『トヨタ・カローラクロス』と『ホンダ・ヴェゼル』のHVが本命。国産コンパクトSUV 年始商戦【市販車購入ガイド】

 2021年に登場した国産新型車のうち、SUV/クロスオーバーは、大幅改良や派生車種を含めて9台が登場。トヨタ・カローラシリーズ初のSUVモデル『トヨタ・カローラクロス』やニッサン・ノートの派生モデル『ニッサン・ノートAUTECH CROSSOVER』、2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤーでも高評価だった『ホンダ・ヴェゼル』など、注目のモデルが多数揃う一年になりました。

 今回は、ボディサイズや車格感は微妙に違いますが、車両価格帯が近い設定の『トヨタ・カローラクロス』『ホンダ・ヴェゼル』『トヨタ・ヤリスクロス』『ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ』の4台の国産コンパクトSUVをクローズアップします。各車の特徴を掘り下げながら、年始商戦“お役立ち”購入ガイドをお届けします。

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■トヨタ・カローラクロス

2021年9月14日発表

トヨタ・カローラクロス『HYBRID Z』(FF)
トヨタ・カローラクロス『HYBRID Z』(FF)

 まず注目したいのは、2021年9月にデビューしたトヨタ・カローラクロスだ。パワートレイン(1.8ハイブリッド)やプラットフォーム(GA-C)は、TNGA第一世代のものになるが、ある意味こなれた技術で造られていることもあって、車格のわりには、お求め安い価格を実現している。

 そのためガソリン車もハイブリッド車も、ひとクラス下となるトヨタ・ヤリスクロスとあまり変わらない車両価格設定で狙うことができる。

 1.8リッターエンジンのガソリン車は、やや力不足の感が否めないが、1.8リッターのハイブリッド車は、プリウスやC-HRと同じパワーユニットを搭載するだけに、動力性能も燃費性能も申し分なし。

 操舵支援までカバーするフル機能型のトヨタセーフティセンスやディスプレイオーディオが標準装備されるなど、安くて使える実用車“カローラ”の名に相応しいSUVに仕立てられている。

トヨタ・カローラシリーズ
カローラクロスのプラットフォームは、TNGA技術の流れを組んだGA-Cを採用。プリウスやC-HRと同型だが、FF車のリヤサスペンションはトーションビーム式(4WD車はダブルウイッシュボーン式)を採用するなど、コストも意識した設計が注がれている。
カローラクロスのパワートレインは、他のカローラシリーズと基本的に共通した選択。ガソリン車は1.8リッターNA、ハイブリッド車は1.8リッターのTHS Ⅱを採用している。ハイブリッド車には小型リヤモーターを組み合わせるE-Four車(4WD)も設定されている。
カローラクロスのインパネは、他のカローラシリーズとほぼ同じ造形。加飾は控えめで、シンプルな雰囲気でまとめられている。センターコンソールの上部には、ディスプレイオーディオを配置する。
カローラクロスの室内は、コンパクトSUVながら余裕のあるスペースが確保されている。主力グレードのフロントシートには、サイドサポートを備えるスポーティタイプを採用。荷室容量はクラストップレベル。通常時の容量は、アンダーボックスも含めて最大487リッターを確保する。

■トヨタ・カローラクロス【グレード別購入ガイド】

車両価格帯:199万9000円〜319万9000円

 1.8リッターガソリンと1.8リッターハイブリッドをグレード揃えで価格を比べると、その差は約35万円ほどになる。このクラスとしては平均的な金額の差になるが、これを日々のガソリン代で取り戻すには、20万kmほどは走らないとハイブリッド分は取り戻せないという計算が成り立つ。

 ガソリン車、ハイブリッド車のパワートレインのスペックを比較すると、1.8リッターガソリン車が140ps/17.3kgm、1.8リッターハイブリッド車が98ps/14.5kgm(エンジン)+53kW/163Nw(モーター)。

 純粋なエンジンスペックはガソリン車が上だが、最近のトヨタのハイブリッド車はモーターとの協調制御が巧み。実走行ではモーターアシストの恩恵も強く実感できる。

 特に高速走行時の余力感は、ひとクラス上のクルマと思えるほどだ。同じような走行状況でハイブリッド車とガソリン車を比べると、ガソリン車はアクセルをかなり踏み込まないと加速していかない印象を強く感じてしまう。

