クラブのママ半世紀、81歳中山さん引退へ 昭和、平成、令和と宇都宮の夜彩る

常連客からのねぎらいの花束を手に笑顔を見せる中山さん

 【宇都宮】年の瀬が押し迫る中、本町で1軒のクラブが29日閉店し、ベテランママが引退する。「クラブハウス ソロ」を経営する中山美智子(なかやまみちこ)さん(81)=市内在住。コロナ禍の影響や年齢のこともあり「潮時かな」と決断した。「私より年上でクラブを経営するママさんは宇都宮にはいないのでは」。27歳でクラブのママになり55年目。昭和、平成、令和と県都の夜を彩ってきた宇都宮“最高齢”ママが看板の灯を落とす。

 1967年、クラブ「夜間飛行」(江野町)のママになった。当時、同所は宇都宮の繁華街の中心。必死で頑張り、有名店に成長させた。結婚を機に店を譲ったが、73年、かつての女性従業員が働いていた店を訪れた際にその店を気に入り、すぐ権利を買った。それが今の店だ。

 客は、企業の幹部や政・官・学・医と各界の重鎮も多かった。店ではさまざまな出来事があったが「一切外には出さない」。安心して飲める雰囲気と客層の良さが新たな客を呼んだ。

 バブル崩壊、リーマンショック…。何度も時代の波にもまれたが「新型コロナウイルス禍が最大の打撃」と振り返る。「それでも今までやってこられたのは、お客さまと従業員に恵まれたことに尽きる」。感謝の言葉を繰り返し、こう続けた。「お客さまと会えなくなるのが寂しい。店の女の子たちの今後も心配。でも自分としてはやり切った。いい夢を見させていただいた」

 店を始めて49年目。常連客から、ねぎらいと惜しむ声が続々と届く。50年前に働いていた元女性従業員から届いた花束のメッセージは「すてきな夢をありがとうございました」。自身も大勢に夢を与えていた。

 最終日の29日は、特別なことはせず「最後まで今まで通り」。宇都宮の夜を知り尽くしたママが、静かに幕を下ろす。

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