大阪・松井市長が“コネクティングルーム不倫”の和泉洋人元補佐官を府・市の特別顧問に! 維新と行政私物化官僚をつなぐカジノ利権

左・松井市長(大阪府HPより)/右・和泉氏(首相官邸HPより)

昨日24日、この年の瀬に大阪府と大阪市がとんでもない発表をおこなった。なんと、安倍・菅政権で首相補佐官を務めてきた和泉洋人氏を、来年1月1日付で大阪府・市の特別顧問に就任させるというからだ。

いわずもがな、和泉元首相補佐官といえば「菅義偉の懐刀」と呼ばれた人物であり、昨年には厚労省の大坪寛子・大臣官房審議官と公費を使った不倫出張疑惑が浮上、“コネクティングルーム不倫”として大きな批判を浴びた。和泉氏はその後、岸田政権発足後の今年10月に首相補佐官を退任したが、まさかそのような人物を、府・市の特別顧問に据えようとは……。

実際、今回の人事は、菅前首相と近い松井一郎・大阪市長の意向が強く働いているのは明白だ。松井市長は和泉元首相補佐官を特別顧問に据えることについて、「これまでも、うめきた2期や夢洲の開発で国との調整に力を貸してもらってきた。幅広い人脈を持っており、これまでの経験を土台にアドバイスをいただきたい」と説明。さらに、松井市長は昨日夜にこの人事を伝えた朝日新聞デジタルの記事に対し、〈朝日新聞さんへ、和泉さんは無報酬ボランティアで協力して頂ける事はスルーですか?今日の会見で説明しましたよね〉〈因みに、大阪府大阪市とすれば、働いて頂く限りは他の特別顧問同様の身分補償を提示しましたが、和泉さんから無報酬で手伝うと言って頂きました〉と噛み付いていた。

「無報酬ボランティアとして協力してもらう」って、報酬以上の旨みがあるからとしか考えられず、一体何が差し出されるのかそっちのほうが怖いのだが、ともかく松井市長は無報酬のボランティアであることをことさら強調し、人事を正当化しようとしているのだ。

だが、この人事は黙って見過ごせるような問題ではない。というのも、和泉氏の問題は公費を使った“コネクティングルーム不倫”疑惑にかぎったものではなく、むしろ問題の本質は、安倍政権の数々の不正問題に和泉氏が深くかかわり、露骨な圧力や恫喝を繰り返して行政を歪めてきた倫理もクソもない人物だという点だ。

そもそも和泉氏は国土交通省出身で、政府が名護市辺野古で進めている埋め立て工事での関係省庁の統括や、新国立競技場の管轄を文科省から取り上げ“やり直しコンペ”を仕切ってきた。もともとは民主党・野田政権時代に内閣官房参与として官邸入り、そのまま安倍首相が留任させるという異例の人事がおこなわれたが、その背景には和泉氏と付き合いが長かった菅義偉官房長官の後押しがあった。

そして、安倍官邸内で菅官房長官の右腕として暗躍する一方、和泉氏は先にも触れた大坪氏との不倫関係においても、人事や国策にまで影響を及ぼしていた。

●不倫コンビでノーベル賞・山中伸弥所長を恫喝して予算カット、“愛人”の担当プロジェクトに予算を

実際、最初に「不倫疑惑」が持ち上がった京都への不倫デートを楽しんだ出張では、和泉氏と大坪氏の2人が京都大学iPS細胞研究所に赴き、ノーベル賞受賞者の山中伸弥所長に対して、翌年から山中所長の取り組むプロジェクトに「国費は出さない」と言い放ち、大坪氏が「iPS細胞への補助金なんて、私の一存でどうにでもなる」と恫喝していたことがわかっている。この予算カットは、文科省が反対していたものを和泉氏が後ろ盾となるかたちで大坪氏が強硬に主張したものだ。

オープンな場で決めるべき予算の問題を密室で恫喝する。これだけでも2人とも辞職モノだったのだが、問題はもっと根深い。こうした予算配分自体が行政内部で何の手続きも踏んでいない大坪氏の独断専行であったことが内部の公式の会議で明らかになり、当時、本サイトがいち早く取り上げたように、和泉氏が室長、大坪氏が次長を兼任した内閣官房の「健康・医療戦略室」を舞台に、和泉氏の後ろ盾によって大坪氏が緊急的な感染症対策に使われるような予算約80億円を無理やり自分の担当するプロジェクトにつけていたことが、AMED(独立行政法人日本医療研究開発機構)理事長による告発で明らかになっている(詳しくは過去記事参照→https://lite-ra.com/2020/02/post-5254.html)。

