わがまち回顧2021 東彼支局 石木ダム 対話の好機逃す

ダム本体上部に当たる斜面で掘削を進める重機=川棚町

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地で暮らす反対住民13世帯と県との間で、対話を模索する動きがあった。しかし工事の継続的な中断を求める住民側と、それを避けたい県側で折り合わずに決裂。県が9月に本体着工に踏み切り、望みは薄くなった。
 住民側に、県の姿勢は終始居丈高に映った。県は、本来2月に予定していた本体着工を約半年間見合わせるなど「一定配慮してきた」と主張するが、住民に知らせたわけではない。結果として住民は、県側の動きに神経をとがらせる生活を続けなくてはならなかった。付け替え県道の工事現場では、住民の座り込み場所に土砂が運び込まれ、常に緊張を強いられた。
 中村法道知事は今月21日、4選出馬を表明。家屋撤去を含む行政代執行については「最後の最後の手段。総合的に勘案して、慎重に判断する」と述べ、事実上結論は先送りにされた。
 果たして「最後の最後の手段」に至る時、県は「話し合いの努力を尽くした」と説明できるのか。少なくとも今年は、目先の事業進捗(しんちょく)を優先し、自ら好機を逸したと指摘せざるを得ない。
 主なニュースは▽東彼杵ひとこともの公社が地域再生大賞で地域の未来賞▽波佐見陶器まつり2年連続で中止▽石木ダム工事差し止め訴訟控訴審で住民敗訴


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