宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」射点に到着! 12月25日打ち上げ予定

【▲射点に到着した「アリアン5」ロケット(Credit: ESA - S. Corvaja)】

ついにこの時がやってきました。クールー(フランス領ギアナ)のギアナ宇宙センターでは現地時間12月23日、新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」を搭載した「アリアン5」ロケットの射点への移動作業(ロールアウト)が行われました。ウェッブ宇宙望遠鏡の執筆時点での打ち上げ目標日時は、日本時間2021年12月25日21時20分に定められています。

アリアンロケットを運用する欧州のアリアンスペースとアメリカ航空宇宙局(NASA)は、現地時間12月21日にウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ準備完了審査(LRR:Launch Rediness Review)を終えており、打ち上げ準備は最終段階に入っています。ウェッブ宇宙望遠鏡の搭載作業が行われた最終組立棟から姿を現した全長53mのアリアン5は、移動式の発射台ごと牽引されて射点へと運ばれました。

【▲移動式発射台とともに射点へと運ばれる「アリアン5」ロケット(Credit: ESA - M. Pedoussaut)】

このあとは射点においてアリアン5のコアステージ(第1段)への液体水素・液体酸素の充填や、最終チェックなどが行われます。なお、打ち上げの様子はNASAの公式ウェブサイト、YouTubeチャンネル、SNSアカウントなどで日本時間12月25日20時からライブ配信される予定です。

・NASA Live:https://www.nasa.gov/nasalive
・YouTube:https://www.youtube.com/nasa
・Twitter:https://twitter.com/NASA

■ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡について

【▲観測を行う宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」を描いた想像図(Credit: Adriana Manrique Gutierrez, NASA Animator)】

ジェイムズ・ウェッブは六角形の鏡を18枚組み合わせた直径6.5mの主鏡を持ち、赤外線の波長で天体を観測する宇宙望遠鏡です。今年で打ち上げから31周年を迎えた「ハッブル」宇宙望遠鏡(主鏡の直径2.4m)は地球を周回していますが、ウェッブ宇宙望遠鏡は地球と太陽の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のひとつ「L2」(地球からの距離は約150万km)まで移動して観測を行います。

赤外線を利用するウェッブ宇宙望遠鏡の重要な役割の一つが、遠方宇宙の観測です。遠くの宇宙を観測することは、初期の宇宙を観測することでもあります。地球上では一瞬で届くように感じる光(電磁波)も、実際には秒速約30万kmという限られた速度で進みます。天文学で用いられる「光年」という単位は、光が1年間に進む距離をもとに定められています。そのため、100億光年先の銀河から届いた光は、今から100億年前にその銀河から放たれた光ということになるわけです(※)。

ただ、この宇宙は膨張しているので、宇宙空間を進む光の波長は距離が長くなるほど伸びていきます。人の目に見える可視光線であれば、遥か彼方にある銀河から地球に届くまでのあいだに波長が伸びて、赤外線になってしまいます。ウェッブ宇宙望遠鏡は遠方宇宙から届いた赤外線を捉えることで、初期宇宙で誕生した宇宙最初の世代の星(初期星、ファーストスター)や最初の世代の銀河を観測し、宇宙の起源に迫ることが期待されています。

関連:NASAの次世代ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、初期宇宙の謎に挑む!

赤外線は天体だけでなく熱を持つ物体からも放射されます。宇宙望遠鏡自体も例外ではなく、主鏡や副鏡、観測装置、機体の温度をできるだけ低く保っておかないと、自身が放射した赤外線が観測の妨げになってしまいます。機体を低温に保つために、ウェッブ宇宙望遠鏡は太陽光を遮断するためのサンシールド(日除け)を装備しています。

サンシールドはサイズが約21m×14mという巨大なものですが、直径6.5mの主鏡も含めて、そのままではアリアン5のフェアリング(直径5m)に収まりません。そこで、ウェッブ宇宙望遠鏡では主鏡・副鏡・サンシールド・太陽電池パネルをすべて畳んだ状態で打ち上げ宇宙空間で展開する方法が採用されています。

▲ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げから主鏡の展開完了までを再現した動画▲
(Credit: ESA/ATG medialab)

※…記事中の距離は天体が発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています(参考:遠い天体の距離について|国立天文台

Image Credit: ESA
Source: ESA / NASA
文/松村武宏

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