北朝鮮の「脱北防止」最新兵器は空き瓶と空き缶

北朝鮮当局が、脱北と密輸を防ぐために国境線沿いで進めているコンクリート壁(実際はコンクリートの柱とフェンス)、高圧電線の敷設工事。作業は進められているものの、順調とは言い難い。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、当局が先月初旬までに、国境線の全区間のコンクリート柱の間にフェンスの設置工事を完了させたと伝えた。元々、今年末までにすべての作業を完了させる予定だったことを考えると、順調に進んでいるかのように見える。

残されたもう一つの課題は高圧電線だ。冬は、川が凍りつくため渡りやすくなり、脱北と密輸が増える。しかし、予想以上の寒さで地面が凍った上に、国家経済発展5カ年計画の初年に当たることから、大々的な総和(総括)が予定され、その準備に追われて作業にリソースを投入することが難しい。

とりあえず、工事は来年3月中旬に再開することにし、それまではフェンスに空き缶と空き瓶をぶら下げておくという原始的な方法で対処することで上部の承認を得たという。早速工事が始められ、住民から空き瓶と空き缶を集め、1メートルに2本ずつぶら下げる作業を行った。

このような手法は今年7月にも動員されているが、来年の春になっても解消する見込みは立っていない。高圧電線を設置するのが本来の計画だが、地方政府と朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が変圧器を調達したものの、24時間流すだけの電気をどこから持ってくるかが解決していないためだ。

慢性的な電力難の中、電気は首都・平壌と各地の軍需工場に最優先で送られ、他の地域で使う電気は全く足りていないのだ。慈江道(チャガンド)では人民委員会(道庁)、国境警備隊、軍の工兵局が協議を行い、毎日場所を変えて電線に電流を流すことに決めた。その区間と場所は秘密にされているが、情報が漏れ伝わるのは時間の問題だろう。

当局は、コンクリートの柱、フェンス、高圧電線に合わせて、国境線の手前に、深さ180センチ、幅80センチの堀を巡らす作業を、地域の機関、工場、企業所などに割り当てて行わせることにした。現在は、地面が完全に凍る前に少しでもほっておこうと、焚き火で地面を解かしつつ急ピッチで作業が行われている。

さて、壁とフェンスの工事に当たっている軍の工兵局だが、情報筋によると、越冬準備が全くできていない。金持ちの家庭の出の兵士に休暇を与え、石炭、薪、食べ物を持ち帰るように指示を与えているが、これ以外に方法がない有様だという。

彼らの悲惨な生活の状況は、別の情報筋により、動画で撮影されている。

© デイリーNKジャパン