 オートスポーツweb市販車班のカローラクロスのオススメは、ハイブリッド車。動力性能の差はコストアップに見合うものと考えていい。ハイブリッド車にはリヤモーターが装着される4WD車も選べるが、日常生活で使う分にはFF車で十分だ。

 トヨタ車の定番装備になるトヨタセーフティセンスとディスプレイオーディオ(7インチ)は全グレードに標準装着される。

 『G』、『S』、『Z』の3つのグレードの違いは、主に内外装加飾と利便装備の装着設定になる。ベーシックな『G』の内外装は、少し削りすぎ? とも感じてしまう部分もあるが、実用に徹したキャラは一番“カローラ”らしいともいえる。買いの一手は、『ハイブリッドG』(259万円)と『ハイブリッドS』(275万円)だ。

トヨタ・カローラクロス『置くだけ充電』
トヨタ・カローラクロス『パノラマルーフ』
トヨタ・カローラクロスの荷室

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■ホンダ・ヴェゼル

2021年2月18日発表

ホンダ・ヴェゼル

 2021年にフルモデルチェンジを実施し、二代目にバトンが渡ったホンダ・ヴェエル。初代に続き、現行型も安定した人気を集めている。発売以来、多くの受注を集めているが、コロナ禍の影響で納期がかなり長めになっているのが残念だが、実力は間違いなく国産SUVのトップクラスに位置する。

 現行型は、クーペルックを強めたスタイリングに注目が集まっているが、その本質は優れた実用性を持つことにある。フィット譲りの多彩なユーティリティがもたらす使い勝手の良さは、同サイズのSUVの中では際立っている。日々の買い物からレジャーシーンまで、幅広いニーズに応えてくれる。

新型ヴェゼルのエクステリアは、先代に比べるとクーペルックが強まっている印象だが、低床構造がもたらす広い室内空間は健在だ。フィット譲りの多彩な積載性や車両感覚を掴みやすいボディサイズは魅力的だ。

 さらに、ハイブリッド車の大幅強化も見所だ。ハイブリッドシステムを2モーター式のe:HEVに変更したことで、動力性能が大幅に向上している。力強い駆動モーター+直動機構がもたらすパワフルな走りは、先代で指摘されていた坂道や高速走行時の力感不足や燃費性能の低下を克服している。

 その実力は、ひとクラス上のミドルSUVとも勝負できると言っても大げさではないほどだ。性能向上&装備類の強化もあって価格帯もそれなりに上がってしまったが、クルマの進化を考えれば十分許容範囲といえるだろう。

新型ヴェゼルからハイブリッドシステムを『e-HEV』に変更。通常走行時はモーター駆動を主体とするが、高速道路などではエンジン直動状態に切り替わるため、高速走行に強くなっている。
ホンダ・ヴェゼル

■ホンダ・ヴェゼル【グレード別購入ガイド】

車両価格帯:227万9200〜329万8900円

 ヴェゼルは、ガソリン車が1グレード、ハイブリッド車が3グレード、合計4グレード構成となる。主力は、e:HEV搭載のハイブリッド車になる。

 ハイブリッド車には『X』『Z』『PLaY』を用意。安全装備のホンダセンシングは、ガソリン車の『G』を含めて全グレードに装着される。グレードの違いは、内装意匠に加えて、後方警戒のBSMやパワーシート、サンルーフなどで差別化されている。

 ヴェゼルのグレード選びで気をつけたいのは、ベーシックグレードと上級グレードで、キャラクターが大きく違うことだ。ベーシック系の『G』と『X』は、実用車に徹したキャラクターで、装備も加飾は控えめだ。

 上級グレードの『Z』と『PLaY』は、安全&快適装備を強化。先代よりも明らかに格上なSUVに仕上がっている。特に『PLaY』は、純正ナビシステムやガラスルーフも標準装着されるなど、ひとランク上のプレミアムSUVに迫る豪華さだ。

 使い勝手の良いSUVを求めるならば、ハイブリッド車『X』(FF)265万8700円で十分だろう。ナビをオプションで付ける必要はあるが、普段使いで必要な装備は、おおよそ揃っている。

 次のオススメは『X』のひとつ上の『Z』(FF)289万8500円。内外装の質感も上がり、BSMやパワーテールゲートも標準装着される。初期受注で人気を博した『PLaY』は、プレミアムSUVに比肩する装備内容だが、車両価格は329万8900円と、コンパクトSUVクラスとしては高価な設定だ。

