【寄稿】「カネミ油症と原爆」 重なり合う二つの被害

山口響

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 この12月、長崎市を会場に「公害資料館連携フォーラム」という集まりがもたれた。今年が8回目で、これまでは新潟・富山・四日市・水俣などで開催されてきた。
 勘のいい読者ならこれらが四大公害病の発生地であることにすぐ気づいたであろう。ではなぜ今回は長崎で?という疑問を持たれたかもしれない。実は、フォーラムの長崎開催を決めるにあたり、二つの問題が念頭にあった。カネミ油症と長崎原爆である。
 発覚からすでに半世紀以上が経つカネミ油症については、原爆に比べると圧倒的に知られていない。しかし、何気なく食用油を口にしたというだけで、そこに混入していたPCBやダイオキシン類を摂取してしまい、ほぼ生涯にわたって心身の不調に悩まなければいけないという点では、放射線被ばくによる不安と闘わねばならない原爆被害と何ら変わるところはない。カネミ油症も原爆も、健康被害が全身症状である点も共通する。
 また、援護の対象となる被害者と対象にならなかった者との間の線引きの問題や、次世代被害が発生するにも関わらずそのことが被害者一世の問題以上に認識されていない点でも、両者は似ている。もちろん、カネミ油症の方は被爆者に比べると援護が相当不足していることなど、細かい点では違いがある。
 私は、今回のフォーラムに参加して、カネミ油症の被害者が自らの置かれた状況を語るのを初めて聞くことができた。被爆者の声ばかり聞いてきた私にとって、油症被害者の肉声での語りには圧倒的に胸に迫ってくるものがあり、油症の社会的認知が進まないまま時が過ぎ去っている理不尽を思わざるをえなかった。
 油症の被害は西日本一帯に広がっており、本県だけの問題ではない。しかし、カネミライスオイルが広く販売された五島が一大被害地となっていることもまた事実である。フォーラムでは、小さい自治体ながら、五島市が油症患者支援や次世代への問題継承の取り組みなどを熱心に進めていることを知った。他の自治体が学ぶべき点も多い。長崎原爆資料館の協力を得て、長崎の原爆被害について全国の公害関係者に知ってもらう機会が持てたことも貴重だった。
 公害や原爆のような「教科書に載っていること」であっても、その問題構造には未解明な部分が依然として多い。両者の「重なり」の中から、互いに学べることもあるはずだ。その解明に資するという意味でも、本欄で繰り返してきたことではあるが、長崎県が保有する公害関連公文書の保存の必要性を最後に強調しておきたい。

 【略歴】やまぐち・ひびき 1976年長与町出身。「長崎の証言の会」で被爆証言誌の編集長。「長崎原爆の戦後史をのこす会」事務局も務める。長崎大学等非常勤講師。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。