しかも、AMEDの方針にことごとく介入する大坪氏の高圧的なやり方に対してAMED側が反発すると、和泉氏が直々に乗り出し、2019年7月にはAMEDの幹部職員3人に対し、こんなセリフを吐いていたことも暴露されている。

「大坪次長もさ、激しくてみなさんとうまくいっていないかもしれないけど、彼は健康・医療戦略……彼女か、健康・医療戦略室次長に残すし、AMED担当室長は彼女になるから。そういうつもりでちゃんと付き合ってもらわないと困るよ」
「ちゃんとできていないようだったら、もともとの出身省庁からこのポストを置くのはまずいってことになる」
「財務省は全面的に、皆さん方の頭を飛び越えて、本省の各原課も飛び越えて、各々会計課と直接やるから。あなた方がどういうつもりか知らないけど、そんな生易しい話じゃないからさ」(「週刊文春」2020年2月27日号/文藝春秋)

山中教授への恫喝、コネクティングルーム出張、さらには愛人が思い通りに動かせる組織にすべく人事や予算をちらつかせて圧力をかける──。まさに私利私欲によって行政を歪める「政治の私物化」にほかならないが、和泉氏の「恫喝」問題はほかにもある。それは、和泉氏に大きな注目が集まるきっかけとなった、加計学園問題だ。

ご存知のとおり、前川喜平・元文科事務次官が、獣医学部新設をめぐって和泉首相補佐官から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と“恫喝”され、このほかにも獣医学部新設を早く認めるように複数回言われたことを証言したからだ。

●安倍の意向を受けて加計学園の獣医学部新設でも暗躍、前川喜平氏の口封じまで

しかも、和泉首相補佐官は前川氏に圧力をかけただけではなかった。NHKがスクープした「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書では、〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた〉という決定的な文言のほか、こうも記されていたからだ。

〈内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、(中略)畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。〉
〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。〉

なんと和泉首相補佐官は農水省にまで直接手を回し、萩生田光一官房副長官(当時)まで動かしていたのだ。このあと、萩生田官房副長官は獣医学部新設の条件に「広域的に」「限り」という文言を追加するよう指示。これにより獣医学部新設に名乗りを上げていた京都産業大学が事実上、振り落とされてしまった。

ようするに、和泉首相補佐官はまさに安倍首相の代わりとなって加計学園の獣医学部新設を実現させた、最大のキーマンともいえる人物なのだ。

実際、2017年6月に日本記者クラブ主催の記者会見に出席した前川氏は、「全体のシナリオを描いていた」人物として、和泉首相補佐官の名を挙げた。

「私の目から見ますと、和泉総理補佐官がいちばんのキーパーソンではないかと」
「10月21日付けの萩生田副長官のご発言の内容を見ても、萩生田さんは和泉さんと話をした結果として、それを文科省に伝えている。やはり情報発信源になっているのは和泉さんではないか。和泉補佐官がいちばん全体のシナリオを描いて、全体の統括もしている、そういう立場にいらっしゃったのではないかと思っています」

だが、和泉首相補佐官は加計学園の獣医学部新設を実現させるべく「全体の統括」をしただけではなかった。あの“読売新聞を使った前川氏の告発潰し”でも、和泉首相補佐官は暗躍していたのである。

2017年5月、「総理のご意向」文書が飛び出た際に前川氏の実名告発の動きがあるなかで、読売新聞は同月22日付で「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」と報道。本サイトでも繰り返し伝えてきたが、これは官邸が、前川氏の告発を潰す目的で読売にリークして書かせたものだ。そして、読売に記事が出る前日、前川氏に揺さぶりをかけたのは和泉首相補佐官だった。前川氏はこう証言している。

「21日に和泉補佐官からのアプローチもあった。文科省の藤原誠初等中等教育局長からのショートメールだった。(自分の携帯から着信記録を示して)これです。『和泉さんから話を聞きたいと言われたら、対応される意向はありますか?』。それに対しては、『ちょっと考えさせて』と返信した」
「和泉さんが私の口を封じたかったのではないか、と思っている。ちょうど私が加計関係の文科省内部文書について、メディアの取材を受け始めた時だ。前川がしゃべっているとの情報が伝わったのではないか」(「サンデー毎日」2017年12月10日号/毎日新聞出版)

●和泉は首相補佐官時代、PCR検査、ワクチンも任され、立ち遅れの最大の原因に

実名告発を潰すために“脅し”をかける。これが首相補佐官の仕事なのかと衝撃を覚えずにいられないが、じつは加計学園問題以外でも、和泉氏は安倍首相の意向をかたちにするため恫喝と圧力をかけていたことがわかっている。

