小山駅の人気立ち食いそば店が閉店へ 新海誠監督アニメの聖地

1月14日で閉店する「小山駅きそば」(中沢製麺提供)

 JR小山駅構内の宇都宮線上りホームにある人気の立ち食いそば店「小山駅きそば」が、来年1月14日で閉店する。会員制交流サイト(SNS)には閉店を惜しむ声があふれ、同店には「最後の一杯」を求める客が続々と押し寄せている。

 閉店はJR東日本のグループ再編に伴う委託契約の終了のため。今月初めに正式に決まり、閉店1カ月前の14日に委託運営会社の中沢製麺(栃木市平柳町)の中澤健太(なかざわけんた)社長がツイッターで公表すると、瞬く間に広まった。

 「ある程度反響はあるだろうと思っていたが、想像を超えている」と、中澤社長は驚きの表情だ。1日の平均売り上げは閉店公表前の2倍以上、公表直後の週末には1日600杯以上売れたという。

 小山駅きそばは、1950年代前半には今の場所にあった。かつて同駅構内には宇都宮線、両毛線、水戸線のホームに3店舗あった。中沢製麺は1991年から3店舗を運営しており、宇都宮線店は最後に残った同社の直営そば店だった。

 人気に火がついたのは、2007年公開の新海誠(しんかいまこと)監督の短編アニメ「秒速5センチメートル」で、両毛線店がモデルとして登場したころから。「聖地巡礼」で店を訪れるアニメファンが増えた。10年に3代目を引き継いだ中澤社長はネットでの情報発信に力を入れ、旅行雑誌に取り上げられることも増えた。

 昭和を感じさせるレトロなたたずまい、安くておいしい立ち食いそばは、アニメや鉄道ファンだけでない幅広い層のファンを獲得した。

 中澤社長は「いろいろな相乗効果があいまって、あの店が成立したのだと思う。閉店までの時間は短いが、できるだけ多くの方に食べていただきたい」と話していた。

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