【おんなの目】 アンパンかじって

 冬とも思われぬほどの暖かい日、国道〇号線沿いを歩いていたら、小さな赤い屋根のパン屋さんから良い匂いがしてきた。思わず入ったら、クリームパンや丸ごと一個の栗の入ったパン、ソーセージに牛蒡まではさんだサンドウィッチ等がいっぱい良い匂いを放ちながら並んでいる。もうたまらない。

 ハイカラなパンたちの間に見慣れたアンパンがある。隣の緑のレタスをひらひらさせ、ぷりぷりのソーセージを挟んだホットドッグの横で静かに恥ずかしそうにいる。おへそに黒ゴマと芥子の実のせて。ただそれだけがアンパンの身を飾る。私は粒餡よりもこし餡の方がほんの少し好き。

 こしあんのアンパンを一つ買った。焼き立てなので温かい。今、食べたい! 歩道の落ち葉をガサガサカサカサ踏みながら、歩きながら食べる。走る車の中から見られてもへっちゃら。太陽に向かって大きな口を開けてほおぼる。仰向いて、太陽まで食べてる気分。柔らかくって温かくって甘くて、幸せ。足取りも軽やかになってくる。アンパン一個ですごく幸せ。なんか来年は良い年になりそうだ。

 皆様、コロナも風邪も振り払って、元気に新しい年をお迎え下さいませ。堂々たる寅の背に乗って、ほらそこ、幸運がやってきていますよ。

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