<レスリング>【2021年全日本選手権・特集】世界チャンピオンの強さを見せたが、反省の弁も…女子53kg級・藤波朱理(三重・いなべ総合学園高)

 

(文=東京スポーツ新聞社・中村亜希子 / 撮影=矢吹建夫)

 2021年全日本選手権の女子53kg級決勝は、18歳の藤波朱理(三重・いなべ総合学園高)入江ななみ(ミキハウス)を8―2で下し、大会2連覇を達成した。

 10月の世界選手権(ノルウェー)で初優勝し、多くの人の注目を集めた凱旋試合。そのせいか、自分が思うような展開とはいかなかった模様。試合後には「失点もあったし、タックルに入って取り切れず、攻め急いでしまったところもあった」と反省の弁を口にした。

18歳にして2度目の日本一に輝いた藤波朱理(三重・いなべ総合学園高)

 今後の課題として、テークダウンを奪ってからのグラウンド精度の向上を掲げた。「グラウンドは課題としてやってきたけど、まだまだ返し切れず、練習が足りない。バックを取ってからのツー(2点)で勝率が変わってくる」と、連続攻撃でたたみかける技術強化を誓った。

 指導している父の藤波俊一・日体大コーチは、大会前の調整についても、改善の必要を説いた。今大会、疲労から直前に腰を痛め、2日間まったく体を動かさずに休養に努めていたという。俊一氏が「練習を止めるのが役目」と語るほど練習熱心な藤波。「どうしてもオーバーワークになりがち。そこも気をつけさせていきたい」(俊一コーチ)と話した。

 2024年パリ・オリンピック期待の星として注目の18歳は、世界選手権では全試合テクニカルフォール勝ちの圧倒的な強さを見せ、全世界にインパクトを与えた。マットの上だけではない。試合後のインタビューでは、海外メディアからの英語の質問に英語で堂々と答え、海外記者を喜ばせた。これまで、海外で記者会見に登場した多くの日本人チャンピオンがなかなかできなかった行動だ。

通算86連勝! しかし「過去のこと」とサラリ

 「目立つことが大好きなので、どうやったら目立つか考えました。英語で話そうと思って、大会前から練習しました」と目を輝かせる。英語は小学1年生から学び始めていて得意。今後も、海外で試合に出る度に、国を問わずさまざまなメディアに取り上げられることになるだろう。来春に進学予定の日体大でも、レスリングに加え英語の勉強にも励むつもり。「もっともっとベラベラになれるよう頑張りたいです」と力を込めた。

失点はあったが、決勝も順当に勝ち抜いた

 華やかさの裏で、地道な努力も欠かさない。体調管理は徹底しており、雑穀米や野菜中心の食生活を心掛ける。外食は一切しない。試合後、久々のご褒美を問われると、「から揚げが食べたいです」と女子高生らしく笑いながら話した。

 今大会の優勝で連勝記録を「86」に伸ばしたが、「記録は過去のことなので」と前だけを見る。来年9月のアジア大会(中国・杭州)にも意欲。「53kg級はアジアで強い選手がいるので、楽しみ。これから、見ている人が面白いと思うレスリングをしたいし、もっともっとレスリングを有名にしたい思いもある。世界の人に、もっともっと自分を知ってもらいたい」。

 夢を語る背中からは、次世代を担うスターのオーラが漂っている。

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