知的障害受刑者の再犯防止 出所後見据え、モデル事業 長崎刑務所で50人規模 来年度から5カ年計画

 法務省は24日、長崎刑務所(長崎県諫早市)に九州・沖縄内の刑務所から知的障害(疑い含む)のある受刑者を50人規模で集め、出所後の福祉的な支援も見据えた一貫型の処遇をするモデル事業を2022年度に始める方針を明らかにした。
 知的障害のある受刑者を巡っては、罪を繰り返す「累犯障害者」の問題が指摘されており、モデル事業は再犯を防ぐ狙い。同刑務所は「軌道に乗せ、一つの支援モデルとなる枠組みをつくるため、職員一丸となって取り組みたい」としている。
 同省矯正局によると、モデル事業は22年度から5カ年を計画。効果を検証し全国展開のあり方を検討していく考え。政府が同日、閣議決定した同年度予算案に関連予算約2千万円を盛り込んだ。
 専門的な知見やノウハウを持つ福祉事業者や自治体と連携し、特性に応じた処遇計画を立て、所内で生活安定に向けた教育・指導や社会復帰を支援。療育手帳の取得を促進し、出所時に「息の長い寄り添い型の福祉サービス」(同局)につなげる体制を構築する。
 22年4月以降に事業者の選定を進め、同年中の事業の本格実施を目指す。
 同局が20年度に実施した特別調査では、全国の受刑者約4万人のうち知的障害(疑い含む)のある受刑者は1345人。このうち療育手帳を取得しているのは414人だった。
 長崎刑務所は19年4月、高齢や知的障害のある受刑者の特性に応じた処遇を実践し、社会復帰を支援する部門を新設。認知症傾向の高齢受刑者を九州内の刑務所から集めて処遇する取り組みを既に始めており、22年度は35人規模を予定する。


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