<金口木舌>万国津梁を支える宝

 新宿区立漱石山房記念館には夏目漱石の書斎や留学先のロンドンから妻に宛てた手紙が展示されている。名著を数多く世に出した漱石だが、自身は留学中に孤独やストレスから神経症を患った

▼ホームシックは住み慣れた家や地域を離れて生活したことのある人なら大抵は経験したことがあるはずだ。孤独感は勉強や仕事に影響が出ることもある

▼異文化への適応は(1)蜜月期(2)ショック期(3)回復期(4)適応期―の4段階をたどるとされる。しかし、中には適応できないままふさぎ込む留学生もいる

▼沖縄工業高等専門学校の伊原博隆校長が23日、名護市に住む新城文さんに感謝状を手渡した。新城さんは10年にわたり、同校の留学生らの歓迎会を開いたり、体調を崩したりしたときは病院に連れて行ったりするなど支援してきた

▼来春卒業予定のモンゴルからの留学生は「寂しいときに支えてくれた文さんは沖縄のお母さん。卒業式に来てほしい」と話す。沖縄で学ぶ人材を支えてきた新城さんのような県民一人一人が「万国津梁」を目指す沖縄の宝だ。

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