現役生活に幕 元日本代表FW・大久保嘉人(39)=国見高出身= 貫いたストライカーの美学 国見で培った競技力、人間力

大久保嘉人の軌跡

 J1最多の191得点を誇る元日本代表FWの大久保嘉人(39)=C大阪=が、2021年シーズンをもって現役生活に幕を下ろした。国見高で一躍その名を全国に知らしめ、プロ入り後はさらに飛躍。「野性的」と表現される類いまれなゴールへの嗅覚で、文字通り日本を代表するストライカーに駆け上がった。
 闘志むき出しのプレー、歯に衣(きぬ)着せぬ発言は、時に「やんちゃ」「悪童」などと批判も浴びたが、ピッチを離れると実に家族思いで、涙もろく、仲間に慕われる人情家。ファンをとりこにするには十分のキャラクターで、ピッチ内外でたくさんの話題を提供してくれた。
 今年9月の取材で語っていたのは、高校時代の数々の思い出だった。20年以上にわたってプロで活躍できた理由を尋ねると「国見で小嶺(忠敏)先生から競技力と人間力をめちゃくちゃ鍛えてもらったから」と即答。全国高校サッカー選手権で優勝した際に着用した青と黄色の10番のユニホームは、今も小倉の実家に飾っているという。インタビュー直後に行われた試合で現役最後となる191ゴール目を挙げてくれたのも彼らしい。
 常に強気な姿勢が印象的だが、内心は常に不安や重圧との戦いだった。ゴールは水物。どれだけ調子が良くても、絶対に取れるという保証はどこにもない。結果だけが求められる日々は「本当に細い糸がギリギリつながっている状態だった」。
 11月16日、引退を決意。「決めたことは絶対に曲げない性格だから」と周囲の引き留めにも心は揺るがなかった。1週間も置かずに会見を開き「まだできるだろうと言われるうちにやめたいと思っていた。それが今なのかなと思って決断した。非常にすっきりした気持ちです」ときっぱり。20年にプロ入り後初めて無得点に終わったが、21年はリーグ戦だけで6ゴールと見事に復活。J1通算200得点への期待が高まる中、引き際の美学を貫いた。

◎「小さい体でよく頑張った。私の宝です」 国見時代の恩師 小嶺忠敏氏(76)

2000年度にインターハイ、国体、選手権の3冠を達成した国見。後列の右から4人目が大久保、左から2人目が小嶺監督=東京・国立競技場

 中学1年からずっと見てきて、高校に入った時も身長は160センチくらいしかなかった。周りの皆さん方からは「なんで小嶺はあいつを使うんだ。ぽんぽんと飛ばされよるじゃないか」と言われた。だけど、とにかく素晴らしい動物的感覚があった。使えば使うほど大物になる可能性があると感じた。可能性がある子どもに対して、指導者がどれだけ我慢できるかどうかは大切。本人が成長して応えてくれた。本当に小さい体でここまでよく頑張った。私の宝です。

© 株式会社長崎新聞社