京急解体車両に人生重ね、神奈川・横須賀の22歳が写真集 亡き父は運転士、思い出とともに

収録されている解体車両の写真

 解体される鉄道車両を13年間撮り続けてきたアマチュアカメラマンの鈴木友さん(22)=神奈川県横須賀市=が、写真集を自費出版した。運転士だった亡き父の思い出とともに、工場に通って撮影した約130枚を収録し、「廃車が持つ、心に訴えるメッセージ性を感じてもらえたら」と話す。

 幼いころから鉄道が好きだった鈴木さんは13年前、祖父に連れて行ってもらった京急電鉄久里浜工場(同市舟倉)で、解体される車両を初めて見た。無造作に外された扉や座席、むきだしになった電線、切断された車体など、見慣れた電車の変わり果てた姿に「衝撃を受けた」と振り返る。

 以来、毎日のように同工場近くの公道から解体車両を眺め、10万枚に及ぶ写真を撮りためてきた。

 工場に通うのが特別な意味を持ち始めたのは、2011年3月。京急の運転士だった父を38歳の若さでガンで亡くしてからだ。ショックで生きる意味を見失い、中学時代には不登校も経験したが、工場に通うことで救われた。

 生前の父がよく運転していた800形には思い入れが強い。「ゆっくりだけど必ず目的地にたどり着く地道さがある。自分の人生と重ね合わせて眺めることもある」と鈴木さん。19年に廃止された800形の解体写真も多く収録されている。

 「鉄道車両には個性があり、役割を果たして解体されるところに人間くささを感じる。鉄道ファンに限らず多くの人に見てもらいたい」と鈴木さんは話している。

 写真集「解体されゆく電車の風景」(ブイツーソリューション)はA4変型判108ページ、2750円。アマゾンで販売中。

© 株式会社神奈川新聞社