大阪・堺市の4小学校で児童がアスベスト吸引の可能性 専門家が市の説明否定

大阪・堺市の小学校で新たに危険性の高い吹き付けアスベスト(石綿)が見つかった問題をめぐり、市が強調してきた安全が揺らいでいる。12月24日の有識者会議で、これまでの市説明とは違って児童らの曝露が疑われる“証拠”が次々報告されたのである。(井部正之)

吹き付けアスベストがある天井裏に大小様々なボールが転がるようす。堺市・日置荘小学校の体育館3階(堺市の懇話会資料より)

◆4校ともアスベスト飛散疑い濃厚

吹き付け材(耐火被覆)からアスベストが検出されたのは日置荘小学校、登美丘西小学校、八田荘小学校、福泉小学校の4校。いずれも体育館3階天井裏の吹き付け材にクリソタイル(白石綿)3.4~4.3%含有していた。

4校とも天井板が設置されていたが、日置荘小学校では点検口のふた(45cm角)が少なくとも2015年から欠損。天井裏とつながったままとなっていた。しかも学童保育のようなかたちで児童らが利用していた。また八田荘小学校では廊下の天井板3枚(90cm角)の一部(約30cm×270cm)が破損し、天井裏が見える状態だった。ただし、おもに倉庫としての利用だった。いずれも7月に補修した。

市は9月27日、公的なアスベスト調査の資格「建築物石綿含有建材調査者」講習修了者を持つ市職員2人による調査で、吹き付け材は4校とも「やや劣化」で「経年劣化以外の損傷、劣化は見られませんでした」と発表。さらに室内の大気測定でアスベスト以外も含む「総繊維数濃度」がいずれも空気1リットルあたり1本以下だったとして、「健康リスクは検出できないほど低い」などと説明。永藤英機市長も10月の会見で「多大なリスクが発生したとは考えておりません」と安全性を強調してきた。

ところが12月24日に市が開催した有識者による児童らの健康リスク検証のための懇話会(座長:近畿大学医学部の東賢一准教授)で、市側の説明を否定する専門家による見解が次々明かされたのである。

市が専門性の高い建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)に依頼した現地調査の「所見」によれば、吹き付けアスベストの劣化状態は日置荘小学校と福泉小学校は劣化・やや劣化・劣化なしの3段階のもっとも飛散リスクの高い「劣化」と評価された。

しかも学童保育で利用されていた日置荘小学校では、天井裏の吹き付け材に「損傷が多くみられ、細かな落面(吹き付け材の落下)」が存在していた。それだけでなく、ふたがなくなっていて開きっぱなしだった点検口から天井裏に「複数のボールの投げ入れがあった」のである。

市が公表した写真をみると、大小様々なボールが少なくとも6個確認できる。その周辺には吹き付け材の破片が散乱しているようすが収められている。しかも「点検口の開口部では空気が下に向かって流れていた」「学童保育の部屋にある埋め込み照明から天井裏に光が漏れている(すき間が存在)」ことも報告されている。

何も知らない児童らがボールを投げ込んで遊ぶたびに室内でアスベストが飛散し、曝露したであろうことはまず間違いあるまい。

同じく「劣化」と評価された福泉小学校では体育館3階が理科室や家庭科室、音楽室があり、高学年(理科室4~6年生、音楽室・家庭科室5~6年生)の児童が使用。天井板の欠損・破損はないが、「吹き付け材の全体に毛羽立ち」という劣化があり、「天井裏への落面」が見つかった。また廊下と教室の間にあるドアを開閉する際の「振動が原因とみられる吹き付け材の落面」も確認された。ここでも点検口を開ける「空気が室内に流れていた」というから、やはり児童らの曝露が強く懸念される。

登美丘西小学校と八田荘小学校は「やや劣化」だが、いずれも吹き付け材の損傷・劣化が報告された。

専門家による調査では、4校とも吹き付けアスベストの劣化・損傷が実際には存在していたと評価されており、その状況は現場写真でも示されている。4校とも「やや劣化」で「損傷・劣化なし」との市側の説明が誤りだったことが裏付けられた。

こうした状況から懇話会では、4校すべてで児童らがアスベストを吸った可能性があるとして検証することが全員一致で決まった。今後改めて測定などを実施する予定という。

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