、当時はそれに特化したシステムが他にありませんでした。 他社には非常に高価な機材も存在していましたが、当時の配信事業規模には見合わず、コストパフォーマンスを考えるとTriCaster以外に選択肢はありませんでした。
また、この価格で精度の高いクロマキーが使えるのも大きな理由でした。当時はゲーム系の配信が多く、プレイヤーとゲーム画面の合成が必要でしたし、番組を作る際に物理的に大きなスタジオを借りるのも難しかったのですが、TriCasterを使うことで比較的小さな場所で十分な品質のクロマキー合成、画作りが可能になりました。
ライブ配信を始めた当時は、配信そのものが業界の端のような立ち位置で、当初は会場のスクリーンに出す映像信号をそのまま貰って配信するスタイルが多かったですね。そのうち、会場の雰囲気も伝わるように会場を映すカメラも用意してスイッチングしたり、イベント出演者を呼んで裏番組的な配信を行ったり、徐々にライブ配信の認知度が上がり、イベントでの撮影、映像出力全般を任されることが増えました。その後もイベントそのものを弊社で担当するなど、少しずつ業務範囲が広がりました。
TriCasterがなければその時々で求められる画作りにも対応できなかったですし、現在大きく成長した弊社のLIVEプロダクション事業部自体が無かっただろうと思っています。TriCasterにはとても感謝しています。これまでに複数台のTriCasterを導入、機材の更新をしていますが、今はTriCaster 2 Eliteをメインで使用しています。コントロールパネルについて、860や8000では2-Stripeでしたが、TriCaster 2 Eliteでは4-Stripeを使用しています。

――どんな時にTriCasterの使い勝手の良さを感じますか?

リアルタイムで画作りの調整が可能

岡島氏:

例えば、イベントのフォトセッションなどで出演者の背後に設置したスクリーンに企業ロゴを出力することがあるのですが、ぶっつけ本番で出演者がスクリーン前に立つと、ロゴが出演者と被って見えなくなってしまうことがあって。そんな時でもTriCasterなら、その場でロゴの位置を修正できるので非常に便利です。
他にも、セミナーの登壇者を定点カメラで撮影している際に、登壇者が立ち位置から微妙に移動してしまった場合でも、映像のクロップ位置を少しずらすことで登壇者を映像の中心に配置しなおすことができます。 TriCasterでは、このようなリアルタイムでの調整は簡単な作業なのですが、テレビやイベント関係者からは「そんなことができるんですか?!」と驚かれることがあります(笑)。
ネット番組はテレビ放送と比較して、番組の出演者が進行をコントロールすることが多く、リハーサルを通して少しずつ内容を変えていくこともあれば、本番中に台本を度外視して「こうしよう!」という急な展開もあります。その場の流れに合わせて画作りを考えて変えていくことも珍しくありません。
バラエティ色の強い番組では、出演者の変顔を保存しておいて後で流したり、出演者の1人を画面から消すなどの「遊び」は視聴者にもウケますが、テロップで遊ぶ、出演者をいじるといった演出は少しでもタイミングがずれると面白くなくなってしまいます。そういった作業を1人でイメージし、1人ですぐに作りあげられるTriCasterの瞬発力が鍵となっています。
ステーブルなものからバラエティに富んだものまで、しっかりとしたクオリティで幅広いジャンルに対応しているという評価を弊社が頂いているのは、スタッフの頑張りと、TriCasterの様々な機能によるところが大きいと考えています。

複数のソースを同時に出力できる

岡島氏:

イベント会場のスクリーンにはプレゼン資料の画を出力し、配信ではプレゼン資料と登壇者を合成した映像を出力したいという場合がよくありますが、TriCasterは複数のソースを同時に出力できるので、異なる映像をそれぞれの場所に出力することも可能です。複数の映像を同時に切り替える場合も、ワンマンオペレーションであれば問題なくタイミングを揃えることができます。

NC1 Studio I/Oモジュールを使用して入出力を拡張

岡島氏:

最近、映画のPRで海外の出演者とZoomで繋ぎ、その映像を会場のスクリーンに映して、会場にいる日本の俳優さんたちと一緒に撮影するフォトセッションがありました。
このようなケースではZoom参加者のビデオ通話をそれぞれ個別のPCで受け、PCからNDIでTriCasterに送信しています。Zoomを使った配信は入力数が多くなりがちですが、NC1 Studio I/Oモジュールを使うことで入力ソースの追加に対応しています。
NDIと言えば、ホンダ「ヴェゼル」の発表会では、出演したYouTuberの方々にNewTekのNDIカメラアプリを入れたiPhoneを持って撮影してもらい、その映像をNDI (Wi-Fi経由) でTriCasrterに送り、配信用の映像として活用しました。こういった演出ではNDIが非常に有効だなと感じました。

ホンダ 新型「VEZEL(ヴェゼル)」 ワールドプレミアの映像

TriCasterユーザーならではのTips

――TriCasterを使用する際にトラブル回避など気を付けていることはあるでしょうか

どこまで小心者になれるか

岡島氏:

危険を予測しながらの運転を「かもしれない運転」と表現しますが、ライブ配信においても考え方は同じです。配信を止めないために「ネットワークが落ちるかもしれない」「電源が落ちるかもしれない」「ケーブルが断線するかもしれない」「PCが落ちるかもしれない」といった可能性を前提に入念にテストや準備をします。
また、TriCaster本体に不用意にUSB機器を沢山接続しない、本番前に安全にTriCasterを再起動できるタイミングを作るといった配慮も大切だと考えています。 弊社では配信、録画、オーディオのミックス作業はTriCasterではなく別機材で行っています。オーディオは基本的にミキサーでミックスしたものをTriCasterで受けるようにしていて、配信は別途エンコーダーから、バックアップ用途などの録画も外部機器で行っています。
もちろん配信や録画はTriCasterでもできますが、極力リスクを減らすという観点から分けられる工程は分けるようにしています。実際、弊社では本番中にTriCasterの画面が真っ黒になってしまうというような大きなトラブルが発生したことは一度もありません。

TriCasterを使い続ける理由

――TriCasterを使い続ける理由は何でしょうか

「自分で作ってる」感

岡島氏:

使い慣れているというのもありますが、「自分がイメージした画」を瞬時に作り出すことができる点ですね。自由度の高いM/Eや、クロマキーなどを駆使してレイアウトを考え、組み上げる作業は、「自分が作っている」と強く実感できる瞬間です。
新しい演出をすると、番組の出演者から「他のスタジオでこんな画見たことないですよ!」という言葉を頂くこともあり、良い意味で遊びながら演出を進化させていっています(笑)。
TriCasterも常に進化し続けていて、私も完全に使いこなせているとは思っていません。その進化について行っているという印象です。
まだまだやりたいこともありますし、例えばバーチャルスタジオ機能は今後もっと使いこなしていきたいと考えています。ライブプロダクションシステムとしてのTriCasterをイベント機材の中心に据えるという考え方は、今後も変わらないと思っています。
最後に一言。TriCasterを使うとある程度ワンオペできます。でも番組やイベントはチームで作るものです。「一人でなんでもできる」のではなく、1人ができる幅が広がることで「チームでなんでもできる」となります。 チームのレベルを上げて、より一層の番組づくり、イベントづくりをおこなっていきたいと思っています。

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