「第30回FNSドキュメンタリー大賞」が決定! 大賞はTSK制作「命の選択~ALSとの闘い~」

フジテレビ系列局の番組制作能力向上と、その蓄積を図る趣旨から1992年に創設された「FNSドキュメンタリー大賞」。節目となる第30回を迎える今回は、今年放送されたノミネート作品の中から、TSKさんいん中央テレビが制作した「命の選択~ALSとの闘い~」が大賞に決定した。TSKが大賞を受賞するのは初めてだ。

同作は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という全身の筋力が急速に衰える難病患者を取材したもの。ALSは喉の筋肉が弱くなり自発呼吸ができなくなった時、人工呼吸器を装着するかどうか自ら決めなければならない。「装着しない」=「死」を意味する。逆に装着すれば延命できるが、手足は動かず声も発せない。番組では、鳥取・島根両県で3人のALS患者を中心に取材を進め、厳しい選択を目の前にした当事者の迷いや希望、葛藤を追う。丹念な取材と、その真摯(しんし)さが高く評価され、今回の受賞に至った。

制作を担当したTSK報道部の藤谷祐介ディレクターは、今回の受賞について「COVID-19への感染は死に直結しかねない状況にもかかわらず、取材に応じてくださった患者の皆さま、ご家族の多大なご協力に感謝でいっぱいです」と謝辞を表す。そして「重度ALS患者は『動けない、話せない』ために、テレビ報道の対象として避けられてきたように感じます。それでも患者には『健常者と同じように意思がある』。そのことを伝えようと考えました。また、日常でさえ社会からの疎外感を募らせているところへ、コロナ禍による面会謝絶などが加わり、孤独感が増していく心情を追いました」と語り、最後は「COVID-19はワクチンや治療薬が次々に開発されています。こうした番組が難病治療薬の開発や、生活支援の一助になれば幸いです」と締めくくった。

そのほか、優秀賞はmit岩手めんこいテレビ制作「奇跡と呼ばれなくなる日まで~震災10年 釜石の軌跡~」が受賞。特別賞には、OHK岡山放送制作の「忘れてはいけないこと~認知症受刑者が問いかけるもの~」と、沖縄テレビ制作「てぃんさぐぬ花 ママたちの沖縄」が選ばれた。

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