それは、2016年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」をめぐってのこと。「明治日本の産業革命遺産」は幼少時から安倍首相と家族ぐるみの付き合いで、加藤勝信前官房長官の義理の姉でもある加藤康子氏が中心になって推し進めていたプロジェクト。「週刊新潮」2015年5月21日増大号に掲載された康子氏のインタビューによると、自民党が野党に転落していたころ、安倍氏は康子氏に「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」と声をかけ、さらに、総裁の地位に返り咲いた3日後、「産業遺産やるから」と、電話をかけてきたという。

そして、安倍首相が血道を上げたこの「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録でも、安倍首相の名代として現場に介入したのが、和泉首相補佐官だった。じつは、「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産の国内候補にするため、和泉首相補佐官が候補を決める文化審議会の委員から反対派の委員を排除するよう圧力をかけていたのだ。文化庁を外局とする文科省の事務方トップの事務次官を務めた前川氏は、こう証言している。

「和泉氏は文化庁の幹部に対し、文化審議会の委員から日本イコモス委員長(西村幸夫氏)を外せ、と言ってきた。日本イコモスは産業遺産の推進に消極的だった経緯があり、とにかくけしからんから外せ、と。結局、西村氏は委員から外れました」(「週刊朝日」朝日新聞出版/2017年6月23日号)

つまり、安倍首相がこれまでのルールや行政手続きをひっくり返し、お友だちに利権を優遇したいとき、安倍首相の代わりに現場に圧力をかけ、ゴリ押しをするのが和泉首相補佐官に役目だった、というわけなのだ。

このような恫喝と圧力によって行政を歪めてきた人物を、松井市長と吉村府知事は特別顧問に据えようと言うのだから開いた口が塞がらないが、さらに問題なのは、和泉氏は安倍・菅政権におけるコロナ失策の責任者でもある、ということだ。

例の“コネクティングルーム不倫”問題が噴出していた昨年2月、政府は大坪氏を「ダイヤモンド・プリンセス号」に派遣。大坪氏が感染対策で飲食が禁止になっている作業エリアにスイーツやコーヒーを持ち込んだり、マスクをしていない姿をしょっちゅう目撃され、注意を受けていると報じられ、大坪氏はもちろん和泉氏もさらなる批判を浴びることになった。だが、安倍首相の最側近だった今井尚哉氏ら経産官僚が仕掛けた「アベノマスク」や星野源に乗っかったコラボ動画に非難が集中したことで、官邸内では菅官房長官が復権。和泉氏は「PCR検査の拡充やワクチン開発、特効薬の承認の推進を一手に引き受け、コロナ対策の要となっている」と言われていた。つまり、PCR検査の拡充が一向に進まなかった元凶のひとりが和泉氏なのだ。

さらに、コロナ失策への批判に耐えきれなくなった安倍首相が辞任し、菅政権が誕生すると、よりにもよって菅首相はワクチン対応のために、和泉氏と大坪氏という“コネクティングルーム不倫”のコンビを中心にしたタスクフォースを組んだ。その結果、日本はワクチン確保に出遅れてしまったのである。

●コロナで多数の死者を出してなお、維新が“コロナ立ち遅れの元凶”和泉補佐官を抜擢する理由

言うまでもないが、大阪は、橋下徹時代からつづく維新府政による公的医療の削減・合理化の煽りを受けてコロナで医療崩壊を起こし、東京以上の死者を出すなどコロナ対策で失敗してきた代表格だ。そのうえ、特別顧問として国のコロナ失策の責任者を迎え入れようとは、もはやブラックジョークのような展開ではないか。

だが、もっと恐ろしいのは、今回、松井市長らが和泉氏を特別顧問に迎え入れようとしている目的が、大阪カジノ実現のための布石にあるということだ。

実際、松井市長は昨日、記者団に「(和泉氏には)夢洲の街づくりに能力を発揮してほしい」と語ったというが、2025年大阪・関西万博の会場でありカジノ建設予定地となっている夢洲をめぐっては、土壌汚染対策費用の約800億円を大阪市が負担すると公表されたほか、公金支出が膨らみつづけている。

そこに、国土交通省出身で横浜カジノ参入でも菅前首相の右腕として暗躍してきた和泉氏が入り込んだら、これまで以上にカジノ事業者や建設業者の要求ばかりが呑まれ、公金をさらにじゃぶじゃぶと使いまくることになるのは目に見えている。

だが、こんな露骨な人事を平気でやってしまえるのが、まさしく松井市長・吉村知事であり、このふざけた暴政こそが「維新クオリティ」なのだ。この連中は、どこまで大阪の政治を壊せば、気が済むのだろうか。
(編集部)

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