<社説>'21回顧・コロナ禍 体制整え感染防止徹底を

 12月上旬まで県内の新型コロナ新規感染者数がゼロの日もあったのに、この1週間は急増している。米軍基地由来が濃厚なオミクロン株は、ついに市中感染の段階に入った。玉城デニー知事は「流行の立ち上がり期にある」と第6波が始まっているという認識を示し、「まん延防止等重点措置」適用も視野に入れている。この年末年始が、感染拡大を食い止められるかどうかの正念場だ。 この2年近く、生活も経済も行政もコロナ対応に翻弄(ほんろう)されてきた。この間得た教訓を生かし、感染拡大阻止に県民挙げて立ち向かいたい。

 まずは検査体制だ。そして水際対策、医療提供体制の確保、ワクチン接種の推進である。感染者や濃厚接触者を把握し感染拡大防止を図る保健所の機能を十全に発揮できるようにすることも重要だ。

 今回、政府も無料検査の拡充を打ち出している。沖縄側が求めてきた、来県者への事前PCR検査の義務化へ後押しとなる。ワクチン接種歴のみの確認では接種をできない事情がある人を排除してしまうという問題があるが、PCR検査は違う。県は改めて政府や航空会社、関係機関と調整して事前検査の義務化を実現してほしい。

 米軍基地が水際対策の穴となっていることが、今回改めて浮き彫りとなった。沖縄の状況が全国で大きく報道され、米軍特権の問題が改めてクローズアップされた。本土にも米軍基地はある。日本同様の検疫体制を取らせ、基地外への外出を禁止するよう政府は強く迫るべきだ。基地従業員の健康を守ることも求められる。政府の本気度が問われている。

 医療体制については、第5波で崩壊状態に陥り、県内でも在宅療養中に死亡する事案が起きた。家庭内感染の数が跳ね上がる事態もあった。療養施設の不足のほか、家族と離れて隔離することが難しいケースもあったろう。

 家庭内感染を防ぐには、残された家族への対応など、災害時と同様、市町村や地域コミュニティーの役割も議論すべきではないか。これらの課題解決のためにも、保健所の体制強化が求められる。

 沖縄県はワクチン接種率に全国と差がある。若年層の接種の遅れが影響している。オミクロン株は、3回接種を受けた人にも感染する事例があるが、接種者は重症化しにくいと指摘されている。県内ではデルタ株の感染者も少なくないのだから、2回目までの効果が下がっている今、3回目を急ぐ必要がある。

 第6波の到来は避けられないかもしれない。しかし、回復へ向かおうとしている県経済が、まん延防止措置適用で再び打撃を受けることは何としても避けたい。命を守るための医療体制を整えた上で、感染拡大を食い止めるために県民一人一人が、できるだけの対策を徹底しなければならない。

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