 なお、ガソリン車の『G』(FF)は227万9200円。動力性能は正直なところ物足りないが、便利に使えるSUVを求めるユーザーならば、一考の価値はある。

内装が豪華仕様の最上級グレード『PLaY』も魅力的だが、ヴェゼル本来のキャラクターを考えると、『X』と『Z』が主力となるだろう。ナビユニットは『PLaY』を除いた各グレードでオプション設定になる。
頭上空間も足元まわりも余裕の設計。後席座面チップアップ機能などの多彩なシートアレンジも新型ヴェゼルの強み。
ホンダ・ヴェゼルの荷室(最大時)

■トヨタ・ヤリスクロス

2020年8月31日発表

トヨタ・ヤリスクロス

 トヨタ・カローラクロス、ホンダ・ヴェゼルに続く、国産SUVの注目モデルが、トヨタ・ヤリスクロスだ。ヤリスクロスのボディサイズは、カローラクロスよりもコンパクト。室内空間も相応に狭くなるが、走行関連のメカニズムや装備機能はこちらの方が世代が新しい。

ヤリスクロスは、ヤリスに比べると車両重量は100kg以上重いが、出来の良いパワートレインの恩恵で、軽快な走りはいささかも損なわれていない。

 特にエンジンは、ガソリン車もハイブリッド車も最新のダイナミックフォースエンジンが採用されていることもあって、1.5リッター級とは思えぬほどの優れたパフォーマンスを発揮してくれる。燃費性能は、同クラスの国産SUVとしては圧倒的に優秀。最新のTHS IIが組み合わされるハイブリッド車は30km/L、ガソリン車でも20km/Lに迫る実燃費を叩き出してくれる。

 高速安定性に富んだシャシーが与えられてこともあって、高速走行をまったく苦にしないことも見逃せない特徴だ。人を乗せたり、荷物を積んだりといった日常的な使い勝手は、カローラクロスやヴェゼルには及ばないが、広さはほどほどでもOKというユーザーならば、実燃費でひとクラス上に秀でるヤリスクロスを選んでも後悔することはないだろう。

ヤリスクロスの最大の魅力は、高いレベルの走り。十分な動力性能を持つパワートレインに加えて、優れたシャシーがもたらす走行安定性は上位モデルに迫る実力を持つ。ガソリン車でもヤリスクロスの攻めの走りを十分に体感できるだろう。

■トヨタ・ヤリスクロス【グレード別購入ガイド】

車両価格帯:179万8000〜281万5000円

 カローラクロスとヴェゼルは、ハイブリッド車が鉄板の選択肢になるが、ヤリスクロスの場合は事情が少々異なる。ガソリン車の1.5リッターエンジンは最新設計のダイナミックフォースエンジンを搭載しているため、他モデルに比べるとハイブリッド車との性能差が少ない。動力性能も燃費性能もガソリン車としてはトップレベルの実力を持つ。

 そんな理由もあって、ガソリン車を選んでもヤリスクロスの魅力は十分味わえる。ガソリン車ならば200万円前後から実用グレード(『X』が189万6000円、『G』が202万円)を狙うことができる。

 より余裕がある動力性能と燃費性能が欲しい場合は、約40万円高でハイブリッド車(『ハイブリッドX』が228万4000円、『ハイブリッドG』が239万4000円)も包囲網だ。

 ヤリスクロスのグレードは、ガソリン車もハイブリッド車も『X』『G』『Z』の3タイプを設定(ガソリン車には、法人向けの『X“Bパッケージ”』もある)。

 トヨタセーフティセンスとディスプレイオーディオは、『X“Bパッケージ”』を除いた主要グレードに標準装着されることは、カローラクロスと同じ。実用重視の向きならば、もっともベーシックな『X』で事足りるのだが、シート素材やトリム類はかなりシンプルな造り。

 車両価格は10万円ほど高くなってしまうが、上級ファブリックシートやディスプレイモニターがサイズアップ(7インチ→8インチ)する『G』をベースに検討するのがオススメだ。

ヤリスクロスのインパネ設計はヤリスを踏襲しているが、メーターデザインやセンターコンソールの意匠は、ヤリスクロス専用デザイン。シート素材やトリムの加飾は、実用車らしくシンプルだ。
ヤリスよりも後席空間は広がっているが、上位モデルと比べると少々窮屈な印象を受ける。シートアレンジ性能、快適装備も必要十分な備え。
トヨタ・ヤリスクロスの荷室

■ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ

2021年12月1日 eスマートハイブリッド追加発表

ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズは直近の改良時に、ハイブリッド車と1.2リッターガソリン車を新設定。これまで以上に燃費性能を求めるニーズに応えるカタチとなった。
トヨタ・ライズ

 2022年の年始商戦で注目してもらいたい国産SUVがある。それが、2021年12月に商品改良を実施したダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズだ。ダイハツがロッキー、トヨタがライズとブランドごとに併売される格好だが、基本的には内外装が異なる同じモデルと考えていい。

 今回紹介する4台のコンパクトSUVの中では、もっともボディサイズが小さく、パワートレインも最小クラス。同じ土俵で比べるのは少々厳しい面もあるが、商品改良時にハイブリッド車(eスマートハイブリッド)が追加されたことで、格上の3モデルに挑むことができる武器を手に入れた。

 eスマートハイブリッドは、エンジンで発電した電気で駆動モーターを動かす、シリーズ式ハイブリッド。ニッサンのe-POWERと極めて近いシステムと考えていい。

 e-POWERは、電動走行主体の加速の良さや力強い走りで人気を博しているが、ロッキー/ライズのeスマートハイブリッドもかなり近い味付けを持つ。

 安全&運転支援を含めた装備機能は車格なりだが、軽い車両重量のおかげもあって、走りは見た目以上にパワフル。少し燃費に重きを置いた挙動が目立つTHS Ⅱ系のハイブリッド車よりも、こちらの方が好みというユーザーもいるはずだ。

トヨタブランドで販売されるライズ。グレード構成は、ダイハツ・ロッキーと微妙に異なるが、基本的に同じモデルと考えていい。安全運転支援機能は、スマートアシストを搭載している。
ハイブリッド車に採用されたeスマートハイブリッドは、3気筒の1.2リッターエンジンとモーターを組み合わせる。アクセルペダルの踏み加減で速度を調整できる機能を持つなど、その内容はニッサンのe-POWERとかなり近いシステムだ。

■ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ【グレード別購入ガイド】

車両価格帯(ロッキー):166万7000円〜234万7000円
車両価格帯(ライズ):170万7000円〜232万8000円 

 コンパクトSUVの中でも最小クラスのモデル。2021年11月の商品改良時の目玉はハイブリッド車だが、同時にガソリンのFF車のエンジンも1.0リッターターボから1.2リッターNAに変更された。燃費性能が向上したにも関わらず、従来のターボエンジン車よりもスタート価格は下がっている。

 待望のハイブリッド車が追加されたことで、オススメもハイブリッド車……と言いたいところだが、廉価グレードの『X HEV』でも211万6000円からと、ガソリンのFF車に比べると40万円以上の差がある。

 経済性も重視するモデルだけに、この価格差は少々厳しく感じる人もいるだろう。さらに選べるのがFF車限定ということも、レジャーの足としても使いたい、もしくは寒冷地に居住するユーザーにとっては気になるポイントだ。

 グレード構成はロッキーとライズで微妙に異なるが、ロッキーの場合は1.2リッターNA車(FF車のみ)と1.0リッターターボ車(4WD車のみ)のガソリン車は、『L』『X』『プレミアムG』の3グレード。

 ハイブリッド車(FF車のみ)は、『X HEV』と『プレミアムG HEV』の2グレードが選べる。『L』は装備を削ることで低価格を実現した仕様なので、ひと通りの装備が備わる『X』から上を選ぶのが現実的な選択肢。オススメグレードも『X』だ。

 グレードを『X』で横揃えすると、1.2リッターNA車は205万8000円、1.0リッターターボ車は231万8200円、ハイブリッド車は234万7000円。1.0リッターターボ車が高くなるのは4WD車になるためだ。新設定されたハイブリッド車は性能面では魅力的な選択だが、価格も踏まえたバランスが良いのは、1.2リッターNA車になる。ロッキー/ライズのキャラクターにもピッタリだ。

手に触れる部分の素材感はなかなか高く質感も侮れない、ロッキーのインパネまわり。他のトヨタ系SUVで標準装備のディスプレイオーディオがオプション設定となってしまうのは、残念な部分。
スペース効率に優れた室内設計のおかげで、ボディサイズからは想像できないほどの広々とした空間を確保。後席も2名ならばロングドライブもこなせる。
トヨタ・ライズ『S-Pedal』
トヨタ・ライズ『ECO走行モード制御』
トヨタ・ライズ

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