板金の可能性追求 諫早の日本ベネックス デザイナー清水久和氏と家具でコラボ

清水氏がデザインし、板金によるユニークな形のスツール&サイドテーブル(日本ベネックス提供)

 新たな板金の可能性を追求しようと、長崎県諫早市の産業機器製造業「日本ベネックス」(小林洋平社長)は、1957年の創業以来、培ってきた精密板金加工技術をベースに、同市出身のプロダクトデザイナー、清水久和氏と初めて協働した家具シリーズ「SUITE FURNITURE(スイートファニチャー)」を製作、販売を始めた。板金で緩やかな曲線を実現した鉄のスツール(椅子)とサイドテーブルが、日常生活に彩りを添える。
 日本ベネックスはこれまで産業用機器や太陽光発電所など社会インフラを支える製品を送り出してきたが、今回、社員たちがアイデアを出し合い、新しい価値を生み出すプロジェクト「EETAL(イータル)」をスタートさせた。
 清水氏は1964年、諫早市出身。長崎日大高、東京の桑沢デザイン研究所を経て、キヤノンに入社。デジタルカメラ「IXY」のチーフデザイナーとして活躍し、2012年、デザイン会社「S&O DESIGN」を設立。さまざまな企業の家電や家具などのデザインを手掛けている。
 スツール(幅37.5センチ、奥行き31センチ、高さ36センチ)は、厚さ2ミリの鉄板2枚を使い、緩やかな曲線の座面と3本の脚を造形。ブラック、クリームホワイト、緑、レモンイエローの4色。2万9800円。
 サイドテーブル(幅37センチ、奥行き43.8センチ、高さ60センチ)は、天板と土台を楕円(だえん)形の支柱でつないだデザイン。鉄を少しずつ曲げ、楕円形の支柱を実現した。グレー、クリームホワイトの2色。4万9800円。
 清水氏は「鉄は冷たくて堅くて、重いため、家庭の中に入るのは難しい。軟らかくて軽く、人に優しい製品にしようと意識した。古里の企業と初めて仕事ができたのも楽しかった」と話す。東京で今月27日まで開いている個展で披露し、来場者に好評。日本ベネックスの通販サイトでも販売している。

ものづくりの楽しさを体感できる長崎電気軌道360形メタルクラフトモデル=諫早市津久葉町、日本ベネックス

 時代に合ったものづくりへの挑戦は、別のプロジェクトでも貫かれている。長崎市で運行する長崎電気軌道の路面電車「360形」のメタルクラフトモデルの製造、販売も始めた。
 360形は製造された昭和36(1961)年にちなんで命名され、クリーム色と緑色の金属製の車体が特徴。メタルクラフトモデルは、厚さ0.5ミリのステンレスの板から部品を抜き取り、治具で曲げたり接合したりして、実物の80分の1の車体に作り上げる。
 同社は「金属ならではの重みや素材を感じながら、作る楽しみを体感してほしい」とPR。5500円。15歳以上が対象。長崎電気軌道の蛍茶屋、浦上車庫両営業所で販売している。
 メタルクラフトモデルは、諫早市のふるさと納税返礼品に採用されている。


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