ロシアの新モジュールを輸送した補給船「プログレスM-UM」ISSを離脱

【▲国際宇宙ステーションの多目的実験モジュール「ナウカ」にドッキングしたロシアの新モジュール「プリチャル」と補給船「プログレスM-UM」(Credit: NASA)】

日本時間2021年12月23日8時3分、ロシアの無人補給船「プログレスM-UM」が国際宇宙ステーション(ISS)ロシア区画のモジュール「プリチャル(Prichal)」から切り離されました。同補給船はISS離脱から5時間半後に南太平洋上空で大気圏に突入し、そのミッションを終えています。

プログレスM-UMは2021年11月にISSのロシア区画へ加わったプリチャルを輸送するべく用意された特別仕様の補給船です。ベースとなった「プログレスM」補給船の補給物資を積み込むスペースがプリチャルを搭載するために撤去されており、重量増加に対応するための改修も施されていました。特別仕様のプログレス補給船が飛行したのは今回が初めてではなく、過去には小型研究モジュール2「ポイスク(Poisk)」やドッキング室「ピアース(Pirs)」の打ち上げとドッキングにも同様の補給船が用いられています。

プログレスM-UMは日本時間2021年11月24日に「ソユーズ2.1b」ロケットに搭載されてカザフスタンのバイコヌール宇宙基地を飛び立ち、11月27日にISSロシア区画の多目的実験モジュール「ナウカ(Nauka)」へのドッキングに成功していました。

【▲プリチャルから切り離されたプログレスM-UM補給船(Credit: Roscosmos/Anton Shkaplerov)】

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2021年、ISSでは能力拡大や延命対策を目的とした動きが相次ぎました。6月にはISSの一番左側に位置する「P6トラス」に「iROSA(ISS Roll-out Solar Array)」と呼ばれる新しい太陽電池アレイが2基増設されています。iROSAは経年劣化が目立つ既存の太陽電池アレイを補助するために合計6基が設置される予定です。また、ISSロシア区画では7月と11月に新たなモジュールとしてナウカとプリチャルが追加されました。

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【▲2021年11月に帰還前の「クルードラゴン」から撮影された国際宇宙ステーション。向かって右端のP6トラスには2基のiROSAが増設されている(Credit: NASA)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は米国内の民間宇宙企業とともに商用宇宙ステーションの開発を進めていますが、運用が始まる時期は2020年代後半になる見込みです。また、米国のアクシオム・スペース社はISSを足掛かりに「Axiom Station」と呼ばれる宇宙ステーションの建設を計画していますが、その最初のモジュールが打ち上げられるのは、現状でISSの運用が認められている最後の年にあたる2024年の後半が予定されています。地球低軌道における有人活動拠点の空白期間を生じさせないためにも、今しばらくはISSに頼る状況が続きそうです。

Image Credit: Roscosmos, NASA
Source: Roscosmos
文/松村武宏

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