菅前総理の大偉業と心許ない岸田政権の対中姿勢|和田政宗 米国を取るのか、中国を取るのか。米国は、企業のみならず各国に対しても厳しい姿勢で臨んでいる。日本はアジア太平洋のリーダーとして米国より先に、北京五輪への「外交的ボイコット」を表明すべきだった――。本音で語れる政治家、和田政宗議員がこの1年の日本外交と重要課題を振り返る!

未来永劫、男系男子で継承していく

2021年は、我が国の将来にとって大きな動きがあった1年であった。

最も重要だったのが、安定的な皇位継承について考える有識者会議の設置と、議論、最終報告書の提出である。戦後まったく動かなかった旧宮家の男系男子の方々の皇籍復帰について、道筋がついたのだ。

これは菅義偉前総理が官房長官時代から、我が国にとって最優先で取り組むべき課題であると考えていたもので、総理大臣となって2021年3月に有識者会議を設置、7月に中間とりまとめ、12月22日に最終報告書が提出された。

旧宮家の男系男子の方々の皇籍復帰後の皇位継承権については結論が先送りされたが、今回の最終報告書により、女系天皇や女性宮家といった我が国のあり方と過去の歴史を壊す議論は潰えたと言える。

我が国の皇統は未来永劫、男系男子で継承していくことが確定的となった。我が国の将来の姿を確固たるものとした歴史的大偉業であり、菅前総理のリーダーシップと決断があったからこそ実現できたものだ。あとは具体的な方法について私も政府与党の一員として推進し、必ず実現をしていく。

そして、我が国の安全保障をめぐる環境の厳しさは一層増した1年だった。

「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が3月に米上院軍事委員会の公聴会で証言。この証言の後、日本の主要メディアにおいても台湾危機がようやく報じられるようになったが、昨年からの台湾、尖閣をめぐる情勢は緊迫したものであった。

安倍元総理、菅前総理が培ってきたもの

2020年10月、菅総理の就任直後、日米豪印クアッドの外相会談が電撃的に日本で開催された。台湾、尖閣情勢危機が迫るなか、中国を抑止するためにはこの4か国が安全保障上強固に協力していることを示すことが重要であった。

アジア太平洋での平和を守るための日本の行動に、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、カナダ、ニュージーランドなどの諸国軍が自衛隊と共同訓練を行うに至るなど、各国からの賛意と支援の輪が広がった。

2021年4月には菅総理とバイデン大統領との対面での首脳会談がワシントンで開かれた。バイデン大統領にとっては菅総理が就任後対面で会談する初めての外国首脳であった。米国が「日米同盟は最重要の同盟」と言うのは決してお世辞ではない。

冷戦時代は、ソ連と最前線で対峙するNATO諸国との同盟が米国にとって最重要であったが、現在、米国は中国と対峙している。最前線にある日本との同盟はまぎれもなく米国にとって「最重要の同盟」なのだ。

なお、クアッドについては9月に米国で、初の対面での首脳会談が開催された。菅総理は「退任を表明しているので私は参加しない」と米国側に伝えたが、バイデン大統領が「菅総理と話をしたいから来てほしい」と強く要請されたものである。

こうした米国や諸国との関係性は安倍元総理、菅前総理が培ってきたもので、我が国にとって非常に大きい。安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の外交戦略は、日本の首脳が提唱した外交フレーズとして戦後初めて世界のスタンダードとなった。

日本がアジア、インド太平洋において平和を守るための確固たるリーダーシップを取るのであれば、世界各国は大いに賛同し、ついてくるのである。

遅すぎた「外交的ボイコット」

そうしたなか、岸田文雄政権となり、対面での日米首脳会談がいまだに開催できないのは心配である。米国は、アジア太平洋において日本の確固たる姿勢と行動を求めており、特に中国に対する姿勢を見ている。

米国は、企業のみならず各国に対しても「米国を取るのか中国を取るのか」という厳しい姿勢で臨んでいる。私は北京五輪に対する外交的ボイコットについては、遅くとも米国の表明直後に日本も行うべきであったと考えるし、日本はアジア太平洋のリーダーとしてむしろ米国より先に表明すべきであったと考える。

今、米国が「日本とは考えにズレがあるかもしれない」と考えるのは我が国にとっても良くないことであるし、決して対米追従をせよということではなく、対中国において日米にズレがないことが、この地域の平和と安定を守ることにつながるのだ。

米国、オーストラリア、イギリスによる安全保障の枠組み「オーカス」の構築も、クアッドとの連携につながればよいが、クアッドをあきらめてのオーカスへの移行ということであれば大変なことである。

「日本は安倍政権、菅政権のようにアジア太平洋の安全保障においてリーダーシップをしっかり発揮するのか?」ということを米国は見ている。

尖閣諸島についてもそうだ。中国は勝手に「尖閣は台湾の一部であるから自国領土である」と主張している。であるから、台湾侵攻と尖閣侵攻は同時に行われる可能性が極めて高い。

米国は「尖閣は日本領土なのだから実効支配を高めよ」ということを求めている。いざという時に尖閣を守れないという可能性はまったくあり得ず、断固とした行動を今から取れ、と求めているのである。

日本国内の分断と対立を煽るメディア

岸田政権は外交において、最重要同盟である米国との関係をもう一度真剣に構築すべきであり、隙があれば中国に付け入られる。北京五輪の後、中国は恐いものがなくなり、何でもやりたい放題の行動を取ってくることも考えられる。

安倍政権、菅政権で構築したアジア、インド太平洋における日本のリーダーシップと行動を、岸田政権においてもより強く示すべきだ。

そのためには、今こそ国民が結束して世界の平和を守り、人権弾圧から諸民族を守ることが重要であるが、これに対し、分断を煽り、日本国内の対立を強めようという動きが生じている。

その最たるものが、12月の武蔵野市の住民投票条例案を強硬に推進しようという動きであり、反対意見や慎重審議を求める街頭演説会に対する妨害活動である。

神奈川新聞・石橋学編集委員が妨害を擁護する行動を取り、毎日新聞の後藤由耶記者は脅迫的取材を行うとともに、一部を切り取る報道を行った。これはもう、事実をありのままに伝えるジャーナリズムではなくプロパガンダに近い。

これに対して、我々は武蔵野市民と市議会の良識を持って、条例案を否決した。まさに、民主主義の勝利と言える。戦前からのコミンテルンの手法は、人々の分断を煽り、対立を生じさせ、国家を混乱に陥れることだ。

我々は国内外の現在の困難な状況を乗り越えるためにも思いをひとつにして行動していかなくてはならない。日本を意味する言葉である「和」の精神をもって、令和4年も皆様とともに行動していきたいと思う。

著者略歴

和田政宗

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