弁慶のラジオドラマ制作 FM田辺、来年3月から放送

ラジオドラマ収録に臨む講談師の玉田玉山さん(前列)や弁慶役の山本大樹さん(後列中央)ら声優陣=和歌山県田辺市宝来町で

 田辺三偉人の一人、武蔵坊弁慶を題材にした講談風大河ラジオドラマ「弁慶記」が、来年3月、和歌山県田辺市の地域FM「FM TANABE」(88.5MHz)でスタートする。弁慶の生誕からライバルや仲間との出会い、激動の時代を駆け抜ける姿を描く。スタッフは「弁慶の力を借りて、コロナ禍の閉塞感を打ち破りたい」と話している。

 弁慶は平安末期に源義経に仕えた僧兵。生誕の地とされる田辺市には多くの伝承が残る。一方で、どんな人生を送ったのか史料に情報は少ない。ドラマは史料や古典作品だけでなく、地域伝承や最新の学説を反映したオリジナル。1話約10分で全60話。

 ドラマは講談師の語りと声優の演技で構成。登場人物は約200人で、地元の一般の人も多数出演を予定している。音楽も全てオリジナルで、地元の中学校も演奏で参加する。紀伊民報後援。

 企画、脚本、演出を手掛けるFM局の大﨑健志さん(36)は「ラジオは作業しながら聴けるのが利点。仕事や家事、車の運転をしながら、自然に弁慶の魅力を感じてもらえればうれしい。合戦シーンの迫力は圧巻。声から人物や場面を想像するので、一人一人違った弁慶像が生まれる」と「聞きどころ」を語る。

 すでに主要キャストの収録は始まっている。講談師の玉田玉山さんは「講談はいつも1人なので、多くの仲間と一緒で心強い。弁慶は古典にも登場するが、ドラマでは現代的な魅力がある。ここからずっと語り継がれる新しい古典が生まれるかもしれない」と手応えを語る。

 弁慶役を務める声優の山本大樹さんは「市内の弁慶ゆかりの地を訪ね、歴史上でなく、ここにいた人物と実感できた。ドラマの弁慶は、力強さだけでなく、傷ついたり、悩んだり、仲間と共に成長したりと親近感がある。青春時代、戦へと向かう歴史の流れを楽しんでほしい」とアピールした。

 放送は来年3月7日~5月27日の予定。月~金曜に1日同話3回放送。土、日曜に5話分を再編集して放送する。インターネットでも聞ける。放送の翌週には動画投稿サイト「ユーチューブ」で音源を配信する。

■CFで資金募る

 「FM TANABE」は、制作資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。返礼品は2700円で闘雞まんじゅう、5千円で番組宣伝CMでの名前紹介、1万円で村人役でのラジオドラマ出演などがある。CFはキャンプファイヤーを使用している。募集は来年1月末まで。

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