里子引き渡しの差し止め求め、沖縄県を提訴 里親「県は子の平穏を無視している」

 生後2カ月から養育している児童(5)の里親委託を児童相談所が一方的に解除するのは、里子の心の平穏や健全な成長を無視した不当な対応だとして、那覇市の50代夫妻が29日、沖縄県を相手取り、引き渡しの差し止めを求めて那覇地裁に提訴した。夫妻は28日に里親委託措置解除の差し止めを求める訴訟を起こしたが、地裁がその日に訴えを却下していた。 提訴したのは、里親の小橋川学さん(56)と妻の久美子さん(55)。小橋川さん夫妻は問題の深刻さを訴えたいと実名を公表し、会見を開いた。

 里親委託は親権者の同意がなければ続けられない。原告側によると、委託解除は来年1月5日付で、前日の4日に児相に引き渡さなくてはいけないという。里親委託後、実母と児童は一度も会っていない。

 29日に県庁記者クラブで会見した原告側代理人の加藤博太郎弁護士は、里親の権利は保護されておらず、社会問題になってきていると指摘。「単なる一家族の問題ではなく、里親行政の試金石になる裁判と考えている」と述べた。28日に提訴し、却下された委託措置解除差し止め請求訴訟は控訴する。

 訴状などによると、児童は5年以上、小橋川さん夫妻の下で育っている。発達障がいがあり、医師の助言もあって、実親ではないと知らせる「真実告知」をしていない。児相は12月、県外に暮らす実母の意向を踏まえ委託を解除し、児童を一時保護所に入所させるとの文書を原告に送った。

 原告側は児童の障がいや特性を考え、告知や面会に時間をかけるべきだと主張している。久美子さんは「実親に会わせたくない、告知をしたくないというわけではない。発達障がいが落ち着くまで、もうしばらく待ってほしい」と訴えた。

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