MLBで日本人初のフルタイムコーチに 植松泰良氏がブルペン捕手から築き上げた信頼

来季からジャイアンツのコーチ補佐に就任する植松泰良氏【写真:Getty Images】

植松泰良氏は米国の大学で野球に携わり、道を開いた

2021年シーズンで年間107勝を挙げてナ・リーグ西地区を制したジャイアンツで、ブルペン捕手を務めてきた植松泰良氏が来季、アシスタントコーチに就任する。トレーナーを目指して日本の高校卒業後に渡米し、ジャイアンツ傘下マイナーのインターンからスタート。2008年から14年間ジャイアンツでブルペン捕手を務めてきた植松氏の歩みを、米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」が伝えている。

ジャイアンツのゲーブ・キャプラー監督は2021年11月、植松氏をサポートスタッフからアシスタントコーチに昇格させた。フルタイムでユニホームを着用してメジャーでコーチを務めるのは植松氏が日本人では初めてのケースになる。

植松氏は「自分が日本人初のコーチだとは知りませんでした。素晴らしいことだと思いますが、だからといって何も変わりません。私はただこの球団の一員になりたかっただけです。夢が叶いました」と語っている。

千葉県出身で38歳の植松氏は西武台千葉高で野球部に入部したが、公式戦出場はかなわず。卒業後に渡米して英語を学び、南イリノイ大に入学した。トレーナーの資格取得の実習をこなしている間に、同大野球部の活動に携わり、遠征にも帯同するようになった。

キャプラー監督「彼はひたむきに仕事をしてきた」

そして、当時の監督の縁でジャイアンツ傘下3Aフレズノにブルペン捕手のインターンとして2006年に入団。2007年にサンフランシスコで行われたオールスターにブルペン捕手として駆り出され、イチロー氏とも対面した。「信じられない思いでした」と振り返っている。

そして2008年、藪恵壹投手がジャイアンツと契約した際、植松氏は当時の監督であるブルース・ボウチー氏に通訳ができることを直訴。ジャイアンツに昇格を遂げた。

ボウチー氏は「これまで関わってきたスタッフの中で、彼ほど勤勉な人物はいなかった。彼ほど精力的に働く人を見たことがない」と語っている。トレーナーのデイブ・グローシュナー氏も「タイラは(選手たちの)ストレッチを担当していた。治療も行っていた。しかも投手たちに大人気で、みんなが彼に投げたがっていた。彼はチームの一員としてなんでも喜んで引き受けた。その姿勢は、今でも変わっていません」と敬意を表している。

植松氏をコーチに引き上げたキャプラー監督も「タイラは他のスタッフをサポートするためにひたむきに仕事をしてきた。彼の仕事の向き合い方は本当に素晴らしく、彼をスタッフにしないことは考えられませんでした」と絶賛する。勤勉な姿勢でチームの誰からも絶大な信頼を得ている植松氏。コーチとしてどんな手腕を発揮してくれるか、楽しみだ。(Full-Count編集部)

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