長崎この1年2021<5完> 衆院選 自民苦戦、立民勝ち切れず

支持を呼び掛ける安倍氏(右)と初村氏=10月22日午後6時31分、長崎市の鉄橋

 23日夕、長崎市中心部の自民党県連の事務所に初村滝一郎氏(42)の姿があった。10月の衆院選長崎1区に同党新人として立候補。2期目を目指した国民民主党の西岡秀子氏(57)に3万票以上の差で敗れた。
 この日、初村氏は次の衆院選に挑むのかどうか、1区内の県議らと意見交換した。だが出席者によると、初村氏は「いずれ決断したい」と述べるにとどめたという。
 安倍晋三元首相の政策秘書を務めた経歴から、「西岡党」と呼ばれる強固な後援会組織を持つ西岡氏との対決は、全国でも有数の注目選挙区だった。自民は著名な国会議員を次々と投入。安倍氏も初村氏と街頭に立ったが、両党の関係者は「ここが分岐点だった」と口をそろえる。国民側は「有権者が選挙カーによく手を振ってくれるようになり明らかに反応が変わった」と言い、自民側からは「(森友、加計学園などの問題がくすぶる)安倍氏を前面に出したのは失敗だった」との声が漏れる。
 自民は4区、3区でも現職が大苦戦。4区は閣僚時の失言などから公認争いでもめた北村誠吾氏(74)が、その余波を引きずりながら選挙戦に突入。国会議員、首長、県議らがフル回転し、391票差の「薄氷の勝利」で8選を果たした。3区は谷川弥一氏(80)が7選を飾ったものの、高齢批判を浴び猛烈な追い上げに遭った。北村、谷川両氏は「今回が最後」と明言。後任が誰になるのか注目される。
 一方、立憲民主党の新人2人が善戦し、4区の末次精一氏(59)と3区の山田勝彦氏(42)はいずれも比例復活で初当選。共産党を含め野党共闘が一定機能した形となった。だが支援労組からは「勝ち切れなかったことは反省しなければならない」と厳しい指摘が飛ぶ。
 次の衆院選では県内4選挙区が3選挙区に減る可能性がある。国の審議会は2020年の国勢調査に基づき、衆院小選挙区定数の「10増10減」を反映した新たな区割り案策定に向け作業を進めている。本県の1減も含まれており、県内の政界関係者らは▽長崎▽佐世保▽諫早・大村-をそれぞれ中心とする3選挙区に分かれると見ている。だが現在、諫早は2区、大村は3区で、両選挙区に現職を抱える自民では今後、公認争いが起きる可能性もある。      =おわり=

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