連載⑨ 上松恵理子の新潟・ICT・教育「医療データでより良い社会に “新潟を健康寿命日本一に”を目標にしたアイセックの取り組みー(後編)」

アイセックの木村代表取締役CEO

前回:連載⑧ 上松恵理子の新潟・ICT・教育「医療データでより良い社会に “新潟を健康寿命日本一に”を目標にしたアイセックの取り組みー・前編」

今回もまた木村CEOにお話を伺います。

上松:会社が社員の健康についてしっかり把握できることは大事ですね。私は仕事上、社員さんやそのご家族様にICT教育をしっかり行うことが大事だとは常々思っているのですが、そもそも健康あっての仕事ですからね。

木村:しかし新潟は健康経営推進においては、経産省の認定制度取得率は38位となっているのですよ。

上松:それは低いですね。企業がちゃんと社員の健康も考えないと駄目ですね。社員の健康管理をデータ化すれば良いですよね。

上松:日本はマイナンバーと保険証、運転免許証、医療データ、教育データなどの紐付けがまだありませんよね。健康保健証を紐付けると言っていますが、ほかはどうなのでしょう、デジタル庁などで一気にやれば良いのでしょうか。

木村:マイナポータルと保険証を連動させるなど、一部の企業は動き始めていますが、現時点で日本全体で一気に全部紐付けるのは難しいでしょう。なので、医療業界は特にスモールスタートが大事だと思っています。ローカライズビッグデータをしっかり深く研究をして好事例を作って行くことができれば良いと思っています。

地域の産官学がしっかり連携し、ローカライズビッグデータをしっかり深く研究をして好事例を作って行くことができれば、次の世代に残せる健康な風土の構築ができると思っています。

上松:確かに自治体ごとの住民票や年金など問題が山積ですからね。これからどういった取り組みをされたいのでしょうか。

木村:先ずは新潟県を10年以内に健康寿命日本一にしたいと思っています。

2021年度新潟県「市町村データヘルス計画策定・実施支援のための医療情報分析等事業」 が受託しました。これを広めるには変化が必要です。「人を変えるには教育しかない」と思っているので教育は大事だと思っています。当社の目的は、「与えられた寿命を最後までイキイキと健康に過ごせる文化を創造する」というものです。

例えば、新潟大学医学部との連携。新潟に特化したデータ分析とコンサルティング。そして業界内のネットワークの強みを活かした色々な企画や提言もしますし、スイッチングされにくいビジネスモデルを構築することなど、色々とこれまでの経験を生かしたものが提供できます。花角知事にも今年1月に説明を行いました。

健康を支える上で一番大事なのは健康の「教育」だと思っています。

上松:それは嬉しいお言葉です。そうですよね、知識として知らないこともありますからね。それを実現するにはどうしたら良いのでしょうか。

木村:どれだけ効果あったのかデータで検証できることが大事です。学力偏差値同様に健康知識偏差値を導入して、それをeラーニングでやっているのですが、その効果検証を既にスタートしております。

今後は地域ごとの「おらがまち」に合った健康づくりの教育なども必要だと思っています。新潟市の区や町ごとのデータやどういった原因でこの病気が多いのか、例えばスーパーマーケットの配置なんかも気になります。実際、漬物とかカップ麺が首都圏と比較すると売り場面積が大きい。これは、消費者が日々消費しているからですね。そのような消費行動も病気のかかりやすい原因になっているかもしれません。

上松:なるほど、そういう日常の生活環境も含めた細かいデータを色々な角度から読み解くとその原因がわかりそうですね。健康知識偏差値とはすごい概念ですね。ところで健康にとって大事なことは何でしょうか。

木村:まずは、定期的に健康診断を受けて自分の体の状態をチェックして、日々の生活習慣と向き合うこと。やはり食事と運動、この2つは大きいですね。

上松:それはとても基本的なことですね。日々、自分の身体に関わることですから、どういうことが具体的に大事かわかる健康偏差値は大事ですね。

木村:あとは新潟からどんどん若い人が出ていってしまうので、今までは東京に就職していた人が、アイセックのような取り組みに興味を持ってくれるようになるといいな思っています。

最終目標は、県民の全ての皆様が成人前に総合的な健康教育をしっかり受けることができ、ヘルスリテラシーが高い地域になることです。このようなことを広めるために、産官学がしっかり連携し科学的エビデンスを創成し、新たな風土を創っていきたいです。

上松:ヘルスリテラシーは食育と保健体育にも絡んできているということがわかりました。学校でも取り組んでもらいたいことですね。エビデンスに基づくことで、心も身体も健康な人ばかりになれば新潟が活性化していきますね。私も応援したいです。ありがとうございました。

……

新潟県の子どもたちが健康についての知識やヘルスリテラシーが高まることで、これからサスティナブルに健康立県になることと思う。「とにかく身近にデータを見て、気づくことも大事だ」という木村代表取締役CEOの取り組みは素晴らしいこととだ。経済とて、健康な人が多くいてこそ回っていくことなので、基本的なことだと感じた。

【連載 上松恵理子の新潟・ICT・教育】
前回:連載⑧ 上松恵理子の新潟・ICT・教育「医療データでより良い社会に “新潟を健康寿命日本一に”を目標にしたアイセックの取り組みー・前編」

初回:連載① 上松恵理子の新潟・ICT・教育「新潟がメインとしていた第一次産業にもデジタル化の流れ」

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上松恵理子 略歴
博士(教育学)
武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員
早稲田大学情報教育研究所研究員
明治大学サービス創新研究所客員研究員
東洋大学非常勤講師
教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー
総務省プログラミング教育推進事業会議委員(H28.29)
文部科学省委託事業欧州調査主査(H29)

大学では情報リテラシー、モバイルコミュニケーション、コンピュータリテラシーの授業を担当。研究では最新のテクノロジーを使った最先端の教育についても国内外の調査研究。国内外での招待講演多数。著書に『小学校にプログラミングがやってきた!超入門編』、『小学校にオンライン教育がやってきた!』(三省堂)など。

新潟大学大学院情報文化研究科修了、新潟大学大学院後期博士課程修了

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