おむすびは凍るから持たない…季節到来!雪山ではこうなります 安全に楽しむために準備は怠りなく【ふくいのそと遊び】

雪山の季節到来! 雪がふるとウキウキするようになりました=勝山市の取立山
無雪期と雪山は違うことがたくさんあります=大野市の荒島岳
樹木が茂る山頂も雪が降ればご覧の通り。雪山で歩くルートは夏の登山道と異なります=大野市の銀杏峰
はっきりとしたトレースも、悪天候になればあっという間に消えてしまうことも=勝山市の取立山

 雪の季節になりました! 

 雪。そう耳にするとどう思われますか?

 私は兵庫県三木市出身です。雪が降ることはまずなく、数年に一度、冷えた2月の朝にちらちらと舞う程度。積もった雪はスキー場でしか見たことがありませんでした。

 結婚前に「見渡すこの一面が白くなるよ」と聞いても想像もつかず。

 雪ってふわふわとして美しいものなんだろうな、という漠然としたイメージだけでした。

 

 でも暮らすようになってからの雪は・・・

 雪雷におどろき(夏の夕暮れでもないのにゴロゴロバリバリ!どういうこと!!?)バシッ!バシッ!と窓を叩く吹雪におびえ、日々の雪かきで疲弊し、雪道の運転にいたっては恐怖以外のなにものでもなく。

 雪の季節のどんよりと重い空に気持ちもどんより。

 足元もなにを履いたらよいかわからず、パンプス以外に唯一もっていたコインローファーを履いてパート先に向かい「なに履いてきたのーー」とあきれられたり(もちろん靴も足もびしょぬれでした)。

 

 雪なんて大嫌い!

 本音を口に出して言うことのできなかったあのころ、何度そう叫びたいおもいに駆られたことか。

 でも今は。

 雪予報をきくだけで「降るのね♪」と心ウキウキ。

 毎年「どうぞ山とスキー場にたっぷり雪が降りますように」と願い、比例して「麓で雪があるのも仕方ないよねー♪」と思うようになりました。

 (県外出身で北陸の気候にきもちがめげそうになってらっしゃる方は多いと思います。どうぞ山に登ってみてください。里山、そして雪の里山をたのしむようになったら、もうもう福井が心底だいすきになりますよ!)

 

 さて表題の「雪山だとこうなります」

 無雪期と雪山では準備など異なることが多いのは当然ですが、お店でお話ししていて、言わずもがなかしらと思うようなことでも「そうなんだ!」と言っていただくことがあるので思いつくままに書いてみたいと思います(今週末に雪山泊まり山行を予定していて頭のなかはそのことで一杯なのです(笑))

レインカバーは使いません

  無雪期の山でもレインカバーはほとんど使わないのですが、雪山にいたってはレインカバーの出番はまずありません。足をすべらせて倒れると重さのあるザックが下=雪面に向きやすいです。そうなるとザック表面に装着しているワカンやストックなどの凹凸がカバーで覆われて引っかかりが少なく、摩擦抵抗が期待できず滑落スピードが加速することがあります。

  濡れ対策はザックのなかで完結するようにします。手っとり早くごみ袋大サイズをザック内面にひろげ、すべての荷物はそのごみ袋のなかに。市販されている大型の防水スタッフバッグを同様に使うとスマートです。

  ただし山小屋利用の場合は、その山小屋が営業小屋なのか避難小屋なのかに関わらずレインカバーを使います。理由はずぶ濡れになったザックを小屋のなかに持ち込むのはマナー違反だからです。

おむすびは美味しいけれど持っていきません

  はい、凍るからです。炊飯したお米は水分量が多く凍ると口のなかでもなかなか溶けません。凍ったおむすびは美味しくいただけないだけでなく胃をしっかり冷やしてしまいます。

  おむすびの他にはドライフルーツもダメ。凍ります。行動食の大定番ですが凍ったドライフルーツを口にいれるとガリッと石を嚙んだかと思うほど固いです。凍ったドライフルーツは・・・以下同文。

手袋はたくさん持っていきます

  同じ種類のものを複数・・・ではないですよ。いろんな分厚さの手袋を場面に応じて替えてつかいます。ちなみに冬のアウトドア界ではもう定番の「防寒テムレス(ショーワグローブ)」は私は行動中には使いませんが必ず持っていきます。使うのは①ワカンやアイゼンの脱着時 ②長い休憩時 ③テント設営や水つくりのための雪あつめのとき 等です。

地図読み必須

  夏道とはことなる冬道。しっかり積もって藪が雪で覆われてしまうとどこでも歩けるようになります。登山道がない山も歩きやすくなるのが冬山の魅力。ですが、どこでも歩けるということは、どこでも踏み入ってしまうということ。地形を頭にいれておくことはもちろん、地図とコンパスは必須です。

  「トレースがあるところしか行かないよー」とおっしゃるかもしれません。

 山の天気はかわりやすい、まして冬山の天気は本当にコロコロとよく変わります。荒れると先行者のトレースも五分も待たずにきれいになくなります。慣れ親しんだ里山でもホワイトアウトで視界がきかなくなることはよくあります。地図読み必須です。

  「スマホのアプリやGPSがあるし・・・」とお思いですか?

 とても便利なのは認めます。でも私は冬山に限らず一年をとおして主要な手段としては使わず、あくまでバックアップとしての使用のみです。

  電子機器は壊れる可能性があります。もしも壊れたら? そのときの予備として地図とコンパスを持って行っていますか?持っていたとしてそれを機能的に使いこなせますか?

 落とすと見つけられない可能性が高いです。ふかふかの新雪に落とすと深くもぐりこみ見失うことも。雪の締まった残雪期になるとそのまま滑り落ちてしまいます。

  スマホやGPSは素手での操作が基本である点が大変危険です。スマホやGPSをしっかり確認したいとき、それは悪天候や視界不良のときです。そんなときは完全防備にしなくてはいけないのにオーバーグローブなど冬用手袋をしたままでは操作しづらいでしょう。しかしそんな場面で素手になるのは雪山ではご法度です。

  バッテリーがもちません。悪天候、低温での操作自体が機器のバッテリー残量の急激な低下をまねきます。

 地図読みは親しんでしまえばこれ以上ない頼もしさであるだけでなく、単純にたのしいものです。ぜひ紙の地図に親しみましょう。

「そもそも天気がいいときしか登らないし・・・」

 天気がいいときしか登らないから。よく知っている人のうしろを歩くだけだから。トレースがついているときしか登らないから。

 お店でもよく伺うセリフです。

 でも私はこう思います。「そんなあなたは遭難予備軍です。」

 自立した登山者となることは私もずっと目指しつづけています。

 あらゆる面で自立した登山者たりえるよう、ご一緒にすすんでまいりましょう。

 

 いよいよ雪山の季節まっただなか。

 どうぞ皆さまの雪山シーズン、安全がまもられて実り多いものとなりますように。

(登山用品店「遊山行」=福井市 服部佐和